BOOK1《中編》
□二十三
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タクシーの支払いを済ませ、救急の受付で説明して、病室を教えてもらえた
血糊のベッタリついたドレスが、関係者だと証明してくれたみたい
病室はまだ、人の出入りが有るらしく、入口が開け放されている
壁をノックして入ろうと、手を挙げれば、女性の声が耳に飛び込んできた
「男名無し、無茶しないでよ!不安で堪らなかったんだから」
「何はともあれ、命に別状無くて良かったな」
「ご心配…かけてしまって…」
男名無しの姿は死角で見えないけど、いつものような覇気は感じられないけど、声が聞こえて安心する
「財界の男名無し君達への関心も、今までとは違うんだ
これからはSPをつけたらどうだね」
「そんな…大袈裟ですよ…」
60歳位の男性と、私と同じ年位の女性が、病室で男名無しと話している
こんな時間に、仕事関係の人?!ノックの手を止め躊躇していると
病室内の女性と
目が合った…?!
そう思った。だけど…
「お父様ったら、そんな物騒な話は、もうやめて下さい!
もっと楽しい話が良いわ!ね、男名無し」
「すまん、すまん。男名無しくん、そろそろ綾子と結婚しないか?
今回のような事があれば、綾子も落ち着かんのだよ
それに、パーティーには、綾子と行くはずだったのではないのかね?!
何処の馬の骨とも知らん、女を連れていたそうじゃないか…」
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