BOOK1《中編》
□二十
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鍵を受け取って、会社に戻る道すがら、時計を見ると18時を少しまわっいる
まだ沖田さんは来ていないだろうと、たかをくくっていたのに…
正面玄関からは、従業員達がぞろぞろ出てきて、最寄り駅に向かう
「あの人格好良かったよね」
「誰か待ってるみたいだけど、声かけちゃう?!」
「背が高いし、イケメンじゃん♪」
「酒元部長や中岡さんとも張り合うんじゃない?」
すれ違う女子社員から、浮かれた声と
その男性の位置を指し示すように、チラチラ振り返って、ハートの視線を送っている
視線の先に居たのは、沖田さん。ジャケットと少し長めの髪を風に靡かせ
昨日、私を襲ったなんて微塵も感じさせない、爽やかな笑顔で近づいてきた
「わざわざお持ち頂いてありがとうございます。早速ですが 「ここじゃ何だから」
深呼吸をして、話し掛けたのに、途中で遮られ
私の二の腕を、ガッチリ掴まむと、そのまま歩き出し
「アレぐらいで逃げ出すなんて、可愛いね」
からかうように私の顔を覗き込み、視線を身体に這わせた
「ちょっと、離して下さい!沖田さん何処に行くんですか?」
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