BOOK1短編
□6001番 千草 様 リクエスト
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朝帰りした龍馬さんの身体からは、お酒と白粉の匂いがした
おかしいと、思ったの。いつもは、何処何処の藩邸にで会合だからと、教えてくれるのに
今回に限って皆、口を揃えて「会合だから、今夜は戻れないかもしれない」と、目をそらせて言うばかりで・・・
それでいて、少し浮き足だってるみたいだった
今思えばだけど…
一人お留守番の私は、お登勢さんの部屋で、子供達と一緒に眠る事になった
「名無しちゃん。男ハンは、こういうことが有るよって、おなごは辛抱せなあきまへんえ」
お登勢さんは、優しく諭すように言ってくれたけど、何処かムッとしてる
私は意味がサッパリ分からず、首を傾けていると、苦笑していた
子供達と、朝餉を食べていると玄関で物音がする
きっと龍馬さんだ!嬉しくて玄関までかけて行く
「お帰りなさい!」
「ッ…名無し !! お…おう!今…帰った」
「お疲れ様でした」
きっと尻尾があったら、振りきれているだろう私を避けるようにして、ソソクサと横を通り過ぎる龍馬さんに
「ほんま、お・つ・か・れ・ハンどした…
坂本ハン、たいがいにしなれ!」
腕を組んで、目を眇めたお登勢さんが、土間でブーツを脱ぐ龍馬さんを見降ろし、いつに無く冷えた声で言った
一瞬固まった龍馬さん
「儂も男じゃき・・・たまにはのぉ・・・」
染まった頬を人差し指で掻いて、尻窄みに呟いた
後頭部を撫でながら
「これは参った…」
相当、気不味いのか、私と目を合わすことなく、サッサと部屋に入ってしまった
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