BOOK1短編


□Aohikonohime
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井本「沼田教授、どうしてこの神社は、捨て置かれたのでしょうか?この京都においては、特に神社として、かなり歴史が浅いためだからでしょうか?」

出世欲の無い沼田教授は、大学でも変わり者で通っているが、このテの調査のエキスパートである

その沼田教授を名指しで、ある有名企業から調査の依頼が舞い込んだのだった

色んな許可を申請して、やっと調査にとりかかる事ができたのは、つい先日のこと

沼田 「江戸後期……幕末に入ろうかという時に、徳川の再興を願って、この土地に建立したと、資料にはあるが……腑に落ちない

かなり強引に建立されたためのようだが……

何を御神体としていたのかも不明だからね。ここは謎だらけで面白い」

埃っぽい神棚の周りを、手のひらで撫でる様に触れていく教授は目を細めた

早川 「………面白いって……沼田教授はやっぱり変わり者ですね

僕にとっては、沼田教授の方がよっぽど面白いです!」

井本 「・・・・・」

早川それを口にするのか・・・

早川 「幕末の志士たちも、訪れた事があったのかなぁ〜

坂本龍馬や、武市半平太、高杉晋作、沖田総司、土方歳三、大久保利通なーんて♪ 」

私と、お調子者の早川が教授のアシスタント。何時もの能天気ぶりに呆れながらも

井本 「……何にしても、このまま放置しておくわけにもいかないだろ。

7~8年前に、女子高生がこの神社で一時的に行方不明になって、ここの林の中で倒れていたのを、保護されたそうだからな……」

発見された時の女子高生が錯乱状態だったため、事件ではないかと憶測がとんだが、そうはならなかったという

泣き寝入りしたのかもしれないな……憐れに思いながらも、神棚以外に何もない室内を見回した

早川「そうですよね…こんなに荒れた神社だし

近所の茶屋のお婆さんが、ここは変質者も時々出るし、不良が溜まり場にしてるって言ってましたよ

丁度その事件があった時、茶屋のお婆さんの身内が、近くでたむろしていた学生で、お社の方が凄く光ったって言ってたそうです

宇宙人に連れ去られたんじゃないかと、興奮気味に話していたそうです」

コイツ……いつの間に茶屋なんて行ってきたんだ……噂話まで仕入れてきやがって……

沼田 「早川君、そこの資料をとってくれないか」

早川 「あ、はい。この封筒で……す…か…あぁ〜〜」

ガタガタガタ。バキッ

井本 「…………早川君……きみの行動は、研究者としては………ッ…教授これは……?!…… 隠し扉⁈ 」

お調子者の早川が踏み抜いた板張りの床下に、隠し扉の奥には隠し箱が納められていた

見事な螺鈿細工が施された木製漆器の小さな箱を、そっと開ければ白色の何かの欠片と、その粉が、絹で包まれていた

「教授……コレは……木片ともしかして人骨では⁈」





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