BOOK1《前編》


□十七
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男・名無しさんの掌が私の顔を包み、指が私のこめかみから髪をすく

目を閉じ彼の唇が、降りてくるのを、静に待つ

冷たい唇が、私の唇の感触を、確かめるように触れ

食べるように啄む。熱い舌先で輪郭をなぞっては、上と下の唇の間を、嘗め上げ

時間をかけて、何度も繰り返すから息苦しくなって

口を開けると、すかさず男・名無しさんの舌が、スルリと入り

何度も角度を替えて、口内を味わうように、楽しむと

逃げ惑う私の舌を、ねぶり、舐めあげるから、気持ち良い

「…ンン…ゥン…ァフゥ…」

甘い声が鼻から抜けて、恥ずかしい

男・名無しさんの私を抱き締める腕や、後頭部を押さえている掌の力が、より強くなる

息継ぎが上手く出来なくて、男・名無しさんの胸を、押し退けようとしてもビクともしない

押し退けようとした手を、そっと握り込まれ

さらに深く、激しさをます口付けに、意識が朦朧としてきた

ジュッジュッと舌を吸い上げる唾液の音が、部屋の中と鼓膜に響き

その厭らしい音と、私を抱き締め、撫で回す男・名無しさんの温かい掌に

目を瞑っているのにグルグル回っているような、眩暈さえおこし、軆の芯がズクンと疼いてしまう





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