BOOK1《前編》


□六
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(酒元side 1)

これで、納得がいく。支社に来た当日、俺を見て、彼女が涙した訳を

視線が、俺を追っているのに、目が合うと

何事もないかのように、視線を逸らす

そして俺が残業続きの時、こっそり置かれる栄養ドリンクに、礼を言うと、知らないと俯く

やはり、勘違いでは無かった。彼女は俺を避けていたのだろう

俺がそいつに、似た所があるがために

リョウマという奴は、長い間、離れているようなのに

他の男共を寄せ付けないほど、彼女の心を奪ってはなさない

いつも明るい彼女を、あんなに、泣かすことが出来る、ソイツにはらがたつ

思えば、そんな風に誰かを、愛した事があっただろうか

小さな頃、頻繁に見た夢の中で、確かに心底愛した女がいた

幼かった俺は、その気持ちが、何なのか解らなかった

が…所詮、夢は夢…もう漠然としか覚えていない

成長と共に、その夢なぞめったに見なくなった

大人になれば、恋愛もゲーム

女も性欲の捌け口と、割りきった付き合いしかしていない

俺に群がる女達は、地位と、そこそこのルックスと

陽気な雰囲気に騙されるだけ。空しいもんだ






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