BOOK1《前編》
□五
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「いいから、こっちに来いって!」
低い声で短く怒鳴られ、尚も抵抗したが、狭い路地裏に引き摺られる
後ろから、羽交い締めにされて、力任せにくみしかれた
「おい、早くやっちまおうぜ」
「分かっるって。しかっり、押さえとけよ」
恐い…身体が強張り、震えて、声が出せない…
龍馬さん…龍馬さん…助けて…
私に跨がった、男がカチャカチャとベルトの金具を外す
こんな獣に敗けたくない!!
「やぁ―!やだ、誰か―」
声にならないような、震える声で、必死に叫ぶ
頬に衝撃が走った。痺れるような痛みに、茫然とする
口の中が鉄錆びのような味がした
「うるせぇ!大人しくしろ!これが何だか分かんネェのか?!」
男が、暗闇に鈍く光る、サバイバルナイフを取りだして、私に突きつけた
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