過去拍手

□ひな祭り
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小さな指が、硝子ケースの中の人形を、指した

「おだいり様と、お雛様だよ。綺麗だねぇ」



今日は格段に早く帰る事が出来たのは

「いつも、お迎えギリギリなんでしょ。今日ぐらい、早く帰ってあげなさい」

私は、子育てが一段落してるからね〜フフフと笑う、職場の肝っ玉母さんの辻さんが、そういってくれたから


気がつけば、陽も少し長くなって、この時間でも、十分明るいし

まだまだ寒いけど、少しずつ温かくなってきたな…と実感する

商店街に流れる、軽快なひな祭りを祝う曲を聞きながら、以蔵を抱っこして、歩いていると

以蔵がお店のディスプレイを指差すから、近づいて、目の高さにかがむ

お雛様をジッと見て、私を見て、また、お雛様をジッと見る。そして、お雛様を指差し

「ママ!」

ニコニコ笑う以蔵に、胸を打ち抜かれてしまう

お店の老夫婦も、微笑みを向けてくれる。恥ずかしいけど、とっても嬉しい

以蔵には、私が、こんなふうに、見えてるのかな?!

抱っこを下ろして欲しいと、身体を揺すり、目を輝かせて、お団子を見ている

お団子を買うと、私達親子を、気にかけてくれる、和菓子屋さんの老夫婦に

コンペイトウを貰った以蔵が、可愛らしくお辞儀してバイバイする

お店をでたら、斜め向かいの花屋さんに行こうと、私を引っ張り、抱っこをせがんだ



寒い日も有るというのに、桃の花を咲かせた、枝を花瓶に挿し

桜子がくれたぬいぐるみで、お雛様っぽくしてみた

三色団子とコンペイトウを、お供えすれば、即席ひな祭りの出来上がり

ひな祭りなんて、時間に追われた日々に、忙殺されて、すっかり忘れていた

以蔵は、お団子が好きなわけでも、桃の花が特別好きなわけでも、ないのに…


コンペイトウの包みから、ピンク色を一粒選んで、私の口に運んでは、笑顔をくれた

まだまだ幼い我が子に、女の子扱いしてもらって、嬉しいやら、恥ずかしいやら


行事を楽しんだり、花を愛でる時間を、以蔵に与えて貰ったようだね

寝てしまった、以蔵の小さな頭を撫で、柔らかい頬にキスした





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