過去拍手
□節分
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寺田幼稚園での一日
「先生ー描けたよ」
「あっくんも〜」
「みんな上手に描けたね!
おや?!以蔵くんは鬼の絵、描かないのかな」
真っ直ぐな瞳が、白い画用紙を見つめ
「いい鬼もいる…」
「そっかぁ。豆ぶつけたら可哀相だからかな?」
コクリと頷く頭を撫でて
「じゃあ、お面は嫌いなものを描いたらどうかな?
嫌いな食べ物や、虫とかはどうかな?」
再びコクリと頷くと、およそ幼稚園児に、似つかわしくない鉛筆裁きで
似顔絵を、かきあげた
「……以蔵…くん…上手すぎ…これをお面にするのかい?」
どお考えても、くせっ毛の父親の顔だ…
画用紙の隅に、
土佐のいごっそ…
と書いてある
「お面はお父さんが、被るんだろう?」
コクリと三度頷く、以蔵の小さな手を、ガシリと握り
「流石、我が弟子だな。しっかり豆を撒くんだよ」
「はい」
キラリと輝く瞳が、嬉しそうだ
あの父親は奥さんにベッタリだからな
子供に不興をかってもしかたない
彼女なら私が娶りたいぐらいだ
「武市先生〜たっくん、おしっこ〜」
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