BOOK1短編


□不思議先輩
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その内田さんが、事情があって、退職される事になって

凄く寂しくて、帰宅する内田さんを社外まで追いかけて、お別れの品を渡し、今までのお礼を言った

少し寂しげに微笑んで

「貴女はこんなにも優しい女性なのに

信じられないような体験をしたのね…

辛かったでしょうに」

言葉を一旦止めて、目を閉じ顎に人差し指を添えて、しばらく押し黙ってしまった

内田さん…もしかして、知っている?

私、誰にも話した事なんて無い…

再び、私を見詰める瞳は、優しいけれど、切なそうに潤んでいて

「普段はこんな忠告しないのだけれど…

いい?!覚えておいて。

この先、貴女に降り懸かるのは、良いことばかりとは言えないけど…

自棄になっては駄目よ!貴女の愛する人を、愛し続けて…

私に視えるのはここまでなの。元気で…さようなら」


私のデスクの引き出しには、社員旅行で酒元部長が、仮装した時に写した

二人並んだ写真が、封筒に入れられて置かれていた

これって…内田さんがくれたんだよね

雅に写してもらったものは、何故か全てデータが飛んでしまったとかで、一枚もなかったのに…

内田さん「私に視えるのは」って言った…





浴室から数を読む主人と息子の楽しげな声を、聞きながら

ソファーでお腹を撫でながら、優しい瞳を私に向けてくれた、彼を思い出す

過去の、そして予定されていた未来に、私の隣で笑っていたであろう彼を
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