ぷよ魔導 小説
□泡沫夢幻()
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「お嬢さん、そんなに急いでどこへ行くんだい?」
ボクに声をかけてきたのは、黒いローブに身を包んだ老婆だった。
「ボクは今すぐライラ遺跡に行かなきゃならないんだ!」
「そうか…あの遺跡へ……。」
「じゃあね、お婆さん!」
「ちょいとお待ち……。」
老婆はボクを呼びとめて手招きしてきた。
ボク急いでるんだけどなぁ…。
そう思いながらも、手招きする老婆を放っておけなくて、近くに駆け寄った。
「この鏡を持ってお行き。」
「鏡?」
渡された鏡は傷だらけな上、少し曇っていた。とても自分の顔を映すようには見えない。
「その鏡はね…少し先の未来を映し出すことが出来るんだよ……。」
「未来…?」
未来を映し出す鏡なんて、そんな大層な魔導アイテムは聞いたことがない。
「そう、未来をだよ。私も若い頃はその鏡を持って各地のダンジョンを巡ったものよ…。」
「これ、どうやって使うの?」
「簡単だよ。ただ鏡に問いかける…"この扉を進んだ先で何が起こりますか?"と。そうすればこの扉を進んだ未来が映し出されるんだよ。」
「これを使えば、扉の先にあるトラップを見破ることも出来るんだね。」
…ホンモノなら。
別にこのお婆さんをアブナイ人だとは思ってないんだけど。
でも、やっぱりホンモノだとは思えなくて。
しかも未来を映す鏡をボクにくれるだなんて、話が美味すぎる。
「信じてないようだねぇ…まあいい、それは本当にタダでやるから試しに遺跡で使っておいで…。私はもう若くないし、その鏡は必要ないからね……。」
「ま、タダで貰えるなら。」
貰ってしまおう!
鏡をポケットに押し込んで、ボクは気合いを入れ直す。
「さーてホントに急がなきゃ、あの変態魔導師が来ちゃう。」
ボクはライラ遺跡に向かって走り出した。
「……旅の幸運を祈っているよ、お嬢さん。」