お題小説
□瞬間、一瞬、それ以上を求めて
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*ぷよぷよ
(まぐりん)
ああ、これはボクたち2人が付き合ってすぐの頃だ───
「あれはりんごちゃん…かな?」
学校が休みなので店を手伝っていた時だった。買い物を頼まれて商店街を歩いていると、ボクはよく知る姿を見つけた。
ただ、その隣にもう1つ見慣れぬ姿。
「うーん…ちゃんと行けるかなぁ。」
「上手く説明出来なくてゴメンなさい…。」
どうやら若い男のようだ。…何故か、りんごちゃんが謝ってるみたいだけど。
ボクは電柱の後ろにコッソリ隠れて、聞き耳を立てた。
「ちょっと急いでるんだよね、迷っちゃいそうだし、駅まで一緒に来てくれないかなぁ?」
「一緒に…ですか?」
「頼むよー、遅れる訳には行かないんだ!」
なるほど…大体の話は見えた。
「……。」
コッソリ男の顔を見てみる。
───アレは、困っている人の"表情"じゃないな。
「じゃあ、駅まででしたら…」
「ホントに!? じゃ、一緒に行こうか!!!」
男がりんごちゃんの手を掴もうとする、とほぼ同時。
「ねえ、ボクのカノジョに何か…用?」
ボクはすぐさま2人の間に割り入って、そして男を睨みつける。
「いや…別に、ちょっと駅までの道を聞いていただけで……」
「なら、そこ曲がって3つめの信号をまた右。解ったよね?…急いでるらしいし、もう行っていいよ。」
「あ、ああ…」
「早く行きなよ。」
再び睨みつける、今日のボクの目にはいつもの魔力はない。
「あ、ありがとなっ……!」
男は逃げるように角を曲がって行った。
「ま、まぐろくん…?」
「…ゴメンね★ もしかして、怖がらせちゃった?」
「怖いっていうか…いくらなんでも、いきなり道に迷っている人にあんな言い方はどうかと…思って。」
「りんごちゃん、あの人がホントに道に迷ってると思ったの?」
「え? だって道を尋ねられたし…」
「あの人、ゼッタイ道に迷ってない。」
ボクの目には獲物を狙う狼にしか映らなかった。
「そんなことないよ、ゼッタイ迷ってました!」
「…りんごちゃん良い人すぎ、世の中そんなりんごちゃんみたいな良い人ばっかりじゃないよ★」
「そんなの、あの人が悪い人かなんてわからないと思うけど…!」
「なら、あの人が良い人かどうかもわからないよね★」
「…うん。けど悪い人っていうか、アブナイ感じはしなかったし…それ以上に感じの良さそうな人だと思ったけどなぁ…。」
「わかってないね、りんごちゃん。…まあ、見るからにアブナイ感じの人なんて、そうそういるもんじゃないと思うけどね★」
…異世界にはいたような気もしなくはないけど。
と言うよりまず、気があって寄ってくる男が感じを悪そうにするはずがない。
「とーにーかーく!りんごちゃんに言いたいのは、いきなり近づいてくる男には気をつけろ!ってコト★」
「…はーい。」
「本当にわかってる?」
「わかってるって!」
「……。」
正直言うと、不安。
…こんな一面も彼女の魅力と言えば、魅力なんだろうけど。
「ねえ、今回みたいにボクが居ればいいけど、もしボクが居なかったら大変…でしょ?」
「え?…あ、うん。」
…ウソでもいいから、ボクを安心させてよ。
こんな時、ふと思ってしまう。
『何故りんごくんは、まぐろくんの"キラッ★"を直視しても効かないのだろうか。』
『…がっかりした?』
『とくに★』
異世界に飛ばされた時はあんなこと言ったけど───
どうしてりんごちゃんには効かないのかな…って。
偽りの好きになんて何の価値も無いのは知ってるし、ボクはりんごちゃんにこの目で惚れてほしいとは思ってない。
ただ、りんごちゃんを安全な所に、傍に置いておきたい、それだけで───
ガタンッ!
「痛っ…★」
ベットから落ちた…ようだ。
時計を見ると午前10時。
随分と長い間、夢を見ていたらしい。
「あんまり思い出したくなかったなぁ…。」
過去の自分を見て、思う。
「…独占欲、強すぎ。」
隣から鈍い音が聞こえてきた。
「…っと、りんごちゃんだ。」
机の上でブーブーと携帯が鳴っていた。
「…もしもし、りんごちゃん?」
『まぐろくん!あれ、起きてたの?』
「いや、今起きたトコ★」
『やっぱり!まぐろくん家のお店に行っても居ないから…』
「りんごちゃんの夢を見てたら、寝坊しちゃった★」
ウソはついてない。あんまりいい夢じゃなかったけど…ね。
『えっ…私の夢?』
「うん★ あ、でも……」
「ホンモノのりんごちゃんに会いたいから、もう少しだけ待っててくれない…かな?」
『…さっきまで一緒に居たのに?』
電話越しに彼女の笑い声が聞こえる。
嗚呼、彼女は今日もボクの傍に居る。
「うん、だってボクは───
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【END】
くっついたまぐりん話を
書きたくて…そして撃沈orz
最後はあえて流しました。
いろんな解釈をしてもらえると
嬉しいなーって思ってマス(・v・)