お題小説

□瞬間、一瞬、それ以上を求めて
1ページ/1ページ

*ぷよぷよ
(まぐりん)




ああ、これはボクたち2人が付き合ってすぐの頃だ───











「あれはりんごちゃん…かな?」




学校が休みなので店を手伝っていた時だった。買い物を頼まれて商店街を歩いていると、ボクはよく知る姿を見つけた。








ただ、その隣にもう1つ見慣れぬ姿。








「うーん…ちゃんと行けるかなぁ。」

「上手く説明出来なくてゴメンなさい…。」


どうやら若い男のようだ。…何故か、りんごちゃんが謝ってるみたいだけど。


ボクは電柱の後ろにコッソリ隠れて、聞き耳を立てた。





「ちょっと急いでるんだよね、迷っちゃいそうだし、駅まで一緒に来てくれないかなぁ?」

「一緒に…ですか?」

「頼むよー、遅れる訳には行かないんだ!」


なるほど…大体の話は見えた。




「……。」


コッソリ男の顔を見てみる。











───アレは、困っている人の"表情"じゃないな。









「じゃあ、駅まででしたら…」

「ホントに!? じゃ、一緒に行こうか!!!」







男がりんごちゃんの手を掴もうとする、とほぼ同時。




「ねえ、ボクのカノジョに何か…用?」









ボクはすぐさま2人の間に割り入って、そして男を睨みつける。








「いや…別に、ちょっと駅までの道を聞いていただけで……」

「なら、そこ曲がって3つめの信号をまた右。解ったよね?…急いでるらしいし、もう行っていいよ。」

「あ、ああ…」

「早く行きなよ。」


再び睨みつける、今日のボクの目にはいつもの魔力はない。




「あ、ありがとなっ……!」


男は逃げるように角を曲がって行った。







「ま、まぐろくん…?」

「…ゴメンね★ もしかして、怖がらせちゃった?」

「怖いっていうか…いくらなんでも、いきなり道に迷っている人にあんな言い方はどうかと…思って。」

「りんごちゃん、あの人がホントに道に迷ってると思ったの?」

「え? だって道を尋ねられたし…」

「あの人、ゼッタイ道に迷ってない。」






ボクの目には獲物を狙う狼にしか映らなかった。






「そんなことないよ、ゼッタイ迷ってました!」

「…りんごちゃん良い人すぎ、世の中そんなりんごちゃんみたいな良い人ばっかりじゃないよ★」

「そんなの、あの人が悪い人かなんてわからないと思うけど…!」

「なら、あの人が良い人かどうかもわからないよね★」

「…うん。けど悪い人っていうか、アブナイ感じはしなかったし…それ以上に感じの良さそうな人だと思ったけどなぁ…。」

「わかってないね、りんごちゃん。…まあ、見るからにアブナイ感じの人なんて、そうそういるもんじゃないと思うけどね★」


…異世界にはいたような気もしなくはないけど。

と言うよりまず、気があって寄ってくる男が感じを悪そうにするはずがない。





「とーにーかーく!りんごちゃんに言いたいのは、いきなり近づいてくる男には気をつけろ!ってコト★」

「…はーい。」

「本当にわかってる?」

「わかってるって!」

「……。」



正直言うと、不安。









…こんな一面も彼女の魅力と言えば、魅力なんだろうけど。







「ねえ、今回みたいにボクが居ればいいけど、もしボクが居なかったら大変…でしょ?」

「え?…あ、うん。」









…ウソでもいいから、ボクを安心させてよ。













こんな時、ふと思ってしまう。





『何故りんごくんは、まぐろくんの"キラッ★"を直視しても効かないのだろうか。』

『…がっかりした?』

『とくに★』


異世界に飛ばされた時はあんなこと言ったけど───




どうしてりんごちゃんには効かないのかな…って。






偽りの好きになんて何の価値も無いのは知ってるし、ボクはりんごちゃんにこの目で惚れてほしいとは思ってない。








ただ、りんごちゃんを安全な所に、傍に置いておきたい、それだけで───













ガタンッ!




「痛っ…★」


ベットから落ちた…ようだ。






時計を見ると午前10時。

随分と長い間、夢を見ていたらしい。





「あんまり思い出したくなかったなぁ…。」


過去の自分を見て、思う。







「…独占欲、強すぎ。」













隣から鈍い音が聞こえてきた。


「…っと、りんごちゃんだ。」


机の上でブーブーと携帯が鳴っていた。








「…もしもし、りんごちゃん?」

『まぐろくん!あれ、起きてたの?』

「いや、今起きたトコ★」

『やっぱり!まぐろくん家のお店に行っても居ないから…』

「りんごちゃんの夢を見てたら、寝坊しちゃった★」


ウソはついてない。あんまりいい夢じゃなかったけど…ね。


『えっ…私の夢?』

「うん★ あ、でも……」




「ホンモノのりんごちゃんに会いたいから、もう少しだけ待っててくれない…かな?」


『…さっきまで一緒に居たのに?』


電話越しに彼女の笑い声が聞こえる。








嗚呼、彼女は今日もボクの傍に居る。













「うん、だってボクは───













-----------------------------
【END】
くっついたまぐりん話を
書きたくて…そして撃沈orz
最後はあえて流しました。
いろんな解釈をしてもらえると
嬉しいなーって思ってマス(・v・)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ