黄瀬がモデルだということを忘れていた。
□黄瀬のくせに。
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『―オレの写真集、好評発売中っスよ!買ってくださいっス!!』
今日、久しぶりにバスケの生中継以外のテレビを見た。…気がする。
「黄瀬じゃねぇか…!」
そこで、俺は思い出したのだ。
黄瀬が超人気モデルだったということを―
「そっか…あいつ、モデルだったもんな」
まぁ、今もだがな、と付け足す。
「・・・住む世界がちげぇよなぁ・・・やっぱ」
))ガバッ
「やべ!!今日午後練じゃねぇか!!!」
「笠松先輩、遅いっすねぇ・・・」
「なに、やっぱ気になんだ」
「森山先輩止めてくださいっス;;」
「おまえあれだ、笠松きたら『オセェヨ( ゚д゚)、ペッ』ってやってやれ」
「せんぱい顔;;」
))ガシャッッ
「悪い遅れた!!」
「あ、笠松先輩!『オセェヨ( ゚д(殴
「なに、おまえ。●ぬ?」
「え、今なんて;;」
「だから、し●かって聞いてんだよアホ」
「すいませんっしたーーー!!!!!ヽ(;▽;)ノ」
「…なんか、ごめんな」
「別に、いいっスけど…」
「けど?」
「顔は止めてほしいっス……」
「うぜーな、お前www」
「そーゆーの酷くないっすか!?」
いつの間にか先ほどまで抱いていた"住む世界が違う"という感情は消えていた。
こういう、楽しい気持ちにさせるのが本物なんだな、などと思わせる。さすが人気モデル。
「…ばーか」
「え?なんすか?」
「なんでもねぇよ!よし、俺は遅れたかんな、練習二倍だ!!」
「どーせやるなら皆で二倍やるっスよー」
「そうですよ!!一緒にやりたいですよ!!!」
「うーん、俺は女の子のために筋肉付けたいしね」
「笠松、一人だけっつうのは無理らしいな」
「そうですよ!」
「皆でやろうぜ!」
「みんな…」
この…海常のチームで、メンバーで、キャプテンで良かった。今なら本気でそう思う。
「(俺が海常選んだの、間違いじゃなかったっすね」
「笠松せーんぱいっ!」
「あ?なんだ?」
「俺のほうが長く走れたら帰りに肉まん奢ってほしいっスわ」
「挑むところだ。逆に、俺が勝ったら奢れよ」
「やってやるっス!!」
はぁっはぁっ・・・
「すげーよあいつら・・・もう50週目だよ・・・」
「どんだけ肉まん奢りたくねぇんだろうな・・・」
「うん、多分ちがうとおもう。」
遠くでみんななにか喋っている、という位にしかもう黄瀬にも、笠松にもきこえていなかった。
黄瀬はもう倒れるのではないか、と心配されるほど汗がすごく、若干顔もあおざめてきた。
一方の笠松も同じような状況ではあるが、若干黄瀬より余裕がみられる。
これが三年の、キャプテンの力なのだろうか。