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□素直になれないあまのじゃく
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◆黒子大好きしつこい系男子高尾ちゃんと、素直になれないツンデレ黒子っちの話






帰り道、正門をくぐろうとすれば、そこには何故か高尾くんがいた。

僕は見つからないように、元々薄い影をもっと薄くして、なるべく静かに通り過ぎようとした。………けど。




「なぁ、黒子ー」
「何ですか…ていうか、ついてこないで下さい」
「えー、いいじゃん別に」



あぁそうですか。君にとっては面白みが(あるのかどうかは知りませんが、まぁ、あるんでしょうね)あっていいかもしれませんが、僕にとってはよくないですよ、ちっとも。


「…高尾くん、しつこいです。」
「いやー寧ろ、そこが俺の個性っつーか?」
「……はぁ、そうなんですか」


…何故こうなってしまったんだろう。


結論を言うと、なるべく気配は消したつもりだったが、やっぱり高尾くんには見つかってしまった。

何事もなく通り過ぎようとした僕の腕を掴んで「逃がさないぞ☆」と言った高尾くんの顔を、僕は一生忘れないだろう。


それにしても…

「…君、どこまでついてくる気ですか」
「え、黒子の家まで送るつもりだけど」
「…はぁ?」

そんなことを頼んだ覚えはないのだけれど、いつの間にそんなことになったのだろうか。

「だって、一人で帰ると危ないだろ?」

僕は思わず眉を寄せた。

高尾くんの言っている意味が分からない。

…どうして、そんな女子のような扱いをされなければいけなんだろう。

僕は、男なのに。


「まっ、いーからいーから!大人しく送られとけって!」


高尾くんはそう言って、僕に何も言わせないようなオーラを出して、明るく笑った。

そうしなきゃいけない気がしてくるから不思議だ。


仕方なく僕は、高尾くんが言ったとおり、彼に大人しく送られることにした。




「…もう、ここでいいです。」


家の近くまで来た。

あとはすぐそこの角を曲がって少し歩けば家につく。だから僕は、高尾くんに「ありがとうございました。」とお礼を言って背を向けようとした。


…が、そのとき。


「あっ」
「ちょ、黒子っ!」



高尾くんの焦った顔が見えたと思った次の瞬間、何故か僕は高尾くんの腕の中にいた。

「え、…え?」

いまいち状況が分からず、僕はただあたふたしてしまう。

どうやら高尾くんは、後ろを向いた拍子にバランスを崩してつまづきそうになった僕をギリギリのところで支えてくれて、倒れないように引き寄せてくれたみたいだ。


「黒子、大丈夫か?」
「…はい、ありがとうございま…」

ちゃんとお礼を言おうと顔を上げると、目の前には高尾くんの顔が度アップで。しかも心配そうな表情をしているというオマケ付き。

僕はまさかそんなこと予想もしていなくて、ただただ顔の近さに驚く。

「なっ、高尾くん、ちか、近いです!」
「え、どしたの急に」
「とにかく、離れて下さい!」

慌てて離れようとすれば、高尾くんは急に焦りだした僕を不思議そうに見つめて、渋々といったように腕をはなしてくれた。


「なんだよー、助けたのに」

高尾くんの腕の中から脱出した僕は、彼から少し距離をとる。高尾くんが残念そうな顔をしてるように見えるのは、きっと僕の妄想だろう。


彼の顔を至近距離で見ていると、何だかドキドキしてしまって、落ち着かなくなる。自分では平凡だのなんだの言っているが、高尾くんは立派にイケメンの部類に入るタイプの顔だ。かっこいいしよく笑うし面白いから、きっと相当モテるだろう。

…友達止まり、という人も多そうだけど。

「……あのさ、くろ」
「すいません、あまりに近かったので(主に顔が)…助けてくれことには感謝しています高尾くん本当にありがとうございましたでも次からは待ち伏せしたりしないで下さいね、ではっ」
「え、ちょ…黒子?!」

まさかのノンブレス?!とか何とか、高尾くんが何か言いかけたのも無視して、急に走り出した僕に驚いた声を上げたのも無視して、きっと高尾くんには通じないであろうミスディレクションをフルに発動した僕は、今世紀最大のダッシュで角を曲がった。



「…やっぱ、振り向いてくれねーよなぁ」

高尾くんが走り去る僕の背中を見て、

「いや、ここで諦めたら何も始まんないっしょ!よし、頑張れ高尾和成!」

そんな決意のようなものを呟いていたなんて知らず。


「……ズルいです」

僕は家で一人、悶々としていた。

どうして来たんですか、だとか。

ついてこないで下さい、だとか。

しつこいです、なんて憎まれ口を叩いてしまうのは、僕の生まれながらに備わってしまった、ひねくれた性格のせい。

ホントは、送ってくれて嬉しかったし、助けてくれたときは心臓が壊れるかと思うぐらいドキドキしたし、もっと近くにいたかった。

素直にありがとうって言うことが、こんなにも難しいなんて。



恋愛って、難しいですね。なんて呟いている僕が素直になれて高尾くんと結ばれるのは、もう少し先のお話。




◆おまけ◆

「黒子、俺のこと好き?」
「好きじゃないです。」
「ふーん……ほんとは?」
「……嫌いじゃ、ないです」
「ははっ、嫌いじゃない、かぁー」


「(本当は…好き、って言いたいのに。)」

「(ほんとに素直じゃないよな。)」

「(僕の、ばか。)」

「(まぁ、そんなとこも可愛くて好きなんだけど、)」

「(ちゃんと、言わなきゃ。)」

「(たまにはちゃんと聞きたいな、なんて…)」


「…好き…で、す……」
「…っ、え、黒子…?」
「僕は、君のことが…大好き、です…」
「〜〜〜っ…もー!絶対俺の方が大好きだし!」
「な…、いいえ、僕の方がもっと好きです!」
「俺の方がおっきい!」
「僕です!」
「お・れ!」
「僕ですっ」



「……ふはっ、何ムキになってんだろーな、俺ら」
「…ほんとですね」
「黒子、あんがとな。…嬉しかったぜ」
「…はいっ」



何だかんだバカップル?
果たして黒子っちはちゃんとツンデレになっているのか、まぁ定かではないが…多分いいでしょう!(`・ω・´)
※誤字・脱字を直しました…。
 

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