小さな物語

□天才人斬りの恋模様
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僕は新選組1番組組長、・・・と言えばだれもが怖がる。

まあ、もう慣れたけどね。

今日は非番、京で有名な団子屋に行っている。

そのお店は団子が一流なうえに値段も安いらしい。

これは甘い物好きの僕として行かないわけにはいかないよね。

本当はもっと早く行く予定だったのに、  土方さんのお説教が
長くて来るのが遅れちゃったじゃないか。

と頭の中で土方さんの悪口を言っていたら顔に出ていたらしく

「おい、人斬りの沖田総司だぞ!」「早く逃げないと、斬られるぞ!!」

僕の顔を見て、お店の中にいたお客が、数名そそくさと出て行った。

「??あれ?・・・お客様?」

すると中から鮮やかな赤色をあしらった着物を着て、
きれいな艶のある黒髪を結いあげたかわいらしい娘が両手に
お団子とお茶をお盆に載せて出てきた。

「ねえ。そのお団子とお茶全部もらえるかな?」

すると娘はくるりと振り返った。

大きな瑠璃色の目、純白の白い肌、小さな薔薇色の唇、
そしてなによりその何事にもぶれないような真っ直ぐな瞳。

その瞳に沖田は驚いた。

「え!でもこれは他のお客様ので「そのお客さっき出て行ったよ。だからちょうだい。」

「あ、ありがとうございます。」

そういうと深々と礼をして中に入ろうとする娘の手をつかみ逃がさまいとする。

「え?」

「一緒にお団子食べようよ。一人じゃさみしいし、休憩だと思って。」

「で、ですが。勝手に休憩をしますと怒られますので・・・。」

「大丈夫。「お客様」のお願いなんだから。ね?」

「・・・うっ、わかりました。」






「もう、沖田様は意地悪です!!」

そう言って頬を膨らます雪

「っククッ!    あはははは!!!  
雪ちゃんおもしろすぎ・ッククク!!
もう駄目ッ! 
あはははははははははっははは!!!!!!」

その隣で爆笑する天才人斬り沖田

「沖田様は意地悪の中の意地悪です!!」

そういってそっぽを向く雪にまだ笑いが収まらない沖田が声をかける。

「ごめんごめん、ックク! 雪ちゃんの反応が可愛すぎてつい。」

すると雪は真っ赤な顔で振り返り、

「沖田様は、意地悪ですっっっ!!!!!」

と言って中に入ってしまいました。

「また、こよっかな。」

そういうと主人にお金を払い屯所に帰って行った。






それからというもの、沖田は暇があればこの店に来るようになり、だんだんとお客さんも沖田に慣れてきた。


誰しも、毎回毎回人斬りが大声出して笑っていたら危機感も薄れるというもので・・





「雪ちゃーん。いつものお団子お願い。」

「沖田様、 またですか。そうとうお暇なのですね。 わかりました。少々お待ち下さい。」


このごろは雪ちゃんも口が立つようになってきたな、
まあ、それを黙らせるのが僕の得意技なんだけどね。

「お待たせしました。  ?沖田様、何かお考え事ですか?」

そう言うと僕の隣にちょこんと座った。

いまじゃ僕が来たら隣に座っておしゃべりをするというのがお決まりになっている。

「いや。雪ちゃんがよく僕のことを見るようになったな〜って。」

と僕がちょっとからかってやると顔を真っ赤にしておこ、


る?


「そ、そんなこと! そりゃ、沖田様はお顔はきれいだし、
たまにしかお店に来てなくてさみしいな、とかいつ来てくれるのかな?とか、
好きな娘さんとかいるのかな?とか、
沖田様のことで一日中頭がいっぱいだ、・・・と・・・・・・・かいうことは
ないですぅっ!・・・うっ、い、今のは空耳ですっ!!」

と顔を真っ赤にして言う雪ちゃん、

不意打ちでこれは反則だよ。

「うん、空耳だよね?雪ちゃんが僕の事を好きすぎてたまんないっていう話は」

「〜〜〜〜〜!!!!」

きぜつしそうな雪ちゃんに聞いてみる、

今までこの子が逃げて行ってしまいそうで、怖くて聞けなかった、
また笑ってくれなくなるんじゃないか、
もう話しかけてくれないんじゃないかって、

「僕は新選組の1番組組長、人斬りなんだ。」

そう、決意して言ったのに、雪ちゃんは真顔で















「知ってますよ。」    「え?」

「今何て?」    「だから、知ってますって!」

「は? いつから?」

「初めて会った時から」


何をいまさら、といった顔で言ってくる雪ちゃん。

そんな君の全部にびっくりして、うれしくて・・・

「あははははははははははははははははは!!!!!!!!」

ほんと、君って最高。

ぼくはそんな君の全てが、愛おしくてだれにも渡したくないと思うんだ。





ほんと、目が離せないよ。

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