物語薄桜鬼 2

□2話
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(やっと帰って来れた。 やっと風間様に会える!!)

真愛の頭の中にはその言葉だけが響きわたっていた。

きらびやかな金色の襖をあけると、真愛が待ち望んでいた人、西の鬼の頭首。 

風間千景が座っている。 その両隣りには天霧九寿、不知火匡の姿が見える。

風間を目にした瞬間、真愛の顔がほころんだ、風間に駆け寄ろうとした時、視界に不知火の顔が入る。
不知火にいい想いを持っていない真愛は、意図しなくても瞬時に顔が歪んでしまう。

それを不知火が見逃すことはなく、声をあげる代わりに大きな舌打ちをした。

「なんだよ真愛、あからさまにそんな顔しやがって。」

不知火の言葉を聞いて、さらに真愛の顔が歪む。

「だって私、いっつも不知火の尻拭いばっかりだし。 だれだって嫌になるよ。」

「ちっ」

その通りなのだから言い返せない。

「まぁ そう言うな真愛、お前にはいつも感謝している。 ほら、来い。」

風間が自分の隣を指さしている。

「! は、はいっ!!」

近くに来れば来るほど、風間の魅力に目が離せなくなる。

金色に煌めく髪、真紅の瞳、優しい眼差し、時折真愛の名を紡ぐきれいな唇。

その全てが真愛を魅了する。

「どうした真愛、そんなにぼーっとして、俺に見とれていたのか。」

不敵に笑う唇に心を見透かされてドキリと胸が大きく音を立てる。

それと連動して見開いてしまった目が、口が、より真愛の感情を分りやすく表す。

「えっ!?そ、 そんな事は・・ない。     です・・・。」 
表情をコロコロと変える真愛を面白そうに見て風間が口角をあげる。

「なんだ。図星だったのか。」

自分の心をよまれ、顔が熱くなる。 そんな恥ずかしい姿を風間だけでなく不知火、天霧が見ていると思うとより恥ずかしくなり、
無意識に顔が下を向く、それと同時に声が上手く出なくなり、声にならない声をあげてしまった。

「っ〜〜〜〜〜〜!!!」

穴があれば入りたい。  真愛の頭の中はその言葉でいっぱいだった。

だが、風間がそれを許すことなく、長くたくましい腕が伸びてき、真愛のあごを持ち上げる。

「お前の顔をもっとよく見せろ。 その赤く甘く熟れたお前の顔をな。」

真愛の反応をおもしろそうに笑う風間の意地悪な瞳に真愛の鼓動が速くなる。

「そしてお前の小さな唇でかわいらしく鳴いてみろ、”風間様”とな。 ククククッ」

風間が口を開けるたびに風間の唇に目がいってしまう。

「真愛、お前は俺の物だ。 さあ、もっと俺を楽しませてくれ。」

風間が真愛の名を紡ぐごとに、もっと言って、もっと・・・もっとわたしの事を、私だけを見て。

そう欲をはってしまう。

「か・・・・ざま、様。 かざ・・ま   さま。」

その時、真愛の頬をひと滴の涙がつたった。

「ほう。今度は泣くのか。 真愛はおかしな奴だな。それとも狂鬼は皆そうなのか?  まあいい。 あの女鬼もお前のように面白ければいいのだからな。」

風間様は私を見ていない、私をあの女鬼に見立てているだけ、私はあの女鬼のただの代わりにすぎない。

私がどんなに完璧に仕事をこなしても、どんなに着飾っても、あの女鬼には勝てない。

私は一生あの女鬼の代わりにすぎない。

どんなに好きでも、どんなにあなたのことを愛していても、あなたはそれに応えてくれない。

私の想いは死ぬまで一方通行。  

だからあなたの口からあの女鬼の名前が出た時は息ができなかった。

声が出なかった。

あなたの目を、顔を、姿を、






見る事が出来なかった。








あなたのことを今までのようにただ純粋に愛しいと想うことが出来なくなった。


あなたの側に、いつもあの女鬼を感じた。


あなたの口からあの女鬼の名が出てくるのが怖かった。








あなたの側に、               いれなくなった。


こんなに醜い自分がいたなんて思わなかった。



想いたくなかった。    それを認めた瞬間。



あの女鬼に負ける気がしたから。


そんな時、風間様から告げられた。

(千姫の所へいけ。  あいつがお前を必要としている。 ついでに、千鶴のいる新選組も調べておけ。)












                   私は用無しだと。
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