物語 薄桜鬼

□8話
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「お前らを預かることになったからには、ここにいる誰かの小姓になってもらわないとならねえんだが・・・。」

と言ってから、土方が周りを見回す。

しばしの沈黙があり、雪が土方を見つめ、声をあげた。

「私、沖田さんの小姓になりたいです。」

誰しも目を見開き、なぜわざわざ沖田を指名したのか、疑問に思っているようだ。

「あぁ、お前がそれでいいなら。」

と、土方の返事を聞くと、くるりと沖田の方を向き直り、にっこりと笑い。頭を下げる。

「てことで、沖田さん。これからよろしくお願いします。」

その姿を見て、沖田も言葉を返す。

「こちらこそ。 僕も君の事気になってたし、 って言っても、まだ二人とも監視中だからね?」

沖田の言葉を受け、雪が顔を上げる。

「はい、わかっています。 ですが、 私と千鶴はこの新選組から逃走する理由がありません。 その所を少しでもお気に留めていて頂きたく願います。」

と、今度は局長の方にも頭を下げる。

「まあいいよ。 別に、 何かしでかそうものなら、僕が斬ってあげるから。」

沖田は雪に黒い笑みを向ける。

すると雪が頭を上げ、沖田を見つめ

「沖田さんに斬られることは、一生ありませんから。」
             
雪の目が細められ、笑顔になる。 でもその瞳はじっと沖田の目を貫いていた。




結果、千鶴は斎藤の小姓となった。 これも雪の発言のせいなのだが、 雪いわく、この中で一番斎藤が安全なそうだ、イロンナ意味で・・・一番危なそうなのが原田だと言えば皆さんもわかってくれるだろう。


まずは、様子見、ということで千鶴と雪は今二人仲良く閉じ込められていた。

「千鶴!」 「雪さん!」

「「ひさしぶり〜!!」」

抱き合って再会を喜ぶ二人。

それからは他愛もない話をして、疲れを癒す。

「ほんと、千鶴は大きくなって・・・昔はこんな小さかったのに・・・」

と自分の腰下に手を当てる雪、愛おしそうに見つめる雪に、千鶴は照れくさそうにはにかむ、
だが、雪の手を見た千鶴が首をかしげる。

「あれ?私、そんな小さなときに雪さんに会いましたか?」














千鶴の一言で、場の空気が怖いほどの静寂に包まれる。
















ほどなくして雪が話し始めた。














「あ〜、違う違う。 ここらへんじゃなかったね、ここらへんだよ〜。  ごめんごめん、千鶴と会ったばっかりの時小さいな〜って印象しかなかったからさ〜、間違えちゃった。」

そう笑いながら、腰下辺りの手を胸の辺りまで上げる。

「そうですよね。 私、雪さんとそんな小さい時に会っていませんから。」

と千鶴も笑う。 それからも話は続き、

「あ。 その雪さん、って呼び方じゃなくて、雪、か雪ちゃんって呼んで。それと、敬語も無し。」

と、にっこりと笑いかける。事実雪の方が1つ、2つほど年上なため、戸惑っていた
千鶴だが、最後には快く返事をした。





「うん!」






ここに来て一番の千鶴の笑顔だった。








もちろんこの会話を聞いてる監視もいるわけで、雪が言った《私と千鶴はこの新選組から逃走する理由がありません。》
という言葉が頭をよぎる。

「あの子たち、悪い子たちじゃなさそうだね。」

「そうだな。」





「あ! お二人さん! ちょっとお話しませんか?」

千鶴と雪の監視をしていた沖田と斎藤に、雪が障子を開け、話しかけてきた。

「ん?いいよ〜。」

「・・だめだ総司。 今は任務中であり、私語をしてはいけない。 ましてや監視対象である人物との会話などもってのほか、それに「はいはい、でもさっきは僕と話してたよ?」

「う・・そうだが、それとこれとは・・・」








雪のこの行動のおかげで、少女たちと新選組大志達との仲が少なからずとも良くなったこと
には変わりない。

そして、今後の展開が加速したのも事実であり、 世界が大きく崩れ始めたのも事実だ。







だが  雪が、それを意図して行動していたのかは、定かではない。
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