物語 薄桜鬼

□4話
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またまたまた小鈴です。

まだ雪ちゃんは帰ってきませんが、私は、ある方に恋をしてしまいました。

そのお人は、有名な浪士組の方で井吹龍之介様です。

龍之介さんが私のことをどう思っているのか、わかりませんが・・。

私は龍之介さんと不釣り合いにならないように、
今でもお稽古を頑張っています。

それに、いいお話もあります!

なんと浪士組が会津藩様にお認めになられ、新選組、と名を改められたとか。

ともかく、龍之介様が楽になられたらしく、私は嬉しいです!!


と、今は龍之介さんと団子屋さんでのんびりしています。

あ!もちろん、今日はお休みだからですよ!

べつにこの日のためにお稽古も、
お座敷も人一倍頑張ってお休みを
貰ったとかいうんじゃなくて、・・


まあともかく、今は龍之介さんと二人っきりです!!

「?おい。小鈴?大丈夫か?」

と龍之介が隣で真っ赤になっている小鈴の顔を覗きこむ。

(龍之介さんのきれいなお顔をこんな間近で・・)

とこんな気ままな事を考えていた
小鈴にちゃんとした会話が出来るはずもなく、

「龍之介さん・・・。ふぅ・・。」

となんとも色気のあるため息をひとつ。

まさに女心と秋の空。

そんな小鈴に龍之介はびっくりするばかり。

大丈夫か?と聞いた相手にこんな返され方をするとは思いもしなかった
龍之介は目を見開くばかり。

「おい!小鈴!!聞こえてるか?」

と小鈴の両肩に手を置いて揺さぶってみると・

「っ!!はっ、はい!龍之介さん、何でしょう?」

とやっと正気に戻る小鈴。

と、戻るやいなや龍之介の手が自分の両肩に置かれているのに
気付くと顔を真っ赤にし、びっくりしていた。

そんな小鈴の様子を見ていた龍之介は最初は首をかしげていたが、
すぐに何のことかわかると、手を離し顔を真っ赤にして
「すまない、その・・」

と二人とも真っ赤っかのなんとも初々しい状態だ。

すると
「あっれ〜?きみ、こんなところで何してるの?」

と新選組、一番組組長沖田総司がニヤニヤした顔で近づいてくる。

龍之介は沖田を見るとあからさまに場が悪い、といった表情をした。

その人はきれいな翡翠色の瞳をして、何もかもが完璧に整った顔立ち、
謎を秘めた目をしているのにどこか子供っぽい雰囲気の不思議な人・・・。

(?龍之介さんの知り合いの方かしら?)

と小鈴が首をかしげていると、龍之介は沖田という男に怒鳴っていた。

「うるさいっ!こっちに来るな!!」

と龍之介が大声をあげて怒鳴っていても沖田は構わずスタスタと歩いてくる。

面白いものを見つけた意地の悪い子どもの様な笑顔で・・・

「なんでそんなこと言うのかな?君と僕の仲でしょ?」

とニヤニヤと龍之介を見ながらちらりと小鈴の方を見ると。

「君もすみに置けなくなってきたね。」

と龍之介を茶化すと龍之介は

「なんのことだ?」

とわけがわからない、と首をかしげていた。

(っ!・・・・・・。・・・龍之介さんにその気がないのはわかってる。・・・。)

と小鈴がうなだれて、うつむいていると。

「あ!そうだ。自己紹介がまだだったね。」

と沖田が突然小鈴に話しかけた。あわてて小鈴が顔をあげるとにっこりした沖田の顔が目の前にあり

「わっ!!」

と大きな声をあげて小鈴がたじろいだ。

(男の人の、しかもこんなきれいなお顔の人を髪がふれそうなくらいの至近距離で
見たのが初めてで心臓がバクバクする。)

小鈴は息を整えようと深呼吸を何度も繰り返している。

そんな小鈴を見て沖田は面白そうにクスクスと笑いを押さえている。

そんな二人を複雑な表情で龍之介が言った。

「沖田。小鈴をからかうなよ。」

そう言った龍之介の声は荒々しく、言った本人も驚いていた。

沖田は数秒 間を開けると、

「僕は新選組一番組組長沖田総司。君は小鈴ちゃんだよね?」

「はい。そうです!よろしくお願いします。・・・ですけど、なんで私の名前・・あっ!さっき龍之介さんが言ってましたね。」

「?ちがうよ。だって屯所でよく井吹君が「あああああああああーーーーーーーー!!!!!!!!」って、なに?」

「いや、なんでもねえ。・・」

と、さっきの勢いが消えた龍之介はほっとした表情でいた。

ふと気付いた龍之介は沖田に聞いた。

「ところで今日はどうしたんだ?非番じゃあるまいし・・・」

「ああ、今日は・・・」と二人で話し始めた。

そんな二人の様子をぼんやりと小鈴が見ていると、見知った人影があった。

(!!!!!)

勢いのあまり立ってしまい、小鈴の異変に二人とも驚いていた。

「どうしたんだ?」

と龍之介が不思議そうに聞くと、

「い、いえ。」

と目を見開いたまま固まっている小鈴。

沖田が小鈴の見ている方を見ても、たくさんの人が行きかう道が見えるだけ。

「誰か知りあい?」

すると小鈴は少し間を置き、嬉しそうな声で

「昔の友達が、・・・見えました。」

と言った。

そう言った小鈴の顔は、声とは裏腹に、どこか悲しそうな・・・それでいてほのかにほほ笑んでいるような。

そんな色っぽい小鈴に龍之介も、沖田も、釘づけになった。
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