物語 薄桜鬼

□3話
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私は静。 まだ小さいけれど、
立派な舞子見習いです!

御座敷に上がったり、なまりで話すのは大変ですけど、

日々、精進してます!!

今は、お稽古は終わり。

今から外に遊びに行くところです。

と静が元気に外に出ていく、「いってきます!」

「今日はみんないるかな?」

近所に住んでいる女の子たちの顔を想像しながら足取りも軽く、
進んでいく。

目的地に着いてみると、
いつもいるはずの女の子たちが見当たらなかった。

「あれ?・・みんな〜!どこ〜?お静だよ?」

そう静が声を張り上げてみても誰もいない。

「あ〜あ。遊ぶ人、いないや。」

そういって近くにあった小石をポンッと蹴ってみる。

静はポンポンと転がっていく小石を見ているとむなしくなってきた。

するとその小石がコロコロと転がっていき、
ちょうどこちらに歩いてきていた男の子の
履物に当たった。

「あ。」

静は予想以上に遠くに転がって行った小石に驚いた。

男の子の履物にも軽く当たってしまったので軽く謝っておく。

「ごめんなさい。まさかあたると思わなくて・・。」

するとその男の子が静が謝ってきたのをいいことに
とたんに威張りだした。

「お前、この俺がどこの誰だか分ってるのか?俺は表通りの有名呉服屋の跡取りだぞ!」

「え??!」

表通りの呉服屋と言えば大金持ちの一流店だ。

すると、静がおじけずいたのをいいことにさらに周りにいた
取り巻きたちが

「そうだぞ。お前、履物に傷を付けたりして!ただで済むと思ってんのか?」

「そうだ!!こいつに罰を与えるべきだ!!」

と騒ぎ立てる。

「そ、そんな!あんまりです!それに、小石が当たっただけじゃないですか!」

と静が反撃をすると

「ッ!だまれだまれ!!お前なんかが口答えするな!」

と男の子たちが静に石を投げてきた。

「やッ!・・・やめて!!」

そう静が繰り返しても男の子たちはやめてくれない。

「これも全部お前が悪いんだ!自業自得だ!!あはははははは!!」

そういうと取り巻きたちも笑いだした。

「やめてっ!」

するとシュッ

冷たい感触と体が浮く感じがし、目の前が真っ白になった。

気がつくとどこかの神社に来ていた。

(あれ?・・どうして、私ここにいるの?)

すると自分の後ろに座っている女の子に気がついた。

女の子は静と背中合わせの状態で座っている。

ちらりとその女の子の方を見てみるとびっくりするほどきれいな顔立ちで、
純白の着物をまとった女の子が座っていた。

女の子は私が見ているのに気付くと、にっこりとほほ笑んでくれた。

その吸い込まれそうな、心の中まで見透かされたような真っ直ぐな、
きれいな瞳にドギマギしてしまった。

そんな私の姿をみてその子は鈴の音のようなかわいらしい声で
コロコロと笑った。

「あなたの目は他とはちがうのね。とてもきれいだわ。」

私はそんなことを言われたのは初めてで、とてもびっくりした。

そんな私の表情を見て、またその子はコロコロと笑う。

今度の笑いはだいぶ長く、

(ここまで笑われるとムッとするわ。)

そう思った静はまだ笑っている少女に向かって言った。

「そんなに笑うなんて、あなた頭大丈夫?」

そう皮肉をこめて言うとその子は驚いてただでさえ大きい目を
もっと見開いて驚いていた。

(な、なによ。そんなにわたし・・・変?)

するとその子はまた笑いだし、散々笑い続け、こういった。

「わたし、あなたの事気に入ったわ。」

そう言うと女の子は立ち上がり、
「私の名前は雪、あなたは?」

「し、静!・・あっ!でも表向きは小鈴。」

すると雪はクスッと笑って、

「じゃあね。静、でも表向きは小鈴、ちゃん」

そう言って着物をひるがえした雪は冷たい風と
私の気持ちを残して消えてしまった。

雪ちゃんの冷たいからだ、浮世離れした容姿、

「雪ちゃん。あなたは物の化なの?」

わたしはじんじんする体を押さえながら宙を見上げた。
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