物語 薄桜鬼

□2話
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千姫様との言い合いが長らく続き、私も疲れて

きたころ。

「あ、あなたたちだれ!!??」

と弱弱しながらも小さな鈴の音のような透き通

っている、けれど凛とした声が聞こえてきた。

かわいらしい声、きれいな容姿、だがはっきり

とした殺気がただよっている。

(この年の娘にしてはめずらしい)

「私はここ、島原の芸妓、君菊と申します。」

「わ、私はっ?!」

君菊はすばやく千姫を制す。

見ず知らずのものに千姫の名を教えるのは危ないからだ。

千姫は驚いたがすぐに君菊の意図を察すると

「先にあなたの名前を教えてくれる?私たちは外に倒れていたあなたを看病してあげたんだから。」

と鬼の姫らしい凛とした声で言った。

すると少女はおびえながらも答えた。

「私の名前は雪です。」

「あなたは勘違いしているようですけど私たちは人間ではなく、鬼です。」

と君菊は優しく語りかけた。

「えっ?じゃあそこのお人は、千姫様!?」

とさっきまでとは打って変わってかわいらしい

笑顔になった。

「ええ。そうですよ。ねえ、千姫様?」

「えっ?!・・・ええ!!そうよ、私が千姫よ。」

それを聞くとさっきまでの笑顔は消え去り、凛

とした態度で、

「この雪、千姫様のお力を借りに、山奥から出てきました。
君菊様はお分かりの様ですが私は人間に免疫がなく、
千姫様方にあのような無礼極まりない行動をとってしまい、
すみませんでした。私はご存じの通り雪女です。
そのため京まで来ると泊るところもありません。どうかここ、島原で芸子として
働かしては頂けないでしょうか?」

(ああ、やっぱり) 君菊はここで確信した。

「いいでしょう、この君菊身を持って雪さんを立派な芸子に仕立て上げましょう。」

「ちょ、ちょっと君菊!そんな勝手に!」

「千姫様。大丈夫です。この君菊、雪女とは昔から繋がりがあります。
この雪は大丈夫です。それに
雪がいれば千姫様も
退屈しなくてすむでしょう?」

そう君菊が言い切ると、千姫は少し顔を赤らめ

た。

「い、いいわ!雪、これからよろしくね。」

それまで不安そうに見ていた雪もぱ

ぁっ!と笑顔になり

「ありがとうございますっ!この
雪、お役にたてるようしょうじんします!」

と明るく言い切った。

(この子は私たちの運命を、生き方を変える)

まあ、千姫様は良くお分かりになって

ないようですけれど・・

とうれしさを抑えきれずにいる鬼の姫を見なが

ら思った。
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