氷剣と風
□始まりのあの日
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「クラサメ・スサヤ。本日をもってクラスごとの任務とは別に特別任務に他の3人と共に行ってもらいたい。」
藍色の瞳、瞳と同じ色をした。
少年は今ペリシティリウム朱雀のアギトを育成するための機関魔導院の最終決定場「八席議会」に呼ばれ任を受けた。
「何か質問はあるか?」
学術局長がクラサメに質問の有無を問いかけた。
普段、アギト候補生は入ることの許されない八席議会だが、クラサメは臆することなく局長に質問をした。
「質問願います。局長。」
「ん?何かね?」
正直、質問はしてほしくなかったのか、局長は眉毛をピクと上にあげた。
「特別任務と先程仰いましたが、私はどのような任務につけばいいのですか?」
「ふむ。特別任務というのは朱雀のこれまでの歴史。そして各地に散らばる「ルシの輝石」を集めてほしいのだ。」
「ルシの輝石を?」
この大地には4つのペリシティリウムがある。一つは朱雀。一つはミリテス皇国。一つはコンコルディア王国。一つはロリカ同盟。
この4つのペリシティリウムは4つのクリスタルを基準に発展していった。
各国のクリスタルはそれぞれの国にそれぞれの力を与えた。
朱雀クリスタルは魔法を
白虎クリスタルは機械を行使する力を
蒼龍クリスタルは魔物を従える力を
玄武クリスタルは己の肉体を強靭にする力を授けた。
そしてクリスタルは自身を守る存在を人間から作り出す。ルシというものを作り出した。
ルシはルシになりし時、自身の使命をクリスタルから授かっており、その使命を研げたのならば「昇華」クリスタル化する。
反対にルシの意志から背いた場合、シ骸という魔物になってしまう。
だからルシはクリスタルに反対しなように月日をかけて人間の心を失っていく。
そしてルシの輝石とは、ルシが使命を果たし昇華したときのクリスタルの破片のことをいう。
「しかし、ルシの輝石を集めてどうするのですか?」
「君が今から共に任務に当たってくれる一人はクリスタルの輝石から昇華する前のルシの記憶を読み取れる者がいる。」
「その人にルシの記憶を読ませ、使命を判明させるーそういうことですか。」
「流石。筆記試験トップだけはあるね。その通りだ。ルシの記憶を知ることで、朱雀の発展。そしてルシを後にこれ以上増やさせないためなのだよ。」
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「クラサメッ」
ガバッと後ろから茶色のポニーテールの女子が抱きついてきた。
「驚かせないでくれ、エミナ。」
「ふふん♪」
エミナ・ハナハラ。
クラサメとは同期で訓練生の頃から一緒で共に候補生になったのである。
クラサメは2組にエミナは5組に所属していた。
「クラサメ…呼ばれていたけどなんだったの?」
「ああ…大したことはない。筆記試験が今回良かったからな。その表彰式みたいなものさ。」
「ふーん?」
我ながら今のは少し苦しかったかもしれない。と口に手をやる。
エミナは鋭く、バレてるかもしれなかったが
「そっか、クラサメ頭いいもんね。」
と納得してくれて安心する。
そもそも、自分の任務を人にはなすのは候補生の中で暗黙の了解として禁止されている。
ましてや八席議会からの依頼。
尚更言えなかった。
そしてクラサメは先程の学術局長な話を掘り返す。
(果たしてクリスタルの輝石を集めることが朱雀の発展につながるのか?)
クラサメはこの任務にどこか裏を感じていた。