*約束はいつの日か*

□初めて打ち明けた過去
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『・・・よしみ・・・』


「そうだ。こんにちから、それが主の名だ」


『・・・っはい!』にこっ


「・・・!」










よしみ。

ミホークが少女に付けた名前だ。


よしみは、自分の名前をゆっくり理解すると、
柔らかな薔薇色の頬がゆるりと上がっていった。




にこっ。




妖精のような可愛く、綺麗な笑みを浮かべるよしみ。


まだ5歳の少女の微笑みが
綺麗さ帯びていることにミホークは驚く。


先程まで、負、という空気を漂わせていた少女が、
ここまで綺麗に笑えたとは。




・・・だがその笑みは、まだ慣れていないような感じだ。


そうミホークが思っていると、
よしみは小さな紅い口をゆっくりと開けた。











『・・・よしみ・・・、初め、て、笑、った・・・』


「・・・!?」











初めて笑った。

それは、赤ちゃんの時以来ということ。


ミホークはそれにひどく驚いた。
顔にはあまり、出さないけれど。


だって5歳の少女が、初めて笑ったといったのだから。











『・・・初、めて、こんな、かんじょー・・・』


「感情?」


『は、ぃ・・・。初、めて、嬉し、い、気持ち・・・』


「・・・!」












今度は、初めての嬉しいという気持ち。


5歳のこの子が、嬉しいという当たり前の気持ちが、
まだ新しく新鮮なのか。




人は生まれて直ぐ笑う。




それ以来、今まで笑ったことがなく、
笑った表情は少し、慣れていないようなもの。



人は生きていれば何時でも嬉しい感情がある。
よしみは、初めて嬉しいという感情を持った。



色々とおかしすぎる。



ミホークはそう思い、よしみに城へ来いといった。













『・・・ぇ・・・ぃい、の・・・?』


「あぁ。先ほど主の体は酷く冷えていた。
 城へ来て暖まれ。

 ・・・ここは何もない小さな島。

 シシナナ島という所だ。」

































よしみはミホークに少し安心を覚えた。


何もないこの小さな島、
シシナナ島に一つの城が建っていた。



城にしては大きくも小さくもなく、
外見は少々古くなっている。




ミホークはよしみを迎え入れ、

冷えているだろうと温かいココアを渡し、
近くのソファに座らせた。




部屋は必要なもの以外は全く無く、
とてもシンプルisベストである。




ミホークは、ソファにちょこんと座る
よしみをチラリと見、

向かいの大きな椅子に足を組みながら座った。



よしみの服の隙間から見える、数々の痛々しい傷跡。




腕や足は打たれたようで、
もう肌の色が分からなくなっている程色が変化してたり


体中何かで切りつけ刻まれたのだろうか、
その跡を治そうと荒々しく縫われている縫い後。




一つ一つの傷は、よしみの体にしては大きく、

傷がついていない肌は、
雪のように白くて、薄く血管が透けている。



顔にも少々傷はあるが、顔立ちを見てみると
頬はほんのり薔薇色で、口は小さく血のように紅い。


目は二重で大きくくりくりしてい、
すごく薄い薄い瑠璃色の目と長いまつげが、

幼い筈のよしみの綺麗な顔立ちを、
更に美しく引き立たせている。




髪は綺麗なクリーム色。


長さは肩程までで艶やかだが、ふわふわくねくねしていて、
思わず撫でたくなってしまう。



そんな感じだ。



そしてそんな綺麗な顔に、肌色に、
数々の傷は小さな体に非常に不釣り合いだ。












「・・・一つ聞きたい」


『にゃあ・・・?』


「・・・ニャァ?」


『!・・・ぇ、と・・・』











それを一通り見て、ミホークは口を聞いた。
返ってきた返事に思わず聞き返す。



今、にゃあ"と、鳴いた・・・?



それも踏まえ、更に聞くことが増えた。











「・・・先程まで、何があった。」


『・・・!・・・っぁ、』












いきなりの本題に、
よしみは一瞬にしてパニックに陥る。

そんなよしみにミホークは、静かに近づいた。



よしみがビクッと体を跳ねさせる。



震え始めたよしみに、ミホークはゆっくりと隣に座り、
よしみに手を伸ばした。










『・・・っ!!』


「・・・大丈夫だ。」










よしみは海軍に居た時の後遺症のように、
殴られると思ったらしい。


だけどミホークは、
これが剣士かと思わずにはいられない程、優しい手つきだ。


よしみの頭を撫で、抱き寄せた。













『・・・にゃ、あ・・・?』


「・・・落ち着け。
 おれはよしみに暴行も何もしない。

 ・・・大丈夫だ。」











ミホークも、
自分でそう言いながら自分に驚いている。


自分が、こんな事を言うなんてのは、初めてだ。

こんな一人の少女にこんなに優しい言葉を言っている。




でも、放っておけなかったのだ。




直ぐに脆く崩れてしまいそうなよしみを、
この手で安心させたかった。

この少女に、放っておけない存在を感じた。

















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