頂き物 小説

□星に願いを
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そういうと、急にオトコの色香を醸し 出した弟に、エドワードは、敵わないな 、と降参しつつ、目を閉じて、唇を重ね た。 舌で、口腔内を貪ってから、アルフォ ンスが、くすり、と笑う。 「出てきたね。牙」 「…ばか」 そう甘い目で睨む兄に、アルフォンス もついばむような口づけを追加した。

☆ 「…それで、兄さんはいつ、コッチに戻 ってくるの?いつまで、王様修行なんて いって、人間界という牢獄に入れられて るの?」 そうベッドで言うアルフォンスは、裸 のままのエドワードの首筋を撫でる。 二つの傷は、アルフォンスの牙で傷つ けられたもの。先ほどの情事の中では、 そこから血が滴っていたが、今は止まっ ている。 同時に、アルフォンスの首筋にも同じ 牙でさした傷が残っていた。 「…そりゃ、おまえと婚約者が結婚して 、子どもができたら、だろ」 「……ホントに、それで、兄さんは戻っ てこられるのかな」 そんな呟きに、エドワードはきゅっと 眉根を寄せて、笑みを作った。 「…どうだろうな」 ・・ …これは、魔界のヴァンパイア一族が 多数住む、ノスフェラトウ国の、上層貴 族会議の結果だった。 『時期ノスフェラトウ国王である、エド ワード王子は、しばらく人間界で暮らし 、さまざまな事柄について学んでくるこ と。弟であるアルフォンス王子は、宮廷 内で暮らし、お互いは会わぬこと』 それは、兄弟で愛し合っている、と密 告されてから決定されたことだった。事 実なので、否定もできず、二人は離れば なれにされ、だが、とある位の高い貴族 の慈悲で、一年に一度会うことを許され た。 慌てて、弟のアルフォンスに、婚約者 が作られ、次期王になるノウハウを叩き こまれた。そして、本来、王になるはず だった自分は、人間界に捨てられた。

「なぁ、アル」 「うん」 「オレを戻す話しより、おまえは、婚約 者と結婚して、王位を継いでくれないか 」 「何を言ってるの!?僕は、王である兄 さんの右腕として、働きたいんだ!」 「オレたち、ヴァンパイア一族は、人間 よりはるかに寿命は長いし、魔界からし てもわりと長い寿命を持っている。とは いえ、国王もそろそろ限界だ。ノスフェ ラトウ国は、隣国に攻められるスキを見 せてはいけないと思う。オレは、この“ 罰”が消えないかぎり、魔界には戻れな い」 「…どうして、兄さんばかりが罪を背負 わなければいけないのかな。僕だって、 同罪でしょう?だって、僕たちは“愛し 合って”るんだから」 …それは、密告されたことに、オレが いち早く気づいたからだ。 『弟は、オレに、惑わされただけです。 一時の過ちです』 『…なるほど。貴方には、“いろいろと” 噂がある。実の弟が、眩むくらいの色気 を持ち合わせているしな。それに、“甘 い血”を持っていると聞いた。一度、味 見させて頂きたいくらいだ』 下卑た貴族数人の笑い声が、不快でた まらなかった。それを思い出して、エド ワードはきゅっと眉根を寄せる。

「…おまえに子どもができたら、迎えに 来てくれ。もう、十二時の鐘が鳴りそう だ」 エドワードの言葉に、アルフォンスが 時計に目をやる。 日が落ちて、数時間しか共にいられな い。 しかも、一年に一度。

「いやだよ。僕は、兄さんと共に居たい 」 時計は、十一時五十分。 二人は、ぎゅっと手を握り合っていた 。 だが、

「お戻りいただく時間でス、アルフォン ス王子」 ザっと現れた、黒づくめの者二人が、 アルフォンスの近くで膝をついた。

「兄さん!」 アルフォンスが男二人に捉えられた時 、エドワードはすんなりと手を離した。 「兄さん!」 「ごめんな、アル。もう――会えなくな る」 「どういうこと!?」

「それは、王位継承権を弟王子に渡すと いう宣言で、よろしいカ。同時に、王位 剥奪となりまス、エドワード王子」 もう一人、黒づくめの男が現れて、エ ドワードは、頷いた。 「はい。それでかまいません」 「ヴァンパイアが人間界で、血も飲まず 、生きていけるわけがない!一年に一度 でも、僕のを吸血しているから…!」 「人間のを飲まないというわけじゃない よ、アル」 「違う、兄さんは、絶対に呑まない!飲 んだら、相手が吸血鬼になってしまうか ら!そんなこと、するような人じゃない !」 「っ…。ダメだ、アル。これで、サヨナ ラだ。もう…永遠に」 そんなすべてを自分だけで終わらせる やり方に、アルフォンスは憤りを感じた 。自分を拘束した二名の従者をなぎ倒し 、後から現れた男を、同じように投げ飛 ばす。
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