書庫

□ぬくもり
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 ふと夜中に目が覚めると、自分しかいない筈の宮に人の気配がした。まあ、よく知っている人物というのと

面倒という理由で、そのまま好きなようにさせておく。

 2日前から姿を見ていないので、おそらく今は任務帰り。

 それが何で人様の宮で風呂に入っているのか。いつもの事なので考えるだけ無駄だ。あ、ボディソープ切れ

かかってたんだっけ…明日は買い出しに出かけよう等と、別の事を考えていると寝室のドアが静かに開いた。



「…起きているんだろ、デスマスク」

 脱衣所のいつもの場所に置いてあったタオルで髪を拭きながら、シュラはベッドに向けて声を発する。確かに

寝てはいないので、体を反転させ、取り合えずシュラの姿を目視。



うん、いつもと変わらないシュラがいる。
 
人のシャツ勝手に着るなよ。洗濯物が増えるだろーが。

 つーか、自分の宮に帰って風呂入ればいいと思うんだけど?

 そう思うの俺だけ??



「帰る気力が無いだけだ…そんな事をテレパスで伝えてくるな、直接言えばいいだろう」

「メンドーだったから」

 睨みつけてくるシュラを大して気にもせず、体を横にずらしてベッドのスペースを空け、腕を持ち上げ上掛け

を少し捲り上げる。勝手に風呂に入り、勝手に人の寝室にまで来たのならいつものパターンだろう。シュラも自

然と空けられたスペースに体を横たえて、デスマスクの腕の中に納まった。

「髪、まだ湿っぽいんですけど?」

「気にするな」

「風邪ひくぞ」

「そんな柔な鍛え方はしていない」

「へいへい…そーですか」

 いつの間にか背中に回されているシュラの腕を感じつつ、目の前にある湿り気をおびた髪に触れ、何度か指で曳

き梳いていく。そのまま頭を撫でてやれば、気持ちがいいのかシュラの小宇宙が普段より穏やかなものへと変わっ

ていった。

「デス…」

「んー?」

「俺の留守中、ちゃんと食事は摂っていたんだろうか?」

「何かは…食べていた?」

 急な問い掛けはあまりにも直球過ぎて、シュラの頭を撫でていた手がピタリと止まる。

「何故疑問形なんだ…?」

 そして何かは食べていたも答えになっていないと、シュラは内心思いながらデスマスクの次の言葉を待った。

「昨日はディーテがデリバってくれたから、食べたな」

「今日は?

「……さあ?」

 昨日の事は覚えていて、何故今日食べたものが判らないんだ。デスマスクの腕の中、質問に首を傾げている姿を見

上げ、溜息を零しながら胸に額を押し付けた。
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