GS美神×ネギま!
□南国リゾートは危険な香り
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「うわー、すっごーい。 こんなきれいなホテルを持ってるなんて、さっすがいいんちょ」
「明日菜の意見に同感だな。 なんかものすごい格差を見せ付けられた気分だぜ」
「ほら、明日菜さんも長谷川さんも馬鹿なことをおっしゃってないで早くチェックインを済ませますわよ」
「「はーい」」
楽しげにホテルへと入って行く三人の後姿を、横島は恨めしげに見送る。
ドアマンがあけたドアの向こうへと姿が消える直前、あやかが一瞬だけ振り返り横島にこう告げた。
「横島先生も早くいらっしゃらないと、本当においていきますわよ?」
それだけ言うとあやかはクルリときびすを返し、今度こそドアの向こうへと消えていった。
「のわーっ! 海外で、しかも何語かもわからん島で一人ぼっちにせんといてーーーーーーッ!!」
横島は慌てて後を追いかけようとするが、さすがに四人分の荷物は重かった。
「ぐぬぬっ!!」
なんとか前へは進んでいるが、他の三人の姿はとっくに見えなくなっている。
すると慌てている横島へと声をかけてくる人物がいた。
「Hey, Mr?」
「ノー、ノー、ジャパニーズ オア イングリッシュ プリーズ」
突然見ず知らずの外国人に声をかけられテンパってしまった横島は、英語で話しかけられたにもかかわらずおかしな和製英語でそう答える。
「オー、OKネ。 ワタシ、ニホンゴ ワカリマース」
「ま、マジで?」
「イエース。 『ホンキ』 ト カイテ 『マジ』 ト ヨムノデスネー」
「た、助かったー」
なんと横島に声をかけてきた人物は日本語がわかるという。
これには横島も安堵のため息をつく。
「あー。 ところで、どちら様でせう?」
「ミー? オウ、ソーリー。 ワタシ 『ポーター』 デース。 カバン ハコブノガ オシゴト デス。
アナタ カバン タクサンモッテルネ。 ワタシ ハコビマース」
そう言うと、すばやい動作でカートにカバンを乗せ始める。
突然のことだったためそれをぼんやりと眺めていた横島であったが、思い出したかのようにホテルのドアへと走っていった。
「おっそーい」
「本当だぜ。 なにやってたんだよ、兄さん」
「いやー、ははっ。 すまんすまん」
明日菜と千雨の非難の声に、横島は頭をかきながらそう言って片手を挙げる。
だがそのとき、ロビーの隅のほうから騒がしい声が聞こえてきた。
「僕はわざわざここまでダイビングをしに来たんだぞ。 それを当分の間自粛しろとは、いったいどういうつもりだね?」
「で、ですので先ほどから申し上げていますように、この近辺でダイバーたちが襲われる事件が多発しているのです。
したがって、安全が確認されるまではお客様にはダイビングは自粛していただいている次第でございまして……」
「君では話にならないな。 ここの責任者を呼んでくれたまえ」
そんな声がここまで聞こえてきた。
横島たちはその騒ぎの方に顔を向ける。
「げっ、あいつは!!」
その顔を見た横島が思わずそう呟いた。
どうやら知っている人物のようだ。
「ん? 兄さん、あの迷惑な奴を知っているのか? ったく、こんなところで騒ぎやがって」
そんな千雨の問いに横島が答えるよりも早くあやかがスッと前へ出た。。
「金成木財閥の御曹司ですわね」
「さすがに雪広さんは知っていたか」
「ええ。 私としては、横島先生が彼を知っていることの方が驚きですが……」
「まあな。 以前知り合いの付き添いで行ったパーティーでちょっとな」
「そうでしたか。 どうやら責任者をご指名のようですから、ちょっと行ってきますわ」
横島とそんな会話を交わし、あやかは騒ぎの元へと歩んで行った。
「ごきげんよう、金成木様」
「ん? げっ、雪広家のご令嬢ッ!? な、なぜこんなところに?」
あやかがそう優雅に声をかける。
それに対して、相手の反応はあまりにも礼に失する。
だがあやかはそれを気にすることなく話しかける。
「なぜと言われましても、ここは雪広家の所有するホテルの一つですから。
それと、先ほどうちの従業員が説明させていただきました事件の調査に来ておりますの」
あやかのその言葉に、金成木の顔色がとたんに青ざめる。
だがそんなことお構いなしとばかりにあやかのターンは続く。
「ところで、うちの従業員の説明に不備でもありましたでしょうか?」
「い、いや、大丈夫です。 そ、そうですね、そういう事情ならば仕方がありません。 ではッ」
あやかの問いかけに金成木は早口でそう答え、そそくさとその場をあとにする。
そんな彼の背後へあやかが言葉を投げかけた。
「ああ、お父様の三郎様にもよろしくお伝えくださいまし」
どうやら同じ財閥でも金成木家は雪広家には頭が上がらないらしい。
「ふぅ」
「お疲れさん」
横島たちの元へと戻るなりそう一息ついたあやかに横島が労いの言葉をかけた。
周りで成り行きを見守っていた観光客たちもホッとしたような表情でそれぞれの目的のために行動を再開したようだ。
だがそれは、これから起こることのほんの序章に過ぎないのであった。