GS美神×ネギま!
□過去の清算after IF
2ページ/49ページ
そしてさらには以前の美神なら決して口にしなかったことも口にするようになった。
横島の母親が卒業まで学業に専念させるため横島のバイトを辞めさせようとした時が良い例だ。
「俺、絶対辞めませんからねっ!! なーに、いざとなったら……」
横島は母親についてやってきた村枝商事のロビーから美神へと電話をし、母親を説得中であることを告げる。
『ダメよ!』
だが美神から帰ってきた返事は横島の望むものではなかった。
『お母様を裏切ったりしたら許さないからね!』
『み、美神さんっ!?』
電話口の向こうではおキヌの驚きの声が聞こえる。
その言葉に横島はショックを隠せなかった。
震える声で横島は美神に尋ねる。
「じゃあ―――――、美神さんは……、その、俺が……、いつもそばにいなくて……、平気です……、か?」
その問いに、美神は思わず電話口で声を荒げる。
『…………じゃない……』
「え?」
『平気なわけないじゃないっ!! いままでずっとそばにいて――――、いっぱい一緒に仕事をして――――、それが当たり前でッ!!』
「……ならっ!!」
『―――あんた、私のママが亡くなったの知ってるでしょ!? お母さんの言うとおりにしなさい……』
横島の耳に美神の悲痛な声が響く。
あの日彼女の涙を見てしまった横島は、その言葉に言い返すことができない。
だがそんな美神の思いに触れ、横島は美神のことを単なる仕事の上司としてではなく一人の女性としてはっきりと意識するようになった。
横島と美神二人共があの蜘蛛の妖怪による失踪事件の際タマモに言われたことを意識し少しずつではあるが実行に移すことにより、ふたりの距離は確実に近づいていた。
だがそんな二人の前にひとりの女性が現れた。
彼女の名は『ルシオラ』、魔界トップクラスの実力をもつ超上級魔族『アシュタロス』によって生み出された三姉妹のうちのひとりである。
逆天号にて横島に命を救われた際の会話をきっかけとして横島に恋心を抱いた彼女は、『恋をしたら、ためらったりしない』と積極的に横島へとアプローチをかけていく。
自分はモテないと思いこんでいる横島は、そんな彼女の行動に押されっぱなしであった。
その日美神には大口の依頼が入っていたが、横島の文珠のお陰もあり予定よりも短時間で除霊が完了した。
少しずつ横島に心を開きつつあった美神は、ねぎらいを兼ねて横島を食事に誘うつもりでいた。
事務所に戻り書類を整理し終わった美神は、ソファーに座りコーヒーを啜っていた横島へと声をかける。
「ねえ横島クン、予定よりも早く終わって時間もあることだし食『ヨコシマーッ!!』……」
だがそんな美神の声は、横島の名を呼びながら元気よくドアを開けて入ってきた人物の声に遮られ最後まで紡がれることはなかった。
「ねえ、今日はもうお仕事終わったのよね? 私、行きたいところがあるの。 一緒に行きましょ?」
そう可愛らしくお願いをするのはルシオラだ。
「え、ええっと……」
横島はそんな彼女の行動に戸惑い、チラリと美神の方を見やった。
だが横島は何かに引っ張られ、再びルシオラへと視線を戻す。
「私まだこの街のことよく知らないし、どーしてもヨコシマと行ってみたいところがあるの。 ダメ?」
「ダメってことはない……けど……」
「ホント? やったぁ!! それじゃあ行きましょ!!」
ルシオラが横島の腕に自分の腕を絡ませ、上目遣いにお願いをする。
その姿に女性に対して免疫のない横島が拒否できるはずもなく、だが美神の目の前ということもあり曖昧な返事となってしまう。
それを肯定と受け取ったルシオラは横島の手を引きドアへと向かう。
横島はドアから出る間際、ほんの一瞬部屋の中に目を向けた。
そしてそんな横島の目に映ったのは、悲しそうな瞳をしてその場に立ち尽くす美神の姿であった。