GS美神×ネギま!
□過去の清算
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病院へと向かう車内で、横島は無言で先ほどの電話の内容を思い返していた。
電話の相手が話した内容が未だに信じられなかったからだ。
隣に座るタマモもどこか信じられないといった表情をしている。
やがて『白井総合病院』の看板が見えてきた。
『キィッ』と音を立てて車を止め、横島は足早に病院の中へと入っていく。
タマモも慌ててその後を追った。
「………………」
電話で告げられた病室の前で、ドアに手をかけたまま横島が無言で佇む。
訝しげにタマモが横島の顔を覗き込むと、そこには様々な表情が見て取れた。
不安、悲しみ、怒り、戸惑い、他にも多くの感情が彼の中に渦巻いているのだろう。
「さ、行きましょ」
タマモが横島の手に自分の手を乗せ、そっとドアを開く。
『こら横島、今まで何してたーーーーーッ!!』
そう言いながら神通棍を振りかぶる姿はそこにはなく、ただ静かにベッドに横たわっている女性の姿が会った。
彼女の代名詞でもある亜麻色の髪はくすみ、意思の篭った瞳は力なく閉じられている。
生命力溢れていた顔色は、いまや血の気を失い土気色といっていいほどである。
シミ一つなく白くて張りの合った肌は痩せこけ、その腕は少しの衝撃でも折れてしまいそうなほど細い。
嘗て夢中で追いかけたあの頃の彼女の姿はそこには無く。
ゆえに横島はその女性が眠るベッドの脇に控えていた医者に向かって叫んだ。
「くぉらヤブ医者、B90,W58,H90のナイスバディはどうしたーーーーーーーーッ!!」
それを聞いた瞬間、タマモの額に特大の井桁が浮かぶ。
「アンタはいっぺんその頭ん中、院長に診てもらいなさいッ!!」
タマモはそう言うと、目の前でアホな事を叫び今にも医者に向かって飛び掛らんとしている横島に向けて狐火を投げつけた。
「ウチのバカが迷惑かけてすまないわね」
肩で息をしつつもタマモは何事も無かったかのように、医師とは違うもう一人のこの場にいる人物に声をかけた。
「い、いやこっちも非常識な時間に呼び出したわけだし。 何せ横島くんだからね、これ位は慣れているさ」
「そう言って貰えると助かるわ」
タマモの言葉にその人物はそう答えた。
相手のその言葉にタマモは感謝の意を返す。
そうこうしているうちに真っ黒な墨のようになっていた横島が復活したようでタマモと話をしている人物へと声をかけてきた。
「おい西条、これはどういうことだ?」
横島の問いに西条が状況の説明を始める。
彼の説明によると、どうやら昔の除霊時に受けた傷から遅効性の妖毒が入り込み今頃になって彼女は中毒症を発症したらしい。
そして西条の話を聞いている最中、横島は不思議な既視感を覚えた。
「(……年……!? ……年後……未来……ら……たの!?)」
不意に横島の脳裏に聞き覚えのある声が響いた気がした。
「(ん? なんだ、いまの感覚……)」
横島は先程感じた何かを確かめようと集中力を高める。
「(とぎ……ま……て、急所…………撃をーーーーーーーーー!!)」
すると再び脳裏に嘗ての上司の声が響く。
「(まただ。 もしかして俺はこの事件を知っているのか?)」
もしかしたら大切な何かを忘れてしまったのかもしれない。
そう感じた横島は必死に過去の記憶を呼び起こそうとしていた。