ネギま!
□これは『ネギま!』ですか?
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「父さま、今日はアキくんとせっちゃんと川へ遊びに行ってきてもえぇ?」
「いいですが気を付けるのですよ? 千秋君、刹那君と木乃香を頼みましたよ?」
「はーい。 よーし木乃香、刹那、行こうぜー」
「はいな〜」
「うん、いこ」
その日は朝から快晴で気温も高く、川遊びをするには最適な陽気であった。
千秋たち三人は、木乃香の父『詠春』に許可を貰い川へ遊びに行く。
暫くは3人で並んで石投げをしたり、浅いところで水を掛け合ったりと何事もなく時間が過ぎて行った。
だが、世の中予期せぬ事故は突然起こるもの。
『パシャッ』という水音が聞こえたので千秋と刹那がそちらを見ると、木乃香が足を滑らせて深みにはまりそのまま流されてしまった。
「木乃香っ!!」
「このちゃん!!!!」
千秋は慌てて川へ飛び込んだ。
だが予想以上に川の流れが速く、しかも着衣のまま水に入ったせいで泳ぎもままならない。
なんとか千秋は木乃香を捕まえたが、このままじゃ一緒に流されちまうと感じ刹那に向かって叫んだ。
「……刹那っ、ゲホッ、そこにある木刀を投げて!!」
どうしたらいいかとっさに考えた千秋は、遊びに行くときも常に持ち歩いている竹刀を刹那に投げて寄こさせる。
飛んできた竹刀をなんとか片手で掴み、うまいこと川底に並んでいた大きな岩と岩の間にに竹刀を引っ掛けることが出来た。
とりあえずこれ以上流されることはなくなったが、いつまでも片手で二人分の体重を支えることなんて出来るはずもない。
しかもそれなりの深さがあるから、なんとか二人とも顔が水面に出ている状態だ。
「刹那、ゲホッ誰でも、いいから、早く大人たちに、伝えてっ!!」
このままでは持ちそうにないと感じた千秋は、刹那へ急いで大人たちに伝えてくれるよう頼んだ。
「あ、あかんて、呼びに行ってる間に千秋もこのちゃんもまた流されてまう……」
「いいから早くっ!! 誰か来きて、くれるまで耐えて……、みせ……るから……」
そう千秋は強がって見せたものの、木乃香を抱えている腕が痺れてきており限界も近づいていた。
そろそろ拙いと千秋が焦りを見せ始めたその時、不意に千秋の右腕から木乃香の感覚が消えた。
腕が痺れて放してしまったのかと、千秋は慌てて後ろを振り返るが木乃香が見当たらない。
「せ、刹那、木乃香がっ!!!」
いそいで刹那に確認しようと川岸を見ると、刹那の姿も見当たらない。
「刹那、どこっ??」
なんとか首を振って前後左右を確認しても見つからない。
「刹那っ!! 木乃香ーーーーーーっ!!!!」
あらん限りの大声で叫ぶ千秋の顔に、フッと影が差す。
思わず彼が顔を上げると、そこには木乃香を抱えた白い翼の天使が居た。
「せ、刹那!?」
「……こ、このちゃんは大丈夫。 待っててな、今千秋も助けるから……」
木乃香を無事助け出したというのに、刹那の顔にはなぜか悲しみが浮かんでいた。
普段のこのちゃんLOVEな姿はそこには無い。
やがて千秋も抱えられ、なんとか無事に川岸へとたどり着いた。
木乃香は少し水を飲んだようだが、気を失っているだけで命に別状は無かった。
だか相変わらず刹那の表情は硬いままだ。
それよりも、千秋にはどうしても聞きたいことがあった。
「なぁ刹那、さっきの羽は……」
千秋が話しかけた瞬間、刹那は真っ青になりカタカタと震え始める。
そして、目に涙を溜めながら千秋に向かって叫んだ。
「千秋お願いやっ、このちゃんにはこのこと言わんといて!! ウチ、千秋やこのちゃんと離れたくないんよっ!!!」
あまりにも必死に懇願する刹那の勢いに押さる千秋。
「あ、ああ、それはかまわんけど…… でもなんで隠すの?
逆に格好いいと思うけどなぁ。 木乃香だったらきっと『キレイやな〜』とか言うよ、間違いなく』
「そ、それでもアカンのや、一族の掟が……」
刹那は木乃香に背中の翼のことを知られてしまうのを恐れていたので、これ以上あれこれ聞かれたくは無かった。
刹那は『掟だから』といえば千秋もそれ以上は聞いてこないだろうと思いそう言ったのだが、千秋からの質問は刹那の思考の斜め上だった。
「なぁ刹那、『一族』てなに?」
『掟』ではなくまったく違うところに食いつかれた刹那は大いに慌ててしまう。
「え、えと、一族言うんは、まず『長』がおって『偉い人達』がおって、それで……」
という、なんとも曖昧な答えしか出てこない。
千秋はというと、こちらもよく分かっていないのか「ふーん」と一言言うに留まる。
その後刹那は、千秋に対して背中の翼と一族の掟について簡単にだが説明をした。
「……やから、あの姿を見られたらホンマは『グルルルルルルルッ!!』っ!!」
刹那の説明は、突然割り込んできた何かによって遮られた。