GS美神
□茂流田!?須狩!?いいえ上司の須木名です
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「ここは……」
この施設には横島は見覚えがあった。 だがあの時確かに潰したはずなのだ。
横島が思案顔をしていると、横からワルキューレが声をかけてきた。
「そうか、ここは貴様にも関係のある場所だったな。 その通り、嘗て南部リゾートの茂流田と須狩が巻き起こした事件の跡地だ。
どうやら残党が残っていたらしくてな。 あの二人の当時の上司が今回の件に絡んでいるらしいという事までは突き止めたのだが……」
「…………」
重い空気の中、一向は慎重に建物を進んでいく。
途中ゴーレムが襲ってきたり巧妙に隠された罠があったりしたが、小竜姫の超加速や横島の『探』の文珠で危なげなく退けていた。
「なによ、随分あっけないわね……」
タマモがそう呟いたとき、どこからとも無く男の声が聞こえてきた。
「それも仕方が無いのだよ。 先日のそちらの襲撃でこちらの駒はほとんどがやられたしまったのでね。
さて諸君、わざわざここまで足を運んでくれてありがとう。 お陰で外への出口を塞ぐのを気づかれずにすんだよ。
あとはこの施設もろとも爆破するだけなのだが、今回は願ってもないゲストが来ているようだね。 どうだろう、ここはひとつ取引きといかないか?」
どうやら警備の少なさや配置された罠自体が全て計算され事だったようだ。
横島たちはすっかりそれに嵌ってしまい、急いで引き返すにはあまりにも時間がかかりすぎる程深部まで歩を進めてしまっていた。
「ゲストと言うのは俺のことか?」
姿の見えない男の声に横島がこたえる。
「その通りだよ『横島 忠夫』くん。 君の持つ能力は是非とも研究してみたいのだよ、それこそ解剖してでもね。
君さえ残ってくれれば、他の皆は無事に帰すことを約束しよう。 しかもこの施設に居る研究対象も一人を除きすべて解放する。 さあどうするね!?」
男の狙いはやはり横島だった。
横島に向けて出された条件は、横島自身が一人ここに残れば彼以外の全員と研究対象として捕らえられている全ての人や神魔、妖怪を解放するというものだ。
今回の作戦の目的のひとつは、捕らえられている人物の救出である。
自分ひとりが残れば任務はほぼ達成したことになる。
ならば彼の出す答えはひとつしかなかった。
「いいだろう。 ただし、先に全ての人たちを解放しろ」
「ちょ、ちょっと忠夫!?」
「ヨコシマ、何を言っているのっ!?」
「……横島」
「忠夫さん……」
横島の出した答えに、タマモを初めそれぞれが思わず声を上げる。
だがここで彼女達は横島の目が自棄になっているわけでもなく自信に満ち溢れていることと、確か施設に入るまでは一緒に行動していた人物がこの場にいないことに気が付いた。
「わかったわ、忠夫。 ただ、気をつけて……」
みんなを代表してタマモが横島に声をかけた。
「さあ、俺はここに残るから早く囚われている人たちを解放しろ」
「くくくっ、いいだろう。 『魔神殺し』『文珠使い』というサンプルが手に入ることを考えればお安い御用だ」
男がそう答えた瞬間目の前に並ぶ部屋のいたるところから何かのロックが外れる音が聞こえ、研究対象として捉えられていた者たちが部屋から出てきた。
小竜姫をはじめワルキューレたちは出てきた者たちを保護し、出口へと誘導を始める。
「忠夫さん、私達は一旦外に出ますが決して無理はしないでください。 それと、私達神族の保護対象者はおそらく残された一人だと思います。 できれば保護をお願いします」
最後に小竜姫はそう横島へと言葉をかけ、出口へ向かって撤退していった。