GS美神
□ちうちゃんの秘密!?
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久しぶりに横島とゆっくり色んな話が出来た千雨は寮の部屋へ帰った後も上機嫌であった。
早速PCを立ち上げ、HPの更新作業に取り掛かる。
【ちう:やほ〜、みんな元気ぃ〜? ちうはねぇ、今日とーってもいいことがあったんだー♪】
するとすぐに見慣れたHNでの書き込みがいくつかあったが、初めてみるHNも存在した。
【Nine Tail:ちうちゃんはじめまして〜。 どんな良いことがあったのか教えて欲しいな〜。】
【蛍子:はじめまして〜。 私も聞きた〜い。】
【Vampire Princess:…………】
「はいはい、Nine Tailさん、蛍子さん、はじめまして。 てかこのVampire Princessってのはだれだ。 人のHPに来てんのに三点リーダーで無言とか意味わかんねー。
【ちう:Nine Tailさん、蛍子さん、はじめまして〜。 Vampire Prinncessさん、何か一言書いてくれるとちうはうれしいな〜】と」
千雨が部屋でそう呟いている頃、横島家では女性陣が大騒ぎしていた。
それは千雨の平穏が崩れた瞬間でもある。
「ねぇタマモちゃん、エヴァちゃんもちょっとこれ見て!?」
「ん〜、なぁにルシオラ!?」
「なんだ、騒々しい」
「これよこれ。 ちょっと暇だったから最近話題のネットアイドルのHP見てみたんだけど……」
「あら!? これって……」
「む!? この間の小生意気なメガネのガキじゃないか!?」
「やっぱりそうよね!?」
そこへ横島がやって来た。
「ん!? 三人揃って何見てんだ?」
「ヨコシマは見ちゃダメ!!」
「忠夫はあっち行ってなさい」
「無粋なまねをするな、バカもの」
「うう、そんなこと言わんでもええやないかーーーーーーーッ!! おがーーーーーーーーーーーーーん!!」
「……言い過ぎたかしら!?」
「あれくらいでちょうどいいのよ」
「ふん、私達を放って出かけた罰だ」
仲間はずれにされた横島は泣きながらどこかへと走っていったが、原因は今日勝手に千雨と出かけたことに対する嫉妬だった様だ。
横島が出かける前にちゃんと言わなかったのがいけないのだ。
「えーーっと、なになに!? 【ちう:やほ〜、みんな元気ぃ〜? ちうはねぇ、今日とーってもいいことがあったんだー♪】だって。
千雨ちゃんよっぽど嬉しかったのね、ふふっ」
「せっかくだから書き込みしちゃいましょ。 HNは……これでいっか。 【Nine Tail:ちうちゃん始めまして〜。 どんな良いことがあったのか教えて欲しいな〜。】っと」
「じゃあ私も。 【蛍子:始めまして〜。 私も聞きた〜い。】」
「……【Vampire Princess:…………】」
「ちょっとエヴァちゃん、なんで書き込みまで無言なのよ!?」
「む!? 私の勝手だ」
「ははーん、さては始めてあったときに目の前で千雨ちゃんがヨコシマに抱きついたこと、まだ根に持ってる!?」
「んな!? そそそ、そんなことあるかっ!!」
「はいはい、いいかげんそれくらい許してあげなさいよまったく。 昨日の夜も独り占めしてたくせに」
「う、うるしゃいうるしゃいうるしゃーーーーーいっ!!」
「「……相変わらずテンパった姿は可愛いわね」」
「コホン、あ、ほら、千雨ちゃんの書き込みよ。 【ちう:Nine Tailさん、蛍子さん、はじめまして〜。 Vampire Prinncessさん、何か一言書いてくれるとちうはうれしいな〜】だって。
ほら、千雨ちゃん気にしてるから何か書いてあげたら?」
わざとらしく咳払いをして、ルシオラが話しを元に戻し、エヴァに何か一言書くように促す。
「ふん、仕方がないな。 【Vampire Prinncess:デートでもしてたのか?】と」
「ちょっとエヴァ、それじゃあ喧嘩売ってるようにしかみえないわよ!? 顔が見えない分、もっと書き方に気をつけないとダメなんだから」
「ん!? そんなものか? じゃあ【Vampire Prinncess:デートでもしてたの?】ならどうだ。 ったく、書いてて背中がくすぐったいわ」
「そうそう、そうやって書けばいいのよ。 やればできるじゃない」
「バカにしているのか、タマモ!?」
「ふふっ」
「笑うなルシオラッ!!」
「お、今度はちゃんと書き込みがあるな。 なになに!? 【Vampire Prinncess:デートでもしてたの?】ブーーーーーッ!!
デ、デートなんかじゃねえよっ!! 何言ってんだ、ったく。 いや、まて。 二人で出かけてそれから…… って、まるでデートじゃねえか!!
てか、このHPのファンは大抵男だぞ、そんなこと言えるかよ。
【ちう:そ、そんなんじゃよ〜。 今日はねぇ、iP○d miniを買ったの〜♪ これがその写真だよ〜】と」
本当は横島と一緒に出かけたことがまるでデートのようだったと意識し暫く一人で悶絶していた千雨であったが、落ち着いた後自身のHPの人気に影響が出そうな話題をやんわりと否定する。
こちらが書き込めば三人からすぐ新たな書き込みがあり、まるでチャットをしているようだ。
「きたきた。 【ちう:そ、そんなんじゃよ〜。 今日はねぇ、iP○d miniを買ったの〜♪ これがその写真だよ〜】ですって。
それよりも千雨ちゃんの衣装すごく可愛いわね、そう思わない!? 【蛍子:そうなんだ〜。 ところでちうちゃんの衣装すごく可愛い♪】と」」
「へぇ、千雨ちゃんこんな趣味があったんだ。 それにしても似合ってるわね。 【Nine Tail:ホント、すっごく似合ってる】」
「ふむ、これは手作りか!? なかなかやるな。 服については気が合いそうだ。 【Vampire Princess:手作りかしら? 仕立てがすごく上手】」
「お、きたきた。 【蛍子:そうなんだ〜。 ところでちうちゃんの衣装すごく可愛い♪】 【Nine Tail:ホント、すっごく似合ってる】 【Vampire Princess:手作りかしら? 仕立てがすごく上手】か。
嬉しい事言ってくれるじゃねえか。 でもなんだ、このタイミングの良さは!? まるで一緒にいるみ…た……い…………
ち、ちょっとまて私、落ち着け。 そう考えたらこのHN、嫌な予感しかしねえがまずは『Nine Tail』からだ。 Nineは勿論数字の9、Tailは尻尾…… 九本の尻尾ってまんまあの人じゃねえかよ。
ま、まさかこの蛍子って…… こういうときこのGo○gleの翻訳機能は助かるな。 『蛍』とまずは英語、うん違うな。 次、イタリア語は『Lucciola』ってまさかのルシオラ姉さん!?
んでVampire Princessはそのまま吸血鬼の姫さんだよな。 まさかあの金髪の口の悪い生き物が吸血鬼!? ははっ、もういやだ……」
力なくその場の崩れ落ちた千雨であったが、最後の望みとばかりに今日の昼間聞いた横島の携帯へと電話をかけた。
「あ、もしもし兄さん!? ごめん、今ちょっといいか? あのさ、姉さんたちって今なにしてる?」
一縷の望みをかけたその問い。
出来れば「お風呂入ってる」とか「洗い物してる」とかであって欲しい。
しかしその希望は横島の答えによってぶち壊された。
「ん、どうした千雨ちゃん!? ルシオラたちならさっき三人集まってPCの前で何かやってたぞ?」
「ば、バレたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?」
静かなはずの六女の女子寮に、千雨の絶叫が響き渡った。
せめてもの救いは、兄と慕うこの男にバレていない事だろうか。
だがあまりのショックに千雨の今夜の記憶はここでプツッと途切れた。
そして翌朝、登校した千雨は教室の黒板に張ってあった六女スポーツをみて再び絶叫するのであった。
『スクーーープ!! クールビューティに恋人発覚!?』
「あ、朝倉ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」