GS美神
□これは『GS』ですか?
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第一話 『出てきてみれば……』
「と、ところでお姉さまはどちら様でせう?」
「(どうやらこいつは私の知る横島ではないようだな……)ふむ、少し貴様に聞きたいことがある。
立ち話もなんだから、あそこの喫茶店にでも入るか」
「はいっ! どこまでも着いて行きます、お姉さまっ!!」
今はまだ分からないことだらけのエヴァは、少しでも情報を得るため詳しく話を聞くために横島を喫茶店へと誘う。
『トンッ』
「あ、すいません」
喫茶店へと向かう道中、横島は何かの募集の貼紙を貼り付けている亜麻色の髪の女性とぶつかるが今は金髪美女を追うことのほうが重要であった。
「待って下さい、お姉さま〜」
「さっさと来い、馬鹿者」
エヴァは不機嫌そうにそう言うと、さっさと店の中へと入っていった。
「ミルクティーを……」
エヴァはウェイトレスに向かって注文するが、目の前のこの男は注文する気配が無かった。
「あの、お連れ様は……!?」
不思議に思ったウェイトレスが確認を取る。
「あ、僕は水だけでっ!」
「「……はい?」」
「うおーーーーん、どうせワイは貧乏じゃーーーっ!」
「わ、分かったから泣くな、ったく。 一緒にいるこっちが恥ずかしいではないか。
好きなものを頼め、ここは奢ってやる」
「本当だな!? 嘘だったら忠ちゃん泣いちゃうぞっ?」
「いいから頼めっ!!」
「あ、おねーさん、じゃあこのピラフとカレーとサンドウィッチにあとケーキセットで!!」
「ふ、ふ、ふざけるなーーーーーーっ!!!」
結局エヴァはミルクティー、彼はアイスレモンティーを注文することで落ち着いたようだ。
「お待たせいたしましたー」
テーブルに置かれたミルクティーをひと口飲み、そこでエヴァは口を開いた。
「おい小僧、貴様名前は?」
「僕、横島っ!! これはもしかして逆ナンというやつですか、金髪のきれいなお姉さま!? どこまでもお供致します、どうせならベッドまでっ!!」
「ええい、いきなり手を握るな! ばっ、コラ貴様どこを触ってっ!! いい加減にせんか、この馬鹿者がーーーーーーっ!!!」
エヴァは力いっぱいこの少年を殴りつけた。
何故名前を聞こうとしただけでこうなるのか。
自分の知る横島との違いにエヴァは戸惑うばかりであった。
真祖の吸血鬼の全力を持って黙らせ、エヴァは喫茶店に入るまでにこの少年から聞いた話しを整理していく。
どうやらこの横島はまだGSになる前で、今だ普通の高校生らしい。
現在親とはなれて一人暮らしをしており、仕送りの額が少なすぎて非常に厳しい生活を強いられているとか。
バイトでもしない限りいつか餓死してしまいそうな程だとか。
それまでの話を聞いてエヴァはふと考え込む。
これまでこの少年から聞いた話は、つい先日知った愛しい男の過去と全く同じなのだ。
「もしかしてここはアイツの過去そのものなのか!?」
もしそうだとしたら自分はどうするべきか……
考え込んでもすぐに答えは出そうに無く、エヴァは暫く様子を見ることにした。
「いてて…… あ〜、死ぬかと思った」
エヴァが考え事をしているうちに、どうやら少年が復活したようだ。
どうやらやはりこの少年はあの横島の過去らしい。
生命力が聞いていた話と一致する。
「おい貴様、横島といったか?」
「はいっ、その通りでありますお姉さま!!」
「下の名前は?」
「忠夫、横島 忠夫ですっ!」
「そうか…… 私はエヴァンジェリン。 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ」
「おおっ、名前を教えてくれるということはOKってことっすね!? なんなら今すぐベッドの上d『落ち着かんか、馬鹿者が』……、はい」
お互い名前を交換するだけで一体どれだけ時間を浪費するのか……
注文したエヴァのミルクティーはすっかり冷め、横島のアイスティーは氷がなくなっていた。
「今から貴様の家へ行く。 だが決して変な真似はするなよ?
今まで言っていなかったが私は真祖の吸血鬼だ。 貴様など一瞬で殺せることを忘れるな」
「へ、真祖!? 吸血鬼!? そんなことより一生ついていきますっ、キレーなお姉さま!!」
この世界に知り合いなどいないエヴァは、突然横島の家に行くなどと言い出した。
当然横島は邪な期待を胸にエヴァを自分のボロアパートへと案内する。
だが部屋についても横島が期待したようなことは一切無かった。
いや、一点だけ喜んだことがあった。
「今日から暫くの間この部屋で世話になる。 なにせこの国に着いたばかりで行く当てが無かったのだよ」
「ままままま、まさかそれは、どどどど、同せ『違うわ、馬鹿者』……」
何かを勘違いしている横島少年の頭を軽く叩く。
「部屋の隅にこれを置かせてくれ」
そういいながらエヴァはどこに持っていたのかが不思議に思われるボトルシップのようなドーム状の物を取り出した。
『Evangeline's Resort』と書かれたそれは、中にお城のようなものが見えるミニチュアハウスのようであった。
そう、ダイオラマ魔法球である。
「私は基本的にこの中で生活をする。 部屋の一部を借りるのだ、その礼として食事くらいは作ってやっても良いぞ?
部屋は違うが私と同居しているようなものだ、貴様にとってもいいことがあるかもしれんなぁ…… くくっ、さぁどうする?」
そんなことを言われては、返ってくる答えは一つしかなかった。
「ふぉおーーーーーーーーーっ!!」
奇声を発する横島。
目も血走っている。
「そうか、許可してくれるのだな?」
「コクコク」
もはや横島は興奮しすぎて頷くことしか出来なかった。
「そうか、感謝する。 ではな」
そう言ってエヴァは魔法球の中へと消えていった。
「なにーーーーーーーっ!! 納得行かーーーーーーーん!!!」
後には横島の絶叫だけが残ったそうな。
こうしてエヴァと横島少年の不思議な同居(?)生活が始まったのであった。