GS美神

□横島くんの『光源氏計画』!?
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それからというもの少女は毎日のように横島たちの店に顔を出すようになり、小学校へ入学してからもそれは続いていた。



時にはルシオラが宿題の手伝いをしたり、横島がいろいろな話しをして笑わせたり。

タマモが新作の創作お揚げ料理を試食させたり。

またある時は、少女と一緒に来た母親にお礼を言われた横島がいつものように飛び掛かったり。

飛び掛かった横島をタマモがこんがり焼いて母娘がびっくりしたり。

母親をナンパする横島を見て拗ねてしまった少女を慰めるためにある約束をさせられたり……



三人にとっても少女にとっても、それは穏やか(!?)で幸せな時間であった。

しかし、そんな幸せな時間は長続きしなかった。



その日も少女は学校からの帰りにルシ横タマの店に寄り道をしていた。



「あ、ちーちゃんお帰りー。 今日はお揚げ煎餅造ったの、食べてみて♪」



いつからかタマモたちは少女のことを「ちーちゃん」と呼ぶようになっていた。



「ただいま……」


「元気ないわね、どうかしたの?」



なんだかちょっぴり沈んだ感じがする。

タマモも気になったので何かあったのか聞いてみた。



「あのね、きょうがっこうのおともだちとけんかしちゃったの……」


「そうなんだ。 でも珍しいわね、ちーちゃんが喧嘩なんて」



元気のない彼女を気づかい、なるべく明るく声をかけるタマモ。



しかし彼女の口から漏れた呟きを聞き、驚きと焦りを感じた。

顔に出なかった自分を褒めてやりたいくらいだ。



「ともだちがね、タマモおねえちゃんたちのことを『おじさん』『おばさん』ていうんだよ。

あたしが『おにいちゃん』『おねえちゃん』てよぶのはおかしいって。 そんなのひどいよ………」


「ねぇちーちゃん、ちーちゃんは私たちがいくつ位に見えるかしら?」


「え〜っとね、にじゅっさいくらい…かな?」



この答えは流石にタマモも予想外だった。

本来なら彼女の友達が言っているように、35歳くらいに見えるように幻術で年齢をごまかしているのだ。



(そうか、この子には幻術が効いてないんだわ! これは忠夫にも知らせないと……)



タマモは瞬時に思考を切り替え、少女を優しく抱きしめながら耳元で囁いた。



「ありがと、ちーちゃん。 私たちの事で本気で怒ってくれて」


「そんなのあたりまえだよ。 だってあたしのおにいちゃんとおねえちゃんなんだもん!」



(本当にありがとう、そしてごめんね……)



千雨の力強い返事を聞き、タマモは彼女を抱きしめながら心の中で謝るのであった。



そしてその日の夜、横島たちは少女の件について話し合っていた。



「間違いないわ、あの子には幻術が効いてない。 九尾の狐たるこの私の幻術が、よ」


「それは間違いないだろうな。 ただ、あの子からは霊能力者特有の霊力とかは見られないんだよな〜」


「たしかにそうね。 私が見たかぎりでも人よりちょっと魔力は高めだけど普通の女の子よ」



タマモとルシオラは勿論のこと、ある事件をきっかけに人間の枠から外れてしまった横島も年を取らない。

そのため彼らは周りの人たちに怪しまれるのを防ぐため、幻術で外見年齢をごまかしていた。

あの少女にはその幻術での外見ではなく、彼らの本当の姿が見えているというのだ。

もしかしたら彼女には何か特別な力があるのかも知れないと考えてしまう。



(一度アイツに見て貰った方がいいかもな)



そして横島は今後どうするかを二人に告げた。



一つは少女のこと。

一度ヒャクメに彼女を診てもらうことにした。

そしてもう一つ。



「この土地に来てもう十数年経つ。そろそろ時期かもしれないな」


「「そうね……」」



横島の呟きに、二人とも同意する。

いくら外見をごまかしているといっても、一箇所にずっと留まることはさすがに出来ない。

この夜、横島たちがこの地を去ることが決まったのであった。



「ただいま〜っ!」



少女は小学校から帰って来るなり早速お隣りさんへ顔を出した。



「おう、おかえりちーちゃん」

「おかえりーなのね〜」



いつものように横島が挨拶を返すが、今日はもう一人見たことない人物が居た。

独特の外見故に最初は驚いたあゆみであったが、以前に聞いたことのある人物の特徴を思い出し納得する。

少女が一人で納得していると、自己紹介と共に右手が差し出された。



「こんにちは、なのね〜」

「あ、こんにちは……」



少女も思わず右手を差し出し握手をする。

すると彼女の手を握ったまま、ヒャクメが横島に向かってとんでもないことを宣った。



「そういえば横島さん、面白いこと聞いたのね。

なんでも、横島さんがリアル光源氏計画の真っ最中だって。 この子がそうなのね〜?」


「だ、誰じゃそんな事吐かした奴はーっ!!」


「タマモちゃんから聞いたのね〜♪」


「タマモーーーーっ!!」



そう叫んだ瞬間、横島は右手に淡い翠色に光るハリセンを出現させ、



『スパーーーン!』



思いっ切りタマモの頭に振り下ろした。



「あいたーっ! なにすんのよーっ」


「やかましいっ! 自業自得じゃ、この性悪狐がーっ!!」



突然目の前で始まったドタバタ劇についていけず、少女は口をポカーンと開けて呆然と立ち尽くしていた。

その間にヒャクメはいまだ繋いだままの右手、主に掌の感覚器官をフル稼動させて彼女の情報を読みとっていく。

情報の分析が終わったのか、ヒャクメはそっと右手を離した。

そして絶妙のタイミングで横島がヒャクメに詰め寄る。



「ヒャクメっ、お前もお前じゃっ! こんな小さな子の前で何を吐かすかーっ!!!

ちょーっと向こうでO・HA・NA・SHIしようやないかっ!」



横島はそう言うと左手でヒャクメの襟首をむんずと掴み、ズルズルと引きずりながら店の奥へ歩き出した。

そしてタマモはというと、右手で襟首を掴まれヒャクメと同じように引きずられていくのであった。



「ごめんね、ちーちゃん」



声をかけられてようやく少女は自分がボーっとしていたことに気がついた。

振り向くとそこには苦笑いをしたルシオラが立っている。



「ああなると長いから、今日はもう帰った方がいいわ。 せっかく来てくれたのにごめんね」



ルシオラにそう促され、「またねーっ」と言い残し彼女は帰って行った。



「さて、ヒャクメさんに結果を聞くとしますか」



誰もいなくなった店内に、ルシオラの呟きが溶けていった。

  
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