GS美神

□勃発!! 吸血姫VS戦乙女!?
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しばらくしてエヴァがようやく落ち着いた頃、横島が口を開く。



「今日は老師と小竜姫様に相談があって来たんですけど、じつは…………」



横島が話したのは、偶然たどり着いたエヴァがいた世界でのこと。

もちろんエヴァが元々は人間で、魔法によって真祖の吸血鬼に変えられてしまったことも話した。

その上で、今後横島たちがやろうとしていることについて相談したのだ。



「なるほどのう。 その世界では精霊の力を借りて魔法を発動させるんじゃな?

確かにこの世界とはそもそも概念が違うようじゃが、横島達が考えているように奴ならなんとかなるかもしれんの。

なにせ魔王が作った監視ウイルスをどうにかしてしまうくらいの奴じゃからのう」


「そうですね、あと心配なのはボケの進み具合だけでしょうか?」


「「「たしかに……」」」



そう、あの男は知識は恐ろしいくらいの物を持っている。

持っているのだがその肝心の知識が新しいことを覚えると、古い知識からところてん方式に抜けていくという特徴を持っているのもまた事実。

その名も『ヨーロッパの魔王こと』、ドクター・カオスその人である。



「だ、大丈夫なのか横島!? 何故か急に不安になってきたぞ?」



こちらの世界に来る前にこの吸血鬼にされた身体が何とかなるかもしれないという可能性を聞き多少の希望を持っていたエヴァも、今の話で急に不安になったらしい。

体内の詳しい状況がわからない横島では、文珠による吸血鬼化の解除が出来なかったのでカオスだけが頼りなのだ。

裏技としてアシュタロスに対して使ったように、『模』の文珠を使うという手もあるのだが……



そんな話をしていると、背後からなにやら足音が聞こえてきた。

かなり慌てて誰かがやってきたようだ。

その足音の主はおもむろに横島の襟首を掴み、部屋の外に連れ出し彼へと詰め寄る。



「ルシオラとタマモは私も認めている。 小竜姫は一応貴様の師であるから、不本意ながらまだ許せる。

だが…… あの少女は誰だっ!! 話の順番的には、次は私のはずだろうが!? 一体どういうことだ横島ーーーっ!!!」


「姉上落ち着いてっ。 話の順番とか、意味わかりませんからー!! 横島さはーーん、あなたも姉上を止めて下さーい!!」


「ちょっ、ま……、ぐぇっ……」



現れたのは魔界正規軍のワルキューレとジークフリートであった。

ちょっとよくわからないことを口走っているが、なにやら小声で怒鳴るという器用なことをやっている。



「あら、ワルキューレではありませんか、どうしました?」



そこへ、先ほど部屋へ入ってきた際の剣幕が気になった小竜姫がひょこっと顔を出した。

そしてワルキューレに締め上げられている横島の現状を見て、大体のことは理解できた。



「さてはワルキューレ、次は自分の番だと思っていたところへえばんじぇりんさんが出てきて焦った訳ですね!?

ふふっ、普段はあんなに自分にも他人にも厳しい貴女がそうしているところを見ると、まるで恋「わーわー、それ以上言うな小竜姫」……。 あら、そうですか?」



ジークを無視していきなりじゃれあう二人に、気付いてもらえなかった本人はすっかり廊下の隅でイジケてしまったようだ。



「呼んだか?」



そこへ自分の名前が聞こえてきたエヴァが顔を出す。



「なんだ貴様ら!? 特にそこに蹲っている奴、ジメジメして鬱陶しいぞ?」



妙神山へ来た当初と比べるとエヴァも大分自分らしさを取り戻しているようで、尊大な態度で問いかける。

これにはあまり機嫌のよくなかったワルキューレがすぐさま喰いついた。



「アッテンショーン!! 私は魔界正規軍魔界第2軍特殊部隊所属、『ワルキューレ大尉』だ! ここ妙神山はお前のような少女が来る場所ではない。

戦士でもないものは即刻立ち去れっ!!」


「……ほう、貴様には私がただの小娘に見えると!?  そうか、では先ほど小竜姫とやらに言われた言葉をお返ししよう。 

人を見かけで判断すると、大怪我するぞ?」


「よろしい、ならば模擬戦だ」



いきなり険悪なムードの二人。

そして、なぜか某少佐のような台詞で模擬戦が始まることとなった。






修行場へと移動し全員が見守る中、まずはエヴァが呪文の詠唱を始める。



「ふはははっ! 私に対してでかい口を叩いたこと、後悔させてやるぞワルキューレとやらっ!!

リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 来たれ氷精、大気に満ちよ。白夜の国の凍土と氷河を……『こおる大地』!!」



「「「「…………あれ?」」」」



なぜかエヴァの魔法が発動しない。



「なっ!? どういうことだ……」



これには流石のエヴァも焦りを見せる。



「くくくっ。 なんだ、威勢がいいのは口だけか? ならばこちらから行かせてもらうぞっ!!」



そう言うなりワルキューレは手に持った銃を撃つ。



「ちぃっ、氷盾(レフレクシオー)!!」



とっさにエヴァは前面に氷の盾を作り出そうとする。

がしかし、やはり魔法は発動しない。

そうしている間に、ワルキューレの放った弾丸がエヴァへと迫る。

だがエヴァはその弾を、無数の蝙蝠に変身する事で避けてみせた。



「ほう、どこかで感じた雰囲気だとは思ったが吸血鬼だったか。 しかもピートのようなダンピールではない、純血種か」


「ああ、私こそが真祖の吸血鬼にして最強の魔法使い『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』だっ!!」



そこでエヴァがない胸を張り腕組みをする。

うん、非常に可愛らしい。



「そうか、お前もブラドーの仲間だったか可哀想に……」


「ぐぬぬぬっ、きさまもその反応か!! 私とそのぼけブラドーとやらをいっしょにするんじゃないっ!!」


「とは言うが、ろくに魔法も扱えんようではないか。 本当は呪文を忘れてしまったのではないのか?」



エヴァが悔しげに何かを言おうとするが、それを横島が止める。



「はいストップ、今日はこれ以上は無しだ。 このままではあまりにもエヴァちゃんが不利だしな」


「よ、横島、何故止める? はっ、貴様まさかロリ『アホかーーっ』……」



止められたのが不服そうなワルキューレが余計なことを口にする前に、横島は『栄光の手 ハリセンver』で黙らせることに成功した。



「ヨコシマ、何かわかったの?」


「ああ、多分だけどな。 エヴァちゃん、エヴァちゃんの世界の魔法はたしか精霊の力を借りて発動するんだったな?」


「そうだな。 呪文は大抵がラテン語だが、その中に精霊を集める言葉が含まれているからな」


「そういうことですか」



ヨコシマの質問とエヴァの答えで、小竜姫はなぜエヴァの魔法が発動しなかったのかがわかったようだ。

タマモも同様にうなずいている。



「そういうことね。 ねぇエヴァちゃん、さっき呪文を詠唱したとき精霊が集まってくる感覚はあったかしら?」



ルシオラも気が付いたようだ。



「むっ!? そういえば……。 なるほど、そういうことか。 

この世界には精霊が居ないもしくはほとんど居ない、そういうことだな?」


「恐らくそういうことじゃろう。 ま、そのあたりもドクター・カオスなら何とかするじゃろうて」



ここまで黙っていた老師がそう告げる。



「というわけでワルキューレ、エヴァちゃんがこの世界でも自分の力が出せるようになるまでちょっと待っててくれよ。

ワルキューレも全力を出せる相手と戦ったほうが楽しいだろう?」


「そういうことなら仕方がないな(よかった、横島が幼女趣味じゃなくて……)」



ワルキューレも納得してくれたようだ。

実際のところ何に対して納得したのかは本人だけの秘密だったりする。



こうして妙神山訪問の際に起こったゴタゴタもひとまずは落ち着き、あとはドクター・カオスの腕次第ということとなった。

だがエヴァ以外の全員は、それが一番心配だったりするのだ。

本人を知らないのはエヴァのみ。 

ああ、知らないとはなんて幸せ哉……

  
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