GS美神
□夢の続きU
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−探しはじめて2時間後−
そんなに簡単に見つかるはずも無く、いい加減疲れが見え始めている。
言い出しっぺの狐っ娘が真っ先に戦力外になっていた。
「こらこらタマモ、言い出しっぺが何してやがる」
ぐでーっとしゃがみ込んでいる狐っ娘に横島の突っ込みが入るが
「お腹すいたー、お揚げ食べた〜い」
こんな答えが返ってきた。
どーにもこの狐っ娘はマイペースのようだ。
そんな2人のやり取りを蛍っ娘は微笑ましくおもいながら眺めていたが、タマモの言う通りお腹がすいたのも確かだ。
ここは一旦休憩をかねて昼食をとるべきだろう。
「ねぇヨコシマ、タマモちゃんの言う通りお昼にしましょう」
ルシオラがそう言いながら横島に近付く。
横島がそれに了承の意を伝えようとルシオラの方を振り向いたその時、「ゴチッ!」と決して軽くない音を立てて後頭部に衝撃を受けた。
「な、なんじゃ??」
横島はキョロキョロと辺りを見回すが、特に何も見つからない。
だが横島に声をかけて近寄る途中だったルシオラが、横島の足元に落ちている何かに気づき拾い上げた。
「「「なんだ(なに)、これ??」」」
【妙神山】
ヒャクメに対して照れ隠しの仏罰を下した後、小竜姫は修業場の外の掃き掃除をしていると、『ジャリッ』という音と共に、背後に人の気配を感じた。
「ずいぶん早かったですね、ヒャクメ!?」
ヒャクメが戻ってきたと思った小竜姫がそう言いながら振り返るが、そこにいたのはヒャクメではなかった。
好戦的な笑みを浮かべた表情。
手には得意な武器なのだろう、銃が握られている。
交差する視線。
「……ここでは被害が大きくなります。 どうしてもやる気ならばついて来なさい」
「クククッ、いいだろう。 案内しろ」
小竜姫がそう言い歩きだすと、小竜姫とやり合えるのが楽しみで仕方がないというような感じで素直に後に続く。
妙神山修業場に張られた結界の中、小竜姫は愛用の神剣を鞘から抜き全身に竜気を纏いながら油断無く構える。
対する相手も小竜姫を警戒してか、動きがない。
ピリピリとした緊張感の中、先に小竜姫が仕掛けた。
「妙神山修業場管理人、小竜姫。 参るっ!!」
【チベット】
「「「なんだ(なに)、これ??」」」
「目玉、かしら?」
「目玉、よね…!?」
「目玉、だな……。 空から降ってきたし、これが探しモノの天眼石か?」
上から順番にルシオラ、タマモ、横島の台詞だ。
昼食をとる為に入ったレストランの窓際の席で、横島たちは先程拾ったモノについて話し合っていた。
「これ、どうみても『天眼石』じゃないわよね……」
「どっかで見たことあるような気がするんだか……」
タマモの呟きを聞きながら、横島はなんとなく見たことがあるソレについていまいち思い出せないモヤモヤを感じていた。
「私もどこかで見たことがある気がするのよね……」
ルシオラも横島同様何処で見たのかを必死に考える。
その時、たまたま窓の外を眺めていたタマモが声を上げた。
「ちょっと二人とも、あそこ見て!」
横島とルシオラはその声につられて窓の外に目を向けた。
「ふぇ〜ん、小竜姫のバカーなのね〜」
なんと3人の視線の先には、見知った顔が涙目になりながら必死に何かを探している。
「「あっ……」」
その姿を見た横島とルシオラが同時にあることに気付き、視線を手元の目玉(!?)に戻す。
「ひょっとしてこれ、いつもあいつの耳にぶら下がってるやつか!?」
どうやら正解にたどり着いたようだ。
「なーんだ、つまんない」
タマモのあまりにもな意見に苦笑いしつつ、ルシオラが真っ当な意見を言う。
「困ってるみたいだし、早く渡してあげた方がいいんじゃない?」
だがその意見はあっさりと却下される。
「いんや、あんの覗き魔駄目神には散々世話になってるからな。
もすこし困らせてやる位がちょうど良いんじゃっ!(小竜姫さまとのことをこの二人にバラしやがってーっ」
この男、彼女に対していろいろと思うところがあるらしい。
が、相変わらず学習しないのが横島テイスト。
今日も思考はダダ漏れだ。
「「ヨコシマ(忠夫)、どうやらもう一度拷m… じゃなかった、話し合いが必要かしら!?」」
『ビクゥッ!!』
二人のとってもキレイな笑顔(ただし目は笑っていない)を見た瞬間に己の負けを悟った横島は、
余程怖かったのか随分慌てたご様子。
「わ、わいが悪かった。 堪忍やーっ!」
勢いよくテーブルに手をつき、頭を下げた。
『ゴンッ!!』という大きな音が辺りに響き渡る。
「ヨコシマ、大丈夫?」
なかなか頭を上げない横島を気遣い、ルシオラが声をかける。
しかしそれでも横島は頭を上げる様子が無い。
タマモもルシオラも、これは流石におかしいと横島の横顔を両側から覗き込む。
((どうしたのかしら、特におかしな所はなさそうなんだけど。額にアレがくっついてる以外は……))
ルシタマの二人がそんな事を考えている間にも、横島の顔色はどんどん青ざめていった。
これはいよいよ尋常じゃないと気付き声をかけようとした瞬間、切羽詰まった表情と焦りを含んだ声で横島が叫んだ。
「小竜姫さまがヤバイっ!!!!!」
あまりの剣幕に一瞬思考がフリーズしかけたルシオラとタマモであったが、すぐさま行動に移る。
「「何があったの、ヨコシマ(忠夫)っ!?」
「話しは後だ。急いで妙神山へ行くっ!!」
横島は二人にそう告げると店を飛び出した。
「ヒャクメ、掴まれっ! 二人もだっ!!!」
ヒャクメが突然かけられた声に驚いてしまったのは仕方が無い。
「えっ、え!? 横島さんなのね? ルシオラさんたちも。 ど、どうしたのねそんなに慌てて。 て、あーっ、私の千里眼ーっ!」
「いまはそれどころじゃないっ! さっさと掴まれ、置いてくぞっっ!!!」
「は、はいなのねっ」
あまりの剣幕にヒャクメはとりあえず訳もわからないまま横島にしがみつく。
みんながしがみついたのを確認した瞬間、横島は「転」「移」の文珠を発動させ一気に妙神山まで飛んだ。
(ヤバイヤバイヤバイ…… 小竜姫さま、今助けに行きますっ!!)
横島は焦る気持ちを抑えることができなかった……
【妙神山】
『ドンッ! ドンッ!』
2発の銃声が響き渡る。
しかし「シッ!!」という吐息と共に振るわれた神剣により先程の銃弾は2発とも切り落とされた。
だかまだ油断は出来ない。
相手の射撃の腕はかなりのものだ。
(くっ、このままでは……)
赤い髪の大学生位の外見の女性は神剣を構えながらも内心は焦りを感じていた。
「くくくっ。 いつまで耐えられるかな、小竜姫。 超加速の使えないお前に勝ち目はないぞ!?」
相手の冷たい声に唇を噛み締めながらも、剣の間合いの外からの正確無比な射撃により徐々に小竜姫は追い詰められていく。
そしてついに『ガキャンッ!』という音と共に小竜姫の唯一の武器である神剣が銃弾により弾き飛ばされた。
「くうぅっ……」
手首に受けた衝撃に苦痛の声を漏らしつつ、地面を転がりながらなんとか追撃の弾丸を避けることに成功する。
「お前はよく戦った。 だがここまでだ……」
勢いよく立ち上がり直ぐさま構えを取る小竜姫であったが、不意に聞こえた声と共に小竜姫の後頭部に銃口が突き付けられた。
「どうやらそのようですね……」
悔しそうにつぶやきながらも、己の負けを認めた小竜姫は竜気を纏っていた身体からその力を抜いた……
「流石ですね、ワルキューレ……」
と言おうとした瞬間、結界を突き破って何者かが小竜姫とワルキューレの間に飛び込んできた。
「大丈夫か、シャオっ!!!」
「え、えっ!? た、忠夫さん?」
その会話が聞こえた瞬間、見事に世界は止まった………
「ガシッ!」
臨戦体制の横島の両肩を、何者かが万力のような力で掴み上げた。
『後ろを振り返ってはいけない』と本能が訴えかけて来る。
『のぉー、ヘルプミー!!』という横島の願いはあっさりと打ち砕かれた。
「……………『シャオ』?」 「……………『忠夫さん』?」
蛍っ娘と狐っ娘の低い呟き声が横島に突き刺さる。
「そういえば忠夫、ウチのお店で売ってるお豆腐が2日に1回の割合で2丁ずつ無くなるんだけど、なにか知らない?」
「(ぎくっ!)イヤダナァたまもサン、ナ、ナニモシリマセンヨ?」
「ねぇヨコシマ、2日に1回の割合でバンダナを巻いた男の人が小竜姫さんに何かを持って来るらしいんだけど心当たりはあるかしら?」
「(ぎくぎくっ!)ダ、ダレガソンナコトヲ……?」
タマモとルシオラの確信を持った質問に、しどろもどろになりながらもなんとか惚けようと逆に質問で返す。
だか二人が指している指先を視線で辿り、とってもいい笑顔で手を振っている人物と目が合った瞬間に己の敗北を認めるしかなかった。
「またお前か、この覗き魔駄目神がーっ!!!」
自分の行動を棚に上げ叫ぶ横島。
前にも言ったが、彼女に対してなんの対策もしなかった自分が悪いんだぞ。