GS美神
□夢の続きT
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「正直すまんかった」
はたして本気で謝っているのか疑わしい台詞だが、ルシタマにとっては何時もの事なので二人ともたいして気にしていないようだ。
「ま、アンタのそれは言っても治らないしね〜」
「ホントね。 こーんな美女が二人も恋人なのに、何が不満なのかしら?」
呆れ顔の二人だが、どこと無く嬉しそうだ。
そしてタマモが先に口を開いた。
「でもホントお疲れ様。 忠夫のアレが決勝点よ」
横島の決死のヘディングはゴールマウスを割っていたのだ。
「そっか、よかった。 ちっとは助っ人らしいことが出来たんだな。 でも最後はちょっとばかし締まらんかったなぁ……」
ハハッと自虐的に横島が笑う。
「そんなこと無いわよ。この怪我だって名誉の負傷じゃない。 それに他の人が気づかなくても、ヨコシマの格好良さは私たちがよく知ってるわ。 ね、タマモちゃん?」
「えぇ」
「二人ともありがとな」
なんだかとっても良い雰囲気の三人。
ここで終わればとっても平和なんだが、トラブルホイホイのこの男がいる限りすんなり終わるはずが無い。
「タダオ〜っ」
横島に助っ人を頼みにきた少女が駆け寄ってくる。
あぁ、なんだかすっごく嬉しそうだ。
間違いなく台風の予感……
「ありがとー、タダオっ。 お陰でホントに助かったわ」
そう言って横島に抱き付いた。
((ちょっと待てーぃ!))
ルシオラとタマモは心の中で盛大に突っ込んだか、ここは恋人の余裕でしばらく様子を見ることに決めた。
少女の話しをよくよく聞いてみると、どうやら彼女の所属しているチーム(男女混合)は勝ち運が無いらしく、連敗街道まっしぐらだったそうだ。
そしていよいよ今回の試合に、チームの存続が掛かっていたらしい。
で、いざ試合当日になったらメンバーが足らない。
苦肉の策として採用されたのが『助っ人横島』だったというわけだ。
そしたらその助っ人が大活躍。
そのお陰で解散の危機が救われたのなら喜ぶのは当然で、ルシオラとタマモとしても今の行為は大目に見れる。
が、しかし…
「ホントにありがと、タダオ。 カッコよかった……(チュッ!)」
「「あーっ!!」」
ほっぺにチューはいただけないっ!
二人は盛大に吠えた。
しかし少女は肝っ玉がでかいのか、それともただ単に外野を無視しているのか、マイペースで話し続けている。
「ねぇタダオ、あなたって日本人よね? じゃあ今回のW杯、日本を応援するね。
あ、そうだ、今度日本に遊びに行くから、その時は案内してくれない? お願い、いーでしょ?」
随分積極的なご様子。 しかも可愛いし……
ルシオラとタマモの警戒警報が盛大に鳴り響く中、タマモは何かに気が付いた。
(なんだか見たことある光景ね。 あの子とタダオの身長差だと……
はっ、あれはまさか前にアタシも使ったことがある、上目使いで瞳うるうる攻撃?
や、やるわねあの子。 思ったより強敵じゃないの……)
いいのかタマモ、そんなこと考えてるうちに肝心の横島は陥落寸前だぞー。
「あぁ、い「ダメーっ!」い!?」
横島が了承してしまう直前、絶妙のタイミングでルシオラがカットした。
「ちょっとヨコシマ、どういうつもりよ。 私たちの目の前で浮気の約束するつもり?」
ルシオラは笑顔だ。しかしまったく目が笑っていない。
なんだか怒鳴られるより迫力がある。
そんな中、最初に出くわしたスプラッタ劇場を思い出したのか、少女は引き攣った顔をして後ずさって行く。
「あ、あははっ、どうやらお邪魔みたいね……
タ、タダオ、今日はホントにありがとっ。 バ、バイバイ」
まさに台風。少女は自分の伝えたい事のみしっかり伝えて、さっさと撤収していった。
後にはさっきまでの甘い雰囲気から一転、カオスなこの状況をどーしたら良いのか全くわからず困り果てたバンダナ男と蛍っ娘と狐っ娘の修羅二人が残された。
「「ヨ〜コ〜シ〜マ〜」」
「ま、まて。 ワイはなんも悪くないはずやっ。 タ、タマモ、なんか呼び方かわってへんか? ルシオラも堪忍や。 このとーりっ……」
そう言って謝ったかと思った瞬間、横島は脱兎の如く逃げ出した。
「「待ちなさい、この人外ホイホイーっ!」」
「あの子は普通の女の子じゃーっ」
なんだか不毛な追いかけっこが始まった。
「「あっ、小竜姫さん。 なんでこんなところに?」」
「なぬっ、小竜姫様!?」
「タマモちゃん、今よっ!」
「まかせてっ」
「ぐぇっ」
「フッフッフッ、忠夫捕まーえたっ!」
「ヒ、ヒキョーやぞっ、騙したなーっ!」
思わず小竜姫の名前を聞いて反応してしまった横島は、敢なく捕まってしまった。
まぁどのみちいつかは捕まっていたのだが…
「さてヨコシマ、ちょーっと聞きたい事があるんだけど?」
「だからっ、あの子の事は心当たりがっ」
「あのね、彼女の事はもういいのよ」
「えーっと、どういうことだ、タマモ?ルシオラも」
「「最近すっごく小竜姫さんと仲がいいんだって? 周りから見てるとまるで恋人同士みたいだそうねぇ…」」
(ギクッ、な、なんで二人が知ってんだ? なるべくこの二人が一緒のときは、今まで通りに接してきたはずなのに…」
「「…………(怒)」」
「も、もしかしてまた…?」
「「えぇ…」」
またしても思考がだだ漏れになってしまった横島、もうおとなしくするしかない。
「え、えーっと、いつ頃から気が付いて…?」
「最近まで全く気づいてなかったわ。 ホント上手くやったわねぇ、忠夫!?」
(まて、気付かれてなかっただと? じゃあ、なんで…)
横島はタマモの言葉を頭の中で反芻するが、答えはルシオラから齎された。
「小竜姫さんの友達が教えてくれたの。見てると痒くなるほどなんですって?」
「あんの覗き魔駄目神かーっ!!」
それは彼女の対策を怠った自分が悪いんだぞ、横島よ。
その後横島達は「転」「移」の文珠でさっさと日本へ帰ることとなった。
家に帰ったら小竜姫様との関係について拷もn、もとい話し合いをするそうだ。
ルシオラのとんでも勘違いから始まった南アフリカ旅行も、蓋を開けて見れば場所が代わっただけで彼等の日常そのまんまであった。
ルシオラが無事復活し、いっしょにいるのが『横タマ』から『ルシ横タマ』に代わっても、彼等三人の日常はなにもかわらない。
普段は情けなくって相変わらずの女好き、でもキメるときはビシっとキメるバンダナ男。
お揚げ大好き、相手限定で悪戯大好きな狐っ娘。
恋をしたら躊躇ったりしない、現在進行形の恋に夢中な蛍っ娘。
この三人が暮らす騒がしくも楽しい日常に、このさき赤毛の竜っ娘が加わるかどうかは誰にもわからない。
ただ、竜っ娘が加わったとしてもやっぱり何も変わらないだろう。 いや、逆にさらに騒がしくもっともっと楽しい日常がまっているかもしれない。
なぜなら、いろんな目撃情報をリークしてくれる覗き趣味の友達がもれなく付いてくるのだから……
〜〜Fin〜〜