GS美神×ネギま!

□非常勤講師、始めました!?
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「失礼します」



コン、コン、という控えめなノックの音とともに扉の向こうで声が聞こえ、一人の青年がその部屋へと入ってきた。



「ま〜くん、どうしたの〜?」


「理事長、仕事のときはその呼び方はやめてくださいとあれほど……」


「そうだったかしら〜? それで〜、何か急用かしら〜?」



青年からの抗議もまるで聞いていないような、間延びした話し方をするのはこの学院の理事長である『六道 冥子』である。

さきほど『ま〜くん』と呼ばれた青年はこの学院の教師である『鬼道 政樹』、そして彼は式神使いのGSでもあった。



「実はどこかから彼女の存在が外に漏れてしまったようで……」


「あら〜、それは大変〜。 この間の体育祭で〜、彼女が全力で走ったのが〜、いけなかったのかしら〜。

それとも朝の新聞配達のときに〜、走って車を追い抜いたのがバレちゃったのかしら〜」


「あははっ、彼女の体力は一般人離れしてますからねぇ。 しかし恐らく例の組織の耳に入るのも時間の問題かと……」



冥子の言葉に思わず苦笑いを返す鬼道であったが、すぐに真面目な表情へと変わる。

今話題に上がった少女は、以前神魔合同の救出作戦に同行した横島が保護しここ六道女学院で匿っていたのだ。

じつは彼女、その身にかなり稀少な能力を持っていることがわかっている。

なんと彼女は直接的な物理攻撃以外の攻撃、例えば魔力砲であったり符や気による攻撃であったり霊力による攻撃、そういったものを無効化する能力があるのだ。

貴重な人体サンプルとして再び彼女を狙うことが十分考えられるため、早急に対策を考えなければいけない。



「どうしますか、理事長?」


「ん〜、難しくって冥子わかんな〜い。 ま〜くんに任せるわ〜」



指示を求めた鬼道であったが、なんと返ってきたのは自分に丸投げする理事長からの言葉であった。



「それはないで、冥子はん!!」



あまりのことに思わず鬼道の口調が素に戻ってしまった。



「なら〜、彼女を連れてきた横島くんに〜、お願いしようかしら〜」


「そんなに簡単に頷いてくれるでしょうか? 彼はすでにGSを辞めているうえに今では自分のお店を持っているわけですし。 それにあの人のことはどうするおつもりで?」


「それがね〜、令子ちゃんのところを辞めただけで免許を返したわけではないようなの〜。 それに気づいた唐巣神父とお母様がこっそり更新をしているの〜。

いつか必要になるかもしれないって〜。 それにお店のことなら問題ないわ〜、家のほうで新しいお店を用意するから〜。 あと、令子ちゃんには黙っておくつもりよ〜」


「唐巣神父も今ではGS協会の幹部でしたね、そういえば。 確かにあの二人ならそれくらいは出来そうですが……。

ただ何れ美神さんにはバレるんでしょうけどね」



冥子の言葉に鬼道の口から思わず苦笑いが零れる。



「その時はその時だわ〜。 じゃあそういうことで〜、横島くんを呼んでくれるかしら〜。 あと〜、その前に彼女の寮の部屋を〜、あの子と同室にしておきましょうか〜」



こうして横島の知らないところで外堀が着々と埋められていくのであった。






「こんにちは、横島くん〜。 よく来てくれたわ〜」


「やあ冥子ちゃん。 急に呼び出したりしてどうした? まさか千雨ちゃんに何か問題でも!?」


「いいえ〜。 彼女は特に問題なく平和に過ごしているわ〜。 これも横島くんたちのお守りのお陰かしら〜」



冥子から呼び出された理由がわからない横島は、心当たりのひとつである少女の名前を出す。

だがどうやら千雨のことではないらしい。

となると残りは彼女のことだけだ。



「ごめんなさい横島くん。 彼女の存在がどうやら外に漏れてしまったようなの」



それまでの口調が嘘のように冥子は真剣な口調と表情で横島へと侘びの言葉を継げる。



「いや、冥子ちゃんが謝る必要は無いよ。 人界の学校へ通わせようと言う話しが出た時点でいつかはバレると思っていたから。

完全に彼女の存在を隠すなら、それこそ妙神山のような拠点に匿うべきだったんだ。 

でもやっぱり彼女には同年代のコたちと同じ時間を過ごして欲しかったからさ。 匿ってもらっていた冥子ちゃんには逆に迷惑をかけちゃったみたいでゴメンな」



どうやら横島たちにはこうなることが予想できていたようだ。

逆に冥子のほうが横島から謝られてしまった。



冥子が横島と出会った当時と比べ今の横島は当時のような煩悩が表に出ているような状態ではなく、非常に落ち着きがあり好感が持てる。

もともと出会った当時ですら、従える十二神将のせいで友達の出来なかった冥子に恐れもなにも抱かず接してくれた彼に対して過度なスキンシップをされても悪い気はしていなかったのだが。

そんな冥子は横島がGSを辞めたと聞いたとき、とても寂しく思ったのを覚えている。 そして何年か経った後、とある事情によりひょっこり顔を出した横島を見て何故か胸が高鳴ったのは冥子だけの秘密だ。



「そう言ってくれると嬉しいわ〜。 それで横島くんにお願いがあるの〜」



空気が和んだついでに冥子の口調も元に戻ったようだ。



「あの子絡みか?」


「ええ〜。 この学院の教師だけでは流石に不安があるの〜。 

各学年の生徒達に〜、不意に超常現象に遭遇した時の心構えなどを〜、レクチャーしてくれるだけでいいわ〜。

それ以外にも〜、横島くんが来ない日はルシオラさんに科学を〜、タマモちゃんに古典の授業をお願いできないかしら〜。

横島くんたちのお店はもちろんこちらで準備させてもらうわ〜。 あと〜、令子ちゃんには黙っておくから〜」



どうやら月曜から金曜までの五日間、万が一何かが起こっても即応できるよう常に横島かルシオラ、タマモのうちの誰かを学院に置いておきたいということなのだろう。

横島としても店があるため毎日学院に通うわけには行かないので、この提案はありがたかった。

もとよりこの少女以外にも千雨という妹のように可愛がっている少女も在籍している為、断ると言う選択肢は横島には初めから無かったのである。

最後の言葉も今はまだありがたい。



「わかったよ冥子ちゃん。 ただ俺だけの話じゃないんで、一旦帰ってルシオラとタマモにも聞いてから返事はさせてもらうよ。

まああの二人もあのコと千雨ちゃんのことは気に入っているから二つ返事で了承すると思うけどね」



そういって横島は笑いながら席を立った。



「ありがとう横島くん〜。 ところでもう帰っちゃうの〜? お茶でもいかがかしら〜」



こうして一応の話し合いが終わった横島と冥子は、お茶を飲みつつお互いのこれまでの話などを聞きながら穏やかな時間を過ごすのであった。

だがこれは横島たちにとって騒がしい日常の始まりなのだが、今の時点でそれに気づく者は居なかった。

  
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