GS美神×ネギま!
□南国リゾートは危険な香り
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「横島先生、はぁ……」
窓の外を見つめ、ため息をつく少女が一人。
彼女の名は『大河内 あきら』、ここ六道女学院に通う生徒の一人である。
『六女の人魚姫』というあだ名を持ち、水泳界期待のホープでもあった。
こと水の中では全国屈指の強さを誇る彼女も、陸の上では周りのクラスメートと同じただの女子高生とかわりない。
その彼女は今窓の外を眺め、先日目撃した光景を思い返してはため息をつく。
「重症だな、ありゃ」
「そうね。 てか、随分余裕じゃない。 ライバルが増えるかもしれないって言うのに」
「あのなぁ、すでにタマモ姉さんやルシ姉さん、エヴァ姉がいるんだぞ?
いまさらいくら増えたところでたいしてかわんねーよ」
「ふーん。 ま、千雨がいいなら別にそれでいいんだけど」
「大河内に椎名に近衛だろ? それから桜咲のやつもなんだか意識してるっぽいしな。
あと、ずっと誤魔化してるけどお前もだろーが明日菜」
「さぁ? どうかしらね」
あきらを横目にそんなことを言い合う千雨と明日菜。
だがその後姿を静かに見つめる視線があることには気付いていなかった。
piririri, piririri, piririri, piri『ピッ』
「はい、もしもし?」
『お、お嬢様、た、大変でございます!!』
不意に着信音を響かせたスマフォを胸元のポケットから取り出し、彼女は電話に出る。
すると慌てた様子の声が耳元に飛び込んできた。
だがここは一つ言っておかねば。
「お待ちなさい。 あなたも雪広の家のものならば、何時いかなるときも冷静さを欠いてはいけません。
それは父からもいつも言われていることでしょう?」
「は、はいっ、申し訳ございません」
「以後、気をつけてくださいませ。 それで、一体何があったというのです?」
電話の向こうの相手に一言注意をした彼女は、詳しい話を聞こうとそう問いかけた。
「そ、それが、お嬢様が手がけていらっしゃるリゾート事業の件で気になる動きが……」
「詳しく聞きましょう」
「は、はい。 実はあるリゾートホテルの支配人より先ほど連絡が入りまして、お客様のキャンセルが急に増えたとのことでした。
詳しく調べたところ、これまではハリケーンなどの天候不良によるもの以外はほとんどキャンセルは発生しておりません。
それが今月に入りすでに100件を超え、ついに客室稼働率が25%を切ってしまったとのことです」
「なんですって? 雪広グループの保有するリゾートホテルの平均客室稼働率はたしか80%を超えていたはず。
先ほどおっしゃった、ハリケーンが発生しやすい地域のホテルですら平均70%は超えるというのにいったいどういうことなのでしょう……」
飛び込んできた報告が信じられず、彼女は慌てて持っていたタブレット端末を作動させる。
しかしそこには、先ほど報告を受けたとおりの数字がリアルタイムで表示されていた。
その数字は今も尚減り続けている。
「なぜ一つのホテルだけ、こんなことになっているのですッ」
思わず声が荒くなる。
電話の向こうの相手の息を呑む音が聞こえてきた。
それを聞いて彼女は少し冷静さを取り戻した。
「至急現地へと飛びます」
「お、お待ちくださいお嬢様。 その前にもう一つご報告がッ!!」
その後もたらされた情報に、思わず彼女は素っ頓狂な声を上げてしまった。
「こ、今回の一連の出来事は、どうやら現地での幽霊騒ぎが原因となっているようです!!」
「はぁ? 幽霊ですって???」
「はい、そうです。 ですのでもし現地へ調査に向かわれるのであれば、万が一のことも考えてぜひとも霊能力者の方との同道をお願いいたします!!」
電話の相手はいたってまじめなようだ。
そしてそういわれた彼女の頭の中に、ほんの一瞬ある男の顔が浮かんだ。
だが彼女は頭を振り、脳内からその顔を追い払うのであった。