GS美神×ネギま!
□人魚姫の溜息!?
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―オリンピック強化指定選手―
オリンピック競技大会で実施される正式競技の日本代表として参加可能な選手のこと。
オリンピック強化指定選手として自覚を促がし、効果的な強化活動の展開をはかることを目的としている。
強化指定選手の中から出場可能枠のオリンピック代表選手が選ばれる。 (s-Words スポーツ辞典より)
先のIOC、国際オリンピック委員会の第125次IOC総会(ブエノスアイレス)において、6年後に開催される夏季オリンピックの開催地を決定する投票が行われた。
開催地として立候補していたイスタンブール、東京、マドリードの3都市の中からIOC委員による登場の結果、見事東京が開催地として選ばれた。
その瞬間を待ちわびていた日本中が開催地決定の報に沸く。
そして各競技団体が6年後に国内で開かれるオリンピックに向け選手の育成にさらに力を入れるのであった。
『ピッ』という笛の音と同時にプールに張られた水の表面に水しぶきが舞う。
今、長水路(50メートルプール)のあるこの施設においてオリンピック強化指定選手のよる強化合宿が行われている。
そしてその指定選手に彼女も選ばれていた。
大河内 アキラ、前回の全国大会で見事高校日本一に輝き一躍全国へとその名を轟かせた水泳会期待のホープである。
もちろんその彼女と最後まで競い合った少女も選ばれていた。
「次、大河内と涼宮!!」
「はいっ」
「……はい」
コーチに名前を呼ばれ元気よく返事をしてスタート台に登るアキラとは対照的に、隣のスタート台に立つ少女はどことなく沈んでいるように見える。
アキラもそのことに気がついたのか、チラリと隣のスタート台へと視線を送った。
だが声をかける前にコーチがスタートの合図の笛を鳴らす。
『ピッ』という笛の音と同時にアキラはスタート台を蹴り水面へと勢いよく飛び込む。
50メートル先のゴール板を目指し手で水をかく。
あっという間に45メートルが過ぎ、そして指先でゴール板をタッチ。
そしてゴーグルを外し、プールの端に手をかけグッと力をいれプールから上がる。
ふとアキラはストップウォッチを手にしたコーチに目を向けた。
そんなアキラの視線に気付いていないのか、むつかしい顔をしたまま彼女は手元のストップウォッチの液晶画面を見つめている。
「涼宮……」
静かな口調でコーチがアキラの後からプールより上がってきた少女へと声をかけた。
「どこか痛めているのか?」
「……いいえ」
「ならば体調不良か? 体調管理も代表候補選手の勤めだぞ?」
「はい、すいません。 ですが、体調が悪いわけでは……」
「……そうか。 ならばしばらく水から上がっていろ。 今のままの状態で泳がれても周りの選手たちの迷惑にしかならん」
「ッ…… わかりました」
アキラの背後で交わされる会話。
それを彼女は心配そうに聞いていた。
先ほど感じた違和感、それはやはり間違いではなかったようだ。
アキラはタオルを手に更衣室へと引き上げていく少女へ慌てて駆け寄り声をかける。
「茜ッ!!」
名前を呼ばれた少女、『涼宮 茜』は声のした方へと振り返る。
そこには心配そうな顔をした、長身のライバル兼親友の姿があった。
「アキラ…… どうしたの、練習は?」
「『どうしたの?』はこっちのセリフ。 茜、何かあった?」
何でもないふうに装う茜であったが、それはアキラには通じなかった。
アキラの心配そうな瞳がジッと茜を捉えている。
「……練習はいいの?」
「うん。 コーチの許可はとってある」
「そっか……」
隠し通すことは不可能と判断したのか、茜はアキラと並んで歩きだした。
やがてたどり着いた更衣室のベンチに二人並んで腰掛ける。
しばらくお互い無言であったが、意を決した茜が重い口を開いた。