GS美神×ネギま!

□過去の清算after IF
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「(ここは…… どこだっけ――――? ああ、そうか。 私アシュタロスに騙されて……)」



沈んでいた美神の意識が浮かび上がる。

それはまるで水の底から浮力に任せて浮かび上がるような感覚であった。



「(本当はあなたにヤキモチを妬いて欲しかっただけなのに……。 ゴメンなさい横島クン、こんなことになるなんて―――――)」



美神が人間に化けたアシュタロスの誘いに乗ったのには訳がある。

それは最近ルシオラばかり構って自分との時間をなかなかとってくれない横島に対するあてつけでもあったのだ。



ほんのわずかな『嫉妬』、それがこの事態に陥った要因であった。



横島が最近気にかけている女性の名は『ルシオラ』。

彼女は『好き』という気持ちをまっすぐ横島にぶつけていた。

素直になろうとは思っていてもなかなか言葉にできない自分とは違い、彼女のその姿は美神にとって眩しく写る。

それゆえに美神は危機感を覚えていたのだ。

このままでは横島は彼女を選ぶのではないか、と。



横島にもっと自分のことも見て欲しいという気持ちが導き出した答えが『芦 優太郎』というとある企業の御曹司とデートすることにより嫉妬してもらえたら、ということであった。

それがこんなことになるとは思いもよらなかった。




「(魂がもう―――――、形を保っていられない…… 横島クン、もう一度あなたに会いたかっ―――――――)」






……………………

………………

…………

……






思い返せばあの蜘蛛の妖怪を退治したあの事件の後くらいから美神の態度に変化が見られた。



まずは横島の時給が¥850に上がった。

コンビニの店員とほぼ変わらない時給だ。

それを告げられた時、横島はおもわず『マフィアの贈り物?』と口にしてしまい美神に殴られたのはまだ記憶に新しい。



そして以前には見せなかった弱みも時折見せるようになった。

その日横島を誘って飲みに来たバーのカウンターで、珍しく美神は酔って眠ってしまう。



「(美神さん、疲れてたのかな? ならしばらくは起こさないほうがいいか)」



そう思った横島は、グラスに入った烏龍茶をチビチビと飲んでいた。



「うぅ……ん……」



隣からわずかな声が漏れる。

美神が目を覚ましたのかと横島は隣へと視線を向けた。

だが美神が起きた様子はない。

再び横島はグラスに手を伸ばそうと視線を戻しかけた時、それは聞こえてきた。



「マ、マ……」



横島は以前、美神から母親が彼女がまだ幼さの残る頃に亡くなったことを聞いていた。

そして寝言でそう呟いた美神の目元には、照明を受けて僅かに光る雫が見て取れる。

普段はそんな素振りを見せないが、やはり母親がいない寂しさをずっと我慢してきたのだろう。

そんな美神の普段とは違う一面を目にしたこの日から、横島は美神に対し以前のような欲望丸出しの視線を向けることが少なくなっていった。

  
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