GS美神×ネギま!
□藤原の姫君と守護の盾
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「ルシオラせんせ、おる?」
カウンセリング室の椅子に座り、穏やかな午後の日差しを受けながらのんびりとお茶を飲んでいたルシオラの耳に自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
「いるわよ、どうぞー」
この部屋へとやってくるのは全員が全員なにかしらの悩みを相談に来る生徒ばかりなので、ルシオラはあえて明るい声で訪問者へと返事を返した。
ルシオラの返事を聞き部屋へと入ってきたのは、まさに『大和撫子』という言葉は彼女の為にあるのではないかと思われるほど艶やかなロングの黒髪にお淑やかな雰囲気を纏った少女であった。
「いらっしゃい。 今日はどうしたの?」
「あのなせんせ。 ウチ自分でもようわからへんのやけど、ある人の姿を見かけると胸の辺りがポカポカしてくんねん。
せやけどその人が他の女の人と仲良う話ししとる姿みると、なんや今度は逆に胸がキューって締め付けられるような感じになんねん。
なあせんせ、ウチ病気やろか?」
その少女はちょっと恥ずかしいのか、小さな声で話し始めた。
彼女の名は『近衛 木乃香』、ここ六道女学院の普通科1ーAの生徒だ。
当然授業で顔を合わせる機会があるため顔見知りでもあるし、何度か話をするうちにお互い堅苦しい喋り方はしなくなっていた。
そんな彼女の相談を聞いたルシオラはというと、木乃香のソレが何なのかはすぐにわかった。
なにせルシオラ自身が現在進行形で恋愛真っ最中の身なのだから。
『恋をしたら躊躇わない』がモットーの彼女であるが、やはり木乃香の抱いている気持ちには自分自身で気付いて欲しかった。
だからルシオラは直接それが何なのかを教えるのではなく、ヒントを与えることにした。
「ねえ木乃香ちゃん、その相手の人っていうのは男の子?」
「男の子っていうよりは男の人、やな〜」
「そっか。 ねえ木乃香ちゃん、それならちょっと想像してみて。 その人と一緒に映画とか遊園地とかに二人で出かけたとしたらどんな感じ?」
「う〜ん、そやなぁ……。 ひゃー、なんやドキドキしてまともに相手の顔が見られへん気がするわ〜」
想像しただけで恥ずかしいのか、木乃香は赤くなった頬を両手で挟む。
「あら可愛い反応ね。 ふふっ、タマモちゃんがいたらきっと抱きしめてるわね。
じゃあ逆に、その人と誰か違う女の子が街を歩いているのを偶然見かけてしまったらどんな感じ?」
「ん〜、きっとショックで逃げ出してまうわ」
今度は逆にしょんぼりしてしまう木乃香。
「じゃあ今度は、その人の横でウェディングドレスを着て立っている姿は想像出来る?」
「ん〜……」
ルシオラにそう言われ、木乃香は目を瞑り人差し指を顎に当てながら懸命にその姿を想像する。
するとそんな彼女の表情が幸せそうにほわっと綻んだ。
どうやら自分の花嫁姿が想像できたようだ。
「ふふっ、どうやらその人と一緒になる幸せな姿が想像できたみたいね。
そこまで想像できれば、答えは簡単じゃないかしら?」
木乃香のその顔を見て、ルシオラも嬉しそうに微笑んだ。
「そっか、ウチあの人に惹かれとるんやな。 せやけどなんでやろ? その人とは最近知り合うたばかりやのに……」
「へぇ、もしかして一目惚れかしら? 素敵じゃない。 いい、木乃香ちゃん。 恋をしたら躊躇っちゃダメよ」
「あははっ、せんせの口癖が出た。 けどホンマおおきにな、ルシオラせんせ。 ウチ、頑張るわ」
そういいながら、木乃香は席を立つ。
そして最後にもう一度ルシオラに向かってお辞儀をし、木乃香はこの部屋から出て行った。
「木乃香ちゃんみたいな素敵な女の子に想われてる相手って一体誰かしら。 ふふっ、頑張ってね木乃香ちゃん」
すでにこの部屋にはいない木乃香に向かって、ルシオラはそうエールを送るのであった。
だが後日、木乃香の想い人が判明した際にはルシオラは非常に驚くことになるのだがそれはまだ先の話。