GS美神

□思い出の場所
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「横島、きょうは一日かけて私を貴様の思い出深い場所へ案内しろ」


「な、なんだ!? いきなりだなエヴァちゃん。 どうしたんだ、いったい!?」


「貴様たちに着いてこの世界にやって来たのはいいが、私はこの世界のことを話しに聞いただけで何一つ知らないのだ。

実際に自分の目で見ていろんなことを実感してみたいのだよ」


「そういうことか。 じゃあそうするか」


「ほ、本当か!?」


「なんだよ、エヴァちゃんが言い出したんだろ!?」


「う、うむ、そうだな。 では早速出かけるとするか」



横島はルシオラとタマモへも声をかけるが、せっかくだから二人で出かけてこいとのことだった。



どうやら今日は横島と出かける気満々だったらしいエヴァ様、すっかり外出の用意はできていた。

そして横島の思い出の地へとさまざまな期待を膨らませる。




「ここは?」


「俺の原点、かな!?」



エヴァと横島が電車に揺られてやってきた場所、それは海に程近い別荘地であった。

横島にとって忘れるはずのない、全ての始まりの場所。

この地で彼は惚れた女のために全てをかける決意をしたのだ。

それまでは流されるまま遠巻きに見ているだけであったバケモノとの戦いも、彼女の前で初めて自分が戦うと言ってのけた。

正にその場所に佇みながら、横島はエヴァへ当時の話しを静かに語っていく。

エヴァは何も言わず、横島の話を静かに聞いていた。




この場所についてあらかた話しつくした横島は、エヴァの手をとり次の場所へ移動する。

次はどうやら少し距離があるため、文珠を使うようだ。




「よし、着いたぞ。 やっぱ『文珠』があると便利だな。 こんな世界の果てでもあっという間なんだからな」


「ど、どこだここはーーーーーーッ!!」



猛烈な吹雪と寒さの中、エヴァの絶叫は風にかき消されてしまう。

横島の思い出深い場所その一はなんと、『南極』であった。



「まままままま、まさかかかか、ぺぺぺぺぺんぎんをみみみみ見にきたわけではああああああああるまいな?」



あまりの寒さに、エヴァもまともに喋れないようだ。

だが横に立つこの男は、真剣な顔で何かを見つめていた。

エヴァも横島の視線を追ってみるが、そこには何も見当たらない。

そう、何も見当たらなくて当たり前なのだ。

なにせここはとある魔神がジャックした核ミサイルが爆発した地点なのだから。



「ここでは何があった!?」



横島の真剣な表情に引き摺られるかのように、エヴァもまた表情を引き締まる。



「ここで俺とルシオラは魔神相手に一時の平和を掴み取ったんだ。 全ては奴の掌の上と気づかずに……」



嘗てここで人間と、永遠の悪役を宿命付けられた悲しき魔神との戦いが繰る広げられた。

横島がエヴァへと嘗ての話しを聞かせる間、エヴァは黙って耳を傾けていた。

中には聞くのもアホらしい内容の事柄もあったが、話を聞いただけでもいかにこの男が無茶をしたのかが理解できた。

相手はあの恐怖公『アシュタロス』。

本来であれば人間が束になってもかなう相手ではない。

それでもこの男は幾度となく地面に膝を付きながらも立ち上がり、一時の平和を手に入れたのだ。

それは幾度もの死線を潜り抜けてきたエヴァから見ても賞賛に値する。



そして二人は再び都内へと戻ってきた。

今二人は横島の母校の前に立っている。

横島にとってほんの僅かしか一緒に居られなかった中での甘い時間。



「ふん、特別に今日は校門で待つ役を私がやってやる。 感謝しろよ?」



エヴァにそう言われ、横島は母校の昇降口へと歩いていく。

校庭へと足を踏み入れた瞬間、横島の心の中に懐かしい思い出が蘇っていく。

ピート、タイガー、愛子……



当時よく一緒に居た面々の顔が浮かんでは消えていく。

横島は思わず目を瞑り、当時の思い出を振りかえっていた。



どれくらいそうしていただろうか、ふと我に返った横島は慌てて校門へと駆け出した。



「お、おまたせ……」


「遅いわ馬鹿者がッ!! いったいどれだけ待たすつもりだ貴様はッ!!」



予想以上に待たされて大変ご立腹のエヴァに出迎えられた。

ブツブツと文句を言うエヴァを連れ、横島は歩き出す。

この時間ならきっとあそこから見る景色は絶景だろう。



「む、ここは東京タワーか!?」

  
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