GS美神

□勃発!! 吸血姫VS戦乙女!?
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その日、エヴァはここ最近のお気に入りの場所であるタマモの膝の上でポテチを齧りながらTVを見ていた。

タマモは膝に座るエヴァの絹の様な金髪を、指で軽く梳くように撫でていた。

子ども扱いするな、と初めは文句を言っていたエヴァも今は気持ち良さそうに目を細めなすがままになっている。



「貴様、真祖の吸血鬼を子供するんじゃないっ」


「あら、別に良いじゃない。 ホントはイヤじゃないくせに」



口ではそんなことを言うエヴァだが、タマモはお構い無しだ。



「ふふっ、そうしていると本当の姉妹みたいね」



その姿を見たルシオラが柔らかく微笑みながら呟く。

そこにはエヴァの望んだ平穏があった。



「おーい、そろそろ出かけるぞ〜」



そこへ横島から声がかかる。



「あら今日だっけ!?」


「きっと待ってるわね、急がないと……」



タマモやルシオラはどこへ出かけるのかわかっているようだが、まだこちらに来て日の浅いエヴァはそうは行かなかった。



「待て横島、どこへ行くのか説明位していけ」


「ん!? まぁ着いてからのお楽しみだ。 エヴァちゃんも間違いなく気に入るぞ」


「あと、間違いなく驚くわよ?」



そんなエヴァの問いかけも、横島たちにはぐらかされてしまう。



そして一行がたどり着いたのはご存知、妙な神様の山と書いて妙神山。

そう、今回は小竜姫との初顔合わせだった。



「よう鬼門、小竜姫様いるか?」


「「おお、横島ではないか。 最近お主が顔を見せていなかったお陰で姫様の機嫌があまりよろしくないのだ。

早く顔を見せてなんとかしてくれい」」


「そりゃいかんな、んじゃ入らせてもらうぜ? 小竜姫様〜、横島忠夫がただいま参りましたよ〜」



今日もどうやら横島は相変わらずのようだ。



「「ささ、タマモ殿もルシオラ殿も中へ入られよ」」



左右の鬼門に促され、タマモとルシオラそしてエヴァの三人が門をくぐり妙神山へと足を踏み入れる。



「のう、右の」


「なんじゃ、左の」


「一人見た事ないおなごがおったようじゃが」


「もしやあのおなごも横島の!?」


「「あぁ、姫様の機嫌がさらに……」」



この後に起こったことは、両鬼門の予想通りのことであった。



「忠夫さん、ずいぶんとご無沙汰でし……た……ね……!?」


「ははっ、すいません。 ちょっとした事故でよその世界に飛ばされてまして……」



鬼門に言われたとおり、横島は真っ先に小竜姫のところへ跳んでいった。

そして久しぶりの再会を祝し、小竜姫を抱きしめようとするがなぜか彼女の様子がおかしい。

背後に巨大な竜の幻が……



「忠夫さん。 暫くここへ来れなかった理由とは……」


「あ〜、ええっと……」


「まさか、そちらの可愛らしい少女は関係ないでしょうね!?」



小竜姫の発するプレッシャーに負けた横島は、ここで伝家の宝刀を抜く。



「大変申し訳ございませんでしたーっ!!」



そう、横島得意のザ・土下座だった。



あまりにもキレイな土下座に、エヴァは口をあけて驚いている。

タマモとルシオラは見慣れているせいか普段と変わりなかったが。



「こんにちは、シャオ」


「ふふっ、暫く来れなくてごめんなさいね、小竜姫さん」



ここでタマモとルシオラが小竜姫へ挨拶をする。



「あら、お二人ともいらっしゃい。 あと、そちらの方は始めましてですね!? 私はここ妙神山修行場の管理人、小竜姫です」


「あぁ、始めましてだな。 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルという。 宜しく頼む」


「こちらこそ宜しくお願いしますね、えばんじぇりんさん」



なんとなく発音が気になったエヴァだが、それよりも今は聞かなくてはならない事があった。



「初対面でこんなことを聞くのもあれだが、お前は何者だ? タマモやルシオラとも違う存在のようだがいったい……」



エヴァのそんな問いかけに答えたのは、土下座から復帰した横島だった。



「ああ、シャオは竜神族の姫様だ」


「な、なんだとーーーーっ!!」



まだ向こうの世界にいた頃、確かにエヴァはこちらの世界のことは横島から聞いてはいた。

だが実際に目の前にいる存在が神族だと聞かされ、エヴァは盛大に驚く。




「「ふふっ、大成功♪」」



エヴァの後ろではタマモとルシオラが笑っているが、今はそんな事お構い無しだ。



「あら、信じられませんか?」



そう言って小竜姫は嘗て美神にしたように、ほんの少し霊力を開放する。



『ズンッ!!』とエヴァの身体に強烈なプレッシャーが襲い掛かる。



「あなたも見た目では想像も出来ないくらいの力をお持ちのようですね。 でも人を見かけで判断してはいけませんよ?」



小竜姫がそう言った瞬間、先ほどの重圧が嘘のように霧散した。



「あ、ああ……」



初めて神族の力の一端を垣間見たエヴァは、そう返事をするのが精一杯だった。



「よろしい。 では詳しいお話は中で聞きましょうか。 ね、た・だ・お・さん!?」



満面の笑みで宿坊の中へと案内する小竜姫。

その手には横島の襟首がしっかりと握られていた。

その笑顔に少しだけブルってしまったのはエヴァだけの秘密にしてあげてほしい。



その後小竜姫が煎れたお茶を飲みながら、横島たちはエヴァがこちらに来るまでの経緯を小竜姫に説明した。

今この場所には、神族、魔族、妖怪、人間(?)が一堂に会している。

横島たちにとってはいつものことであったが、向こうの世界で追われ続けたエヴァにしてみれば非常に不思議な感じだ。




「ほう、珍しい客人じゃな」



するとそこへキセルを咥えた猿が姿を現す。

気配もなく突然現れたその人物(?)に、エヴァは警戒感を露にする。



「貴様、何者だ……」


「なーに、ただのゲーム好きの猿ジジイじゃよ。 そう警戒しなさんな」


「老師!? いつ天界からお戻りに?」



小竜姫から『老師』といわれた人物は見た目はただの猿にしかみえないが、エヴァにはただならぬ雰囲気が感じられた。



「横島、この猿はいったい何者だ?」


「あ〜エヴァちゃん、驚くなよ?」


「勿体つけずにさっさとと教えんかっ!」



エヴァのその言葉に、横島はルシオラたちに目配せをして正体を告げる。

横島の視線の意味に気付いたエヴァ以外の全員は耳を塞ぎ準備は万端。



「『斉天大聖』『闘戦勝仏』『ハヌマン』、いろいろな呼び名があるが早い話『孫悟空』だ」


「…………。 な、なんだとーーーーーーーーーーーっ!?」


「ウキッ!?」



普段は静かな妙神山に、エヴァの絶叫が響き渡った。

  
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