GS美神

□夢の続きU
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『ドンッ!  ドンッ!』



2発の銃声が響き渡る。



しかし「シッ!!」という吐息と共に振るわれた神剣により先程の銃弾は2発とも切り落とされた。

だかまだ油断は出来ない。

相手の射撃の腕はかなりのものだ。



(くっ、このままでは……)



赤い髪の、大学生位の外見の女性は神剣を構えながらも内心は焦りを感じていた。



「くくくっ、いつまで耐えられるかな小竜姫。  超加速の使えないお前に勝ち目はないぞ!?」



相手の冷たい声に唇を噛み締めながらも、剣の間合いの外からの正確無比な射撃により徐々に小竜姫は追い詰められていく。



そしてついに『ガキャンッ!』という音と共に小竜姫の唯一の武器である神剣が銃弾により弾き飛ばされた。



「くうぅっ…」



手首に受けた衝撃に苦痛の声を漏らしつつ、地面を転がりながらなんとか追撃の

弾丸を避けることに成功する。



「お前はよく戦った。 だがここまでだ……」



勢いよく立ち上がり直ぐさま構えを取る小竜姫であったが、不意に聞こえた声と共に小竜姫の後頭部に銃口が突き付けられた。



「どうやらそのようですね……」



悔しそうにつぶやきながらも、己の負けを認めた小竜姫は竜気を纏っていた身体からその力を抜いた……






夢の続きU・『竜神様はお年頃!?』





【妙神山】


「(明日ですね、あの人が来るのは。 早く明日にならないかしら)………はぁ」



沈みゆく夕陽を眺めながら、赤毛の女性が何やらため息をついている。

普段の隙の無い凛とした雰囲気とは違いかなり無防備だ。

その証拠に、背後から近付く人影にも気付いていない。



「なーに溜息ついてるのね、小竜姫!?」



突然背後よりかけられた声に「ひゃぅ!?」という可愛らしい声をあげながら振り向くと、そこにはよく見知った友人の姿があった。



「あぁ、ヒャクメでしたか。 どうしました?」

「どうしました?じゃないのねー。 さっきから何度も呼んだのね」



どうやら何度も声をかけられていたらしい。

全く気付いていなかった事に若干の恥ずかしさを覚えながらも、それを顔に出さないよう努めて冷静に返事を返す。



「あら、そうですか!?少し考え事をしていましたので……(あの人の事を考えていたなんて言えるはずがありませんっ!)」



あくまでも自然な感じで返事をする小竜姫。

だが、やはりこの覗きが趣味の友人をごまかすには少しばかり彼女の性格は真っ直ぐすぎるようだ。



(ふ〜ん、考え事ね〜。 ま、今はそういうことにしといてあげるのね)



ヒャクメはニヤニヤしながらもとりあえず今はその事についてはスルーすることに決め、小竜姫に問い掛ける。



「ねぇ小竜姫、最近何か良い事でもあったのね〜?」



ヒャクメがこんな顔をしている時はたいてい碌でもないことを考えている、と長年の付き合いで理解している小竜姫は内心少し焦りながらもすっ惚けることに決めた。



「特に何もありませんよ。 というか、なんですかその顔は?」



しかしながら相変わらず惚けるのがヘタというか、嘘がつけない小竜姫。

その頬はほんのりと赤く染まっている。

夕陽のせいだけではないのは一目瞭然であった。



「そうなのね〜!?  でも最近ある人が来るときは決まって機嫌が良いのね〜。 どうしてなのね?」



じわりじわりと小竜姫を追い詰めていくヒャクメ。



「な、なんのことです……」



かろうじて冷静さを保つ小竜姫。

しかし内心は既に警戒警報が鳴りっぱなしである。



「その人と話している時の小竜姫は、まるで恋する乙女みたいなのね。 端から見ていると背中が痒くなるくらいなのね〜」



ヒャクメの言葉を聞いていた小竜姫は、顔を真っ赤に染め上げ俯いていた。

よく見ると、肩がプルプルと震えている。

羞恥によるものか、はたまた怒りによるものかは計り知れないが。



しかし何気に普段の扱われ方がアレなヒャクメは、ここぞとばかりに追撃の手を緩めずさらに攻勢に出る。

そのため小竜姫のその僅かな変化に気付いていなかった。

この辺りで止めておけばこの後の展開も違っていただろうが、そこはやっぱりヒャクメである。

まぁ自業自得だ。 強く生きろよ、ヒャクメ。



「さっきもその人の事を考えていたのね〜。 たしか明日また来るのね?

『たしかに東京タワーから見る夕焼けは特別っす。 でもこの妙神山で小竜姫さまと見る夕焼けも、間違いなく俺の宝物っす』って、なるほどなのね〜。

そんなことを言われたら、いくら小竜姫といえども意識しちゃうのね〜」



その台詞を言った直後、ヒャクメは「ピキッ!」という音と共に周りの気温が一気に氷点下付近まで下がったような感覚を覚えた。

いや〜な予感が……

ヒャクメは恐る恐る小竜姫を伺ってみる。



「ヒィッ!」



そこには小竜姫という名の夜叉が居た。



「ヒャクメ、いつもいつも言っているでしょう。

むやみに人の心を覗くのは止めなさいと…… ふふふっ、どうやらあなたには口で言っても通じないようですね!?」



そう言いながら、ゆら〜りゆら〜りとヒャクメに近寄っていく小竜姫。



ヒャクメはこの時点でようやく己の失敗に気がついた。

が、時すでに遅しである。



『ガシッ!』と両肩を掴まれては逃げようが無い。



「ふふふっ、これですね!?  耳につけているこのアクセサリーみたいなものがいけないのですね……」



小竜姫はそう呟き、そして次の瞬間ヒャクメの耳にぶら下がっているピアスのような目玉のような何かをむんずと掴むと、大きく振りかぶって全力で放り投げた。



「ヒャクメっ、仏罰です! 一人で探してらっしゃい!!」



随分照れ隠しの入った仏罰ではあるが、仮にも竜神様の全力投球である。

はたして何処まで飛んでいったのか……



「うぅっ、ひどいのね小竜姫ぃ〜」



泣く泣くヒャクメは探しに行くのであった……






【チベット】



「疲れた……」



バンダナを巻いた男が列車から降りた直後に呟いた。



「やっぱり駅弁にもお揚げを使うべきよね。 あ〜、はやくお揚げ食べたーい」



金髪を九房に分けた、特徴的な髪型の女は暢気にそんなことを呟く。



そしてもう一人、頭に二本の触角がかわいらしく揺れている女が呟いた。



「ねえヨコシマ、チベットって『駅』て所にそっ「「言わせねー(ないわ)よ!?」」……」



どうやらルシ横タマの3人はチベットを旅行中のようだ。

どこかで聞いたやり取りが聞こえてくる。



「なぁタマモ、いったい目的のモンはどこにあるんだ?」



前回の南アフリカ旅行とは違い今回は何か探しものがあるようだ。

横島が少し疲れた様子で問い掛ける。 

蛍っ娘は初めて見る景色に興味津々だ。



「ん〜、聞いた話しだと地面に転がってるらしいんだけど……」



どうやら探しものは地面に転がっているらしいが、今回の旅行も発案者以外は目的を聞いていないらしい。

いいのか、それで!?



「なぁタマモ、今更なんだが何探してんだ?」



「天眼石よ」



「「天眼石?」」



「そ、天眼石。別名『チベット瑪瑙』とも言うわね。

まるで『眼』のように見える年輪みたいな模様が特徴で、邪気払いや魔よけの効果があるらしいのよ。

ダライラマ14世もノーベル平和賞の受賞式の時に身につけていたらしいわ。

地中からじゃなくて地表で発見されたことから、『天から降ってきた神の眼』ていう意味を込めてこの名前がついたらしいわね」

「へぇ〜、随分詳しいんだな。 ちょっと意外というか、そういうのはどっちかっちゅうとルシオラのほうが詳しそうな気がするが」

「ホントね。 タマモちゃんがお揚げ以外に興味を持つなんて」



横島の呟きに、ルシオラがクスクス笑いながら答える。



「意外で悪かったわね。 殺生石について調べてるうちに、パワーストーンとかに興味が出てきたのよ。

んで、今回の目的の天眼石は地面に転がってるらしいから簡単に見つけられるかな〜って思ったの」



と、ちょっと拗ねたような照れたような口調でタマモが説明した。

その説明に横ルシも興味が出てきたようで、地面を探しはじめる。

  
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