GS美神

□夢の続きT
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「危ないっ! 避けてっ、ヨコシマーっ!!」

「忠夫っ!」



『ドグシャッ!!』



「「キャーッ!!」」



取り囲んだ観衆が息を呑んで見守る中、ルシオラとタマモの声だけが辺りに響き渡った……





夢の続きT・『ルシ横タマ』のWカップ珍道中




「疲れた……」



バンダナを巻いた男が飛行機から降りた直後に呟いた。



「やっぱり機内食にもお揚げを使うべきよね。 あ〜、はやくお揚げ食べたーい」



金髪を九房に分けた、特徴的な髪型の女は暢気にそんなことを呟く。

そしてもう一人、頭に二本の触角がかわいらしく揺れている女が呟いた。



「ねえヨコシマ、南アフリカって『空港』て所にそっくりね」

「「それはおキヌちゃんの台詞だから使っちゃダメーっ」」



どうやら横島君、タマモちゃん、ルシオラさんは南アフリカまで来たご様子。

はたしてどんな旅行になるのやら……



「ところでルシオラ、なんで南アフリカなんだ?」

「ホント突然だったわよね、行きたいなんて言い出したの。 なんで?」



横島とタマモがいまさらながらルシオラに問いかける。



「だって、Wカップよ?しかも世界中が熱狂するらしいじゃない。 これはもう私に喧嘩を売ってるとしか思えないわ!」



なぜか少しご機嫌ななめなご様子のルシオラさん。



「(なぁタマモ、あいつもしかして……)」

「(えぇ、間違いなく勘違いしてるわね……)」

「(やっぱりか。ちゃんとわかってたらWカップじゃなくてW杯て書くよなぁ……)」



そんなルシオラの言葉を聞いて、こそこそと何やら話し合う横タマ。

そんな二人を見たルシオラはというと、二人の会話が聞こえないためちょっぴり妬いてさらにご機嫌が下降気味。



「なぁルシオラ……」



相変わらず女性の気持ちにニブチンな男が恐る恐るといった感じで問いかける。



「そういえばヨコシマも楽しみだって言ってたわよねっ。 悪かったわね、どーせ私はAカップよ!」



勘違いが止まらないルシオラは横島の胸元を掴むと、ガックンガックンと力いっぱい前後に揺さぶる。



「ちょ、おまっ、やめ……ぐぇ」



最後の方で何やら潰されたカエルの鳴き声のようなものが聞こえたが、それをしっかり無視してタマモがルシオラに話しかける。



「ねぇルシオラ、これなんて書いてある?」



そこでようやく手を止めたルシオラ。

手元をよーく見てみると、完全にグロッキー状態の男が一人。

しかし悲しいかな今はタマモの方を向いているため気づいてもらえそうにない。

まぁ死にはしないだろう、横島だし……



手を止めたルシオラはタマモが持っているスポーツ新聞をチラッと見て答える。



「ダブルカップにほんだいひょう、ヨハネスブルクにとうちゃく」

「やっぱり……。これ、ダブルカップじゃなくて『ワールドカップ』て読むのよ」

「ワールド、カップ……?」

「そ、ワールドカップ」

「……なに、それ?」

「……サッカーの世界大会のひとつ」

「胸の大きな人達の集まりじゃないの??」

「どんだけ爆乳の集まりなのよ、それ」



本気で驚いているルシオラに、呆れ顔のタマモの視線が突き刺さる。



「うっ、もしかしてヨコシマもタマモちゃんも知ってた……?」

「「あぁ(えぇ)……」」



いつの間にか横島も復活している。



「な、なんで教えてくれなかったのーっ?」

「「いや、ここまで来た理由、ついさっき知ったし」」

「「「……………」」」



三人の間に、なんとも言えない温〜い風が吹き抜けていった。

とんでもない勘違いから始まった三人での初めての海外旅行。



(((どーなることやら……)))



この時三人の気持ちがひとつになったのだか、だーれも気づかなかったそうな。
 





さて、気を取り直した三人は仲良くならんで公園を散歩していた。



「ねぇヨコシマ、あれは何?」



蛍っ娘は知的好奇心が溢れているご様子。



「ねぇ忠夫、あれ美味しいのかしら?」



狐っ娘は食欲を抑えられないご様子。



二人は同じタイミングで横島に尋ねる。

が、さっきまでそこにいた筈の男の姿が見当たらない。



((まさかっ))



何かに気づいた二人はさっと辺りを見回す。



((居たっ!))



二人の視線の先には、少女に話し掛けている横島……

年は15,6才位だろうか?

ルシオラとタマモのこめかみに特大の井桁が浮かぶ。



「な〜にしてるのかな、ヨコシマ……」



横島が振り向くと、笑顔のルシオラが居た。

ただし、目は全く笑っていないが。

しかもその後ろではタマモが無言で佇んでいる。

背後に無数の狐火を浮かべながら……



(わ、ワイが何したっちゅうんじゃーっ)



横島には二人に凄まれる覚えが全く無い。

しかし横島の心の弁解も虚しく、修羅二人による愛のムチという名の折檻が始まった。



「「こんの……、浮気ものーっ!!」」

「あ、あの……」



目の前でいきなり見せられたスプラッタ劇場にすっかり怯えてしまった少女の声は、修羅二人には届くことはなかった……

  
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