ショートストーリー
□X'mas特別ショートストーリー
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「ヨコシマー、おっそーい!! せっかくタマモちゃんとエヴァちゃんが気を利かせてくれたんだから早く出かけましょ!?」
「そう慌てるなって、ルシオラ。 映画も指定席だしレストランだって予約したんだろ? ならそんなに急ぐ必要無いんじゃないのか!?」
私がかけた言葉に、ヨコシマがそう返事を返してきた。
今日は人間たちにとって特別な日なんでしょう!?
そういう日だからこそあなたと少しでも長い時間二人きりで過ごしたいのに。
もう、本当にヨコシマったら女心がわかってないんだから……
私たちのような存在にとって今日という日に、本来人間たちみたいな特別な感情は持っていない。
あ、でも違う意味で特別な日かも。
だって宿敵であるはずの勢力の、ましてやその最高指導者の誕生日なのだから。
今頃はきっと私たちの勢力の最高指導者様がとりあえずお祝いの言葉を贈った後で、出された料理を奪い合うようにしながら食べているのだろう。
おそらくそれを見た奥さん達に怒られて小さくなっているんじゃないかしら!?
今日は神族側の最高指導者である『キーやん』さんのお誕生日。
私たちが今住んでいる人間界ではずっと前からお祝いムード一色で、特にここ日本では本来の趣旨とは違ってまるで一種のイベントのようだわ。
そういう今のヨコシマと私も、道行くカップルと同じでデートを楽しむ予定なのだけれど。
あの日突然始まった私の恋。
攻撃を受け、激しく揺れた逆天号から振り落とされそうになった私を助けてくれたヨコシマ。
その時はまだ敵と味方だったけれど、あなたが言ってくれた言葉を覚えてる?
「夕焼け…… 好きだって、言ったろ」
「え……!?」
「一緒に見ちまったから…… あれが最後じゃ、悲しいよ」
その言葉がとっても嬉しくて、『あなたの心にもっと残りたい、また一緒に夕日を見たい』自然とそう思えたわ。
敵であったはずの私にまであなたは優しくて、あの日のことを考えると今でも私の胸は高鳴る。
そしてあなたが傍に居てくれるだけでこんなにも心が温かい。
「どーせ後悔するならてめえがくたばってからだ!! アシュタロスーーーーーーッ!!」
あのことがあったから、またヨコシマと一緒に居られるなんて思っても見なかったわ。
でもこうして今があるんだもの、あの時の私たちの思いは報われたのだと思いたい。
この世界や人間たちのことを何も知らなかった私。
そんな私にもあなたはいろいろ教えてくれたわ。
時には笑いあって、時にはケンカもして……
あなたの隣で季節が移り変わるのも見たわね。
あの時、アシュ様の下から一歩踏み出す勇気をくれたあなたには本当に感謝してるのよ?
それなのにヨコシマったらいつの間にかいろんな女の子と仲良くなっちゃって。
愛情たっぷりの顔も、真剣なその表情も、本当なら全て私のもののはずでしょう?
そのあたりはこのルシオラさんに感謝しなさい。
私が絡ませた腕をちらりと見て、少し照れてるヨコシマの横顔を眺める。
ヨコシマさえいれば、私はきっと強く生きられる。
もうなにがあってもあなたの隣から離れないわ。
一年の命としてアシュ様に造られた私たち三姉妹。
その時は世界なんて目にも留まらなかった。
でも今はヨコシマの視界に写る世界が私の世界でもあるの。
だから、今日という日は私にとって特別な日になったわ。
そしてこれからもあなたの隣に居させてね!?
『メリークリスマス!! 愛してるわ、ヨコシマ……』