Creating the World

□15話
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「どうした、クレイド?」

化け物が目の前にいた。

自分が化け物だという認識も確かに持っていた。だが目の前の男はその認識を嘲笑った。
まるで自分がただの人間だと思えてしまう。

「はぁ、はぁ……」

息切れさえ起こる。それでも歩みを止めることはできない。まだ受け入れてはいけないのだ。

「今度こそ斬る!」

駆け抜ける。五体には力が満ちている。失敗はない。刀はすれ違いざまに確かに礼治の身体を斬り抜けた。

「―で?」

またもや疑問詞を浮かべられてしまった。斬った感触は手に残っている。殺した、頭のイメージ通りならそれが現実になっている。た
だ現実はそれを拒んだ。

「何故、斬れぬのだ」



最初は打ち合い合戦だった。

刀と剣、形は違うけれどもお互いに実力は打ち合いの中ではっきりと分かっただろう。

クレイドの方が腕前は上だった。

刀の扱いは見事に洗練されていた。礼治も負けていないが打ち合いが続けばきっと負かさ
れる。

「作戦を変えよう」

つぶやいて剣を大振りして、無理矢理にクレイドを後退させた。

「好きなだけ俺に打ち込め」

だらりと腕を下ろした。

「力の差を思い知らせてやる」

抵抗しないことがどうして力の差をみせつけることに繋がるか、この時には分からなかった。



「諦めて楽に殺されてくれないか?」

冷や汗が流れる。

クレイドの能力は人間を超えた達人の目にある。いや、正確には目だけではない。神経もおかしなことになっている。見てから反応できる。その一言に尽きる。銃弾でも見てから避けることができる。そういう風に筋肉も動いてくれる。

しかし今回、戦闘においては全くの無意味。何せ相手は攻撃したところで怯んでさえくれないのだから。

「貴様、何者」

まだこの質問はしていなかった。

「神様」

笑顔がやけに冷めていた。

聞いたことがあった。あくまで 噂だと思っていた。

「―なるほど、私は勝てないな」

エスパーのそれも底辺に近い能力しか持っていないクレイドが最初から勝てる相手ではなかったのだ。

超越者のランクから外れている例外の一人。

『十の炎』

本来ならマジックのランクに相当、それ以上の力を有する者達であるが、決定的な違いがある。

彼らは例外なく人ではない。故に正規のランクから外されている。今発見されているのは十人。

発見された順に番号が振られている。

その第二の位置に君臨するのが『神』。

時を超越し、あらゆる言語を自分のものにして、世界の創造者とされる人物。

できるなら冗談だと思いたかった。ただ現実は厳しく、今までの事実がそれを証明している。



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