Creating the World

□14話
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ポタリ。

滴る血は真姫の左腕から。

「ははは!やっぱり正解だった、あいつらに手を貸したのは!」

あいつらとは国連のお偉いさんのことだと察することができる。つまり空也はハンターではなく『月』ということになる。

「……生け捕りが基本じゃないの?」

明らかに殺意しか見て取れない敵に真姫は問いかける。

超越者を生け捕るのには理由がある。捕まえて調べるためだ。何故生まれたのか、どういった能力が発現しているのか、などなど。

謎に包まれていてその出生に関してはまるで検討ができない。だがこれらを研究していくうちにきっと人工的に超越者を作り出すことができる。

それが『月』の目的の一つにある。

「あぁ、俺はその時の気分で殺すか生かすか決めててね。だいたい超越者同士の戦いで生け捕りとか甘いこと言ってるとこっちが死んじゃうんでね」

不気味な笑みのまま続けた。

「ちなみに今回は殺すって決めてるから」

もう何度も見た消える現象。どこから来るか、未だその法則が分からない。いや、だんだんとは掴めてきている。

「右腕もらおうか」

後ろから冷たい声がした。

「あっ!」

肩口を綺麗に切られた。傷口に手を当てて倒れこむ。まだましな方だった。ほんの少しでも気付くのが遅ければ本当に右腕を持っていかれていた。

「残念。反射神経がそんなにいいなんて思いもしないぜ」

本当に残念な様子。

獲物が死なないのは空也にとっては先述したように喜ばしい出来事だった。しかし、死なないことが長すぎることは問題だった。

適度に生きてしっかり止めを刺させてくれればそれでいいのに無駄に長生きすることは空也からすれば『飽き』を生む要因に他ならない。

「めんどくさくなったな。あんたをじわじわ追い詰めるの。だって何回攻撃してもギリギリで避けるから。あったて、悲鳴を聞かせてくれないと」

思い出したように、わざとらしく、あぁと呟いた。

「ここに来る前に見つけたあの女の子なんてどうだろう。鈍そうだし」

そこまで言って、悲鳴を上げる少女を想像したのか、空也は笑い始めた。

「歌恋のことかしら?」

ここに来る前に会った。

人が全くと言っていいほど通らないこの森林で心当たりは歌恋か香だが、香は部屋で休養を取っている。

「あぁ、あんたの仲間のことだ」

真姫の勘は的中した。

「じゃああんた殺すから」

セリフを言ったのは真姫の方だった。傷の痛みなどもう忘れているかのように、凍る雰囲気をその身に纏って立ち上がった。



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