Creating the World
□13話
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真姫の能力の及ぶ範囲は自分の視界の中だけである。
さっきまで目の前にいたというのに今は後ろ
にいる。
つまり掴めない。
「何したの?」
ただ速く動く能力だと理解はしているがそれ以外の可能性があるかもしれない。
「さぁ、考えてくれよ」
けらけらと笑い出す。気味が悪くなるほど
に。
真姫はそれほど気が長いとは言い難い。だから自分を見下されたように嗤われるとすぐに癪に障る。
「……しっかり避けなさいよ!」
手をパーにするそのまま一回転。
「ちょっ…!」
空也は焦った。
先ほどまでの行動からは全く予想できない行動だったからだ。
「あんたも派手なことするね」
辺りの木々はなぎ倒されていた。その木々のほぼ中心に真姫。
「掴んで潰すだけじゃないんだ、君の力。気をつけないとなぁ」
青年の言葉に真姫は何も返さない。
空也も内心冷や汗をかいた。真姫の回転につられて木々が倒れていく様は本当にこれが人間ではないもの戦いなのだと再認識させるには十分だった。
あぁ、楽しい。
同時に空也は興奮していた。
同時に他にも攻撃の手段を持っていると思わなくてはいけなくなった。先ほどの攻撃は半径三メートル半ぐらいだった。
制限がついた。
これほど面白い殺し合いは久しぶりである。空也の能力を持ってすれば大抵の敵は一撃で終わる。だからこその久しぶり。初撃を避けられた時点で空也にとっては喜ばしい出来ことだったのだ。
自分が壊れている存在であることなど当の昔に理解していた。
「あんたさ、今までどれぐらい人を殺してきた?」
自分の攻撃が当たらない以上、お手上げなので真姫は話をすることにした。
「覚えてるわけないでしょ」
「それが正しいんだよ。俺も同じで習慣みたいになってるんだ」
悪趣味な習慣だな、と思い視線を微妙に外す。
「ほら、油断しちゃだめだよ」
「!」
ちょっと目を放した隙に後ろからナイフをつきたて青年が襲い掛かってくる。
「話すか、戦うか、どっちかにしなさいよね」
真姫は紙一重でかわしたかと思ったが、肩を刺されて出血している。ただこれを卑怯だとは言わない。
戦いであるのに目を逸らした自分の責任だ。
「いいねぇ、そのつぅーと流れる血。興奮するよ」
と青年はまた構える。話すのと戦うのを同時に行うらしい。
「面倒な奴」
それが真姫の心からの言葉だった。
「面倒とか言わないでよ。俺は楽しいんだからさ!」
構えるとまた消えた。
単純な高速移動だと頭で分かっていても人間の目ではとても追いきれるものではないから消えたように錯覚するのだ。
「性悪説って知ってる?」
「……!」
右の袖が切れる。命がけの状態で真姫は答えるほど馬鹿ではない。
「まぁ、知ってると勝手に解釈するけど……。そう、俺はその考え方は正しいと思ってるんだ」
今度は堂々と新規の目の前に現れる。そしてまた消える。
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