Creating the World
□12話
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「でも何で即行くことになってんのよ!」
朝ごはん終了から僅か十分で連れ出された。頑張って来いよ、その言葉とともに礼治が渡してくれたお昼ご飯が一筋の希望に見えたのだが、よく考えてみると絶望の象徴でしかない。
午後からも虫取りに従事しろという命令でしかないのだから。
「カブトムシとかいるかな?」
何故隣の原始人はこう目をルンルン輝かせることができるのかいささか理解できない。やっぱりここは漢のロマンが分からないとやっていけない世界らしい。
「ちなみにカブトムシとかは夜行性だから昼間にでてこないよ」
「マジで?!」
……歳を考えろと突っ込みたくなる驚きようだった。
「ねぇ、真姫はどこ行ったの?」
そう、何故か現在進行形で二人だけなのだ。隣でタバコを吸われるぐらい迷惑な話である。
「真姫は真姫でやることがあるんじゃねぇか?」
知らないと見てよさそうだ。こいつのポジションを扇風機にでも変えれば私の役に立つのに。
でもかえって好都合か?前回聞いてみたいことがあったが聞きそびれてしまったからな。
「つい最近に二人でアイス食ったこと、覚えてる?」
「あぁ、覚えてるけど、どした?」
「あの時あんた、むちゃくちゃ怖い目で私のこと睨んだけど、何で?」
あー、と考えながら頬をちょっとうらやましい長さの指でかく。もちろん少年染みた無邪気な答えを返してくるものなら泉家秘伝の正拳突きをお見舞いする予定。
「脅せば深くは突っ込んでこないかなって思った」
「怖かったんじゃあ!」
「ぐへっ!」
前言撤回。実のところ何を言おうが殴ることは決定事項だった。
「て、てめぇ……的確に渠を狙いやがって」
「自業自得と心得よ」
ただ分かったことは怖かったがあれはあれで剛の心配の情の現われなのだろう。
もっとも私は無視したけど。むしろ不器用な奴だと言ってやりたい。香ちゃんみたいにお見舞いに来てそこで話してくれればよかったのだから。
「まぁ、巻き込んだのは仕方ないけど」
我が渾身の一撃から立ち直り、こちらに未だ輝く眼差しを向ける。
「俺が守るから」
「〜〜〜〜〜!」
身体が火照った。
そんな現象、授業中に寝ていて先生に当てられた時にしか感じたことがないものだった。いや、それとも微妙に違う。恥ずかしいんじゃなくて……。
「うるさいわ!」
「いてぇ!」
理不尽に弁慶を蹴りつけてやった。
嬉しいと思うなんて、私はどうしたのだ。
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