Creating the World
□13話
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「ねぇ、もう虫かごがセミだらけで気持ち悪いんだけど」
なおかつうるさい。
「我慢しろ、カブトムシを取るまでの布石だ」
布石の意味を分かっているのか、甚だ疑問だ。頭の中では石みたいな布か布みたいな石ぐらいにしか思ってないに違いない。
「ねぇ、休憩したいんだけど」
「む、確かに日が昇ってきて…今何時?」
目を腕時計に落とした。
「十二時十一分だけど」
「飯時じゃねぇか!」
眩い眼差しが持っている弁当に注がれている。
私は片手を突き出し、飯をあさりに入ろうとする剛を制止させた。そうでもしないと私の分まで見る影もなく食い散らかされることになってしまう。
「これがあんたの分」
「少なくね?」
「文句は礼治に言って、私は無関係」
物欲しそうにこっちの弁当も見ている。剛が空中で三回転した後に私に土下座でもしたらあげてやらんでもないがね。
「さていただきます」
「いただきます」
適当に木の陰に入って割り箸を割る快調な音が響き、香ばしいにおいが全身を包んでいる。
「卵焼きからいっとくかなぁ」
箸を伸ばしたら身体揺れた。
「え?」
声を出したか定かではないがもし声を出していたならこれだ。
「全く食事中に襲ってくるなんてな」
身体は剛に抱かれていた。ついさっきまで私がいたところには見慣れない大男が立っていた。
「よく避けたな」
渋い声だった。関取の脂肪を全部筋肉に入れかれたような男。
「もっとも完全にじゃなかったらしいが」
私は剛の右腕から血が出ているのを見た。
「ここにいろ」
「う、ん」
いつになく真剣な剛に私はただ曖昧に返事す
ることしかできなかったのだ。
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